クエスト23【勇者謁見2】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、謁見の申し込みが来ております!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か。なんじゃまたか最近謁見の申し込みが多いのう」
「我が王のご威光が、ようやく国民に届いたという事でしょう!」
「いやそんな殺到するほどかのう?」
「今回も教会から勇者が来ております」
「勇者か……」
先日のやる気のない勇者を思い浮かべて、王は顔を伏せた。
「いえいえ王様、教会の勇者の中にもやる気のある者はきっといますよ、しかも今回はちゃんとスキルを授かっているとの事です!」
「いや別にスキルの有無が、勇者の優劣を決めるものではないがのう」
「それでもスキルを活かした冒険が出来るのは、前途有望ではありますよ!」
「まぁ話でも聞いてみるかのう、通すが良い」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、1人の若者が連れて来られた。若者はそれなりに立派な装備を整えており、妙に自信満々の様子であった。
「うむ、よく来たの面を上げいってか、まず首を垂れよ」
勇者は王の御前で仁王立ちであった。
「何だ? 王前では頭を下げるルールでもあんのか?」
「いやあるけど……まぁいいや、これ騎士団長、まだ剣を抜くのは早い、どーうどーう、はい深呼吸してー落ち着いたかの? 落ち着いたのならいつもの台詞を」
「っ! では、教会より選抜されし勇者よ、何用で参られたか!」
わなわなと震えながら騎士団長は、若者を指名する。
「いやー俺って有能なんでー、魔王倒しちゃうんですよ、んで魔王の討伐報酬って前借できっかなーって」
「おーっとストップじゃ騎士団長よ、構えた剣をゆっくりと床に置くのじゃ。そーじゃそーじゃ、そしてもうちょっと離れるんじゃ、壁の所まで下がるんじゃっと、すまんの。ちょっとお主の命の危機があったものでな」
「まぁいいさ、それで報酬の前借はくれるのか?」
「お主もだいぶ不遜じゃのう……ではどのようなスキルを持っておるのじゃ? もう今すぐ魔王が息絶えるとかのスキルなら、勿論報酬も考えようぞ」
「まぁ大体そんなものさ、俺のスキルはレベル99だ!」
大仰なポーズをとって勇者は己のスキルを発表した。
しかし王はいまいちピンと来ていない様子で。
「そのれべる99とは何じゃ?」
「な、バカな! レベル99の凄さが分からないだと!?」
逆に勇者が驚く有様であった。
「騎士団長よ、このスキル何かわかるかの?」
「え、はい……? えっとレベルというのは恐らく、冒険者組合が設定している冒険者個人の評価基準だと思われます、えーっとそれがスキルでレベル99相当の実力になっているという事でしょうか?」
「ふん、察しの悪い連中だな、レベル99という事はレベルカンスト、ステータスもほぼMAXという事だ! もはやこの俺に勝てる奴は居ない! 魔王でさえも敵じゃないね!」
「ふむ、今まで身体に自信のある連中はちょくちょく来ていたが、ここまで自信がある奴は初めてじゃの。どうじゃ騎士団長よ、この者は強いのかのう?」
「うーん、見た目は中肉中背でそこまで強そうには見えませんが、スキルで身体強化しているのならば見た目からはわかりませんね。王よ確認の為に手合わせの許可を」
「おいおい良いのか? 勢いあまって殺しちまっても知らないぜ?」
「その場合はお主が手加減せい、騎士団長も油断をするでないぞ?」
「御意、ではレベル99の勇者の実力拝見いたします!」
「ふん、こんな茶番、10秒で終わらせるぜ」
こうして玉座の間にて、勇者と騎士団長が対峙する。手合わせという事で、両社剣は鞘に入れたままの状態で打ち合う事となった。
結果として。
「な、何故だ! 何故俺は勝てない!?」
勇者が汗だくで床に転がる事となった。
「3分か、騎士団長相手にしては結構もった方じゃの」
「く、クソっ!」
寝転がった状態から跳ね起きて、勇者が剣を振るう。しかし。
「残念それは、残像です」
騎士団長の動きに翻弄され、足を掛けられて再び床に転がされる。
「なるほど、確かにレベル99ですね、打たれ強さやタフネスは目を見張るものがあります」
騎士団長が冷静に勇者の実力を推し量る。
「考えるに、レベル99とはその人物の例えば10年30年の訓練期間を飛ばしてその分の身体能力を得るというスキルではないかと思います。何度か本気で打ち込みましたが骨が折れるどころか擦り傷すらありません」
「ではだいぶ強いんじゃな?」
「いかんせん、個人の資質もありますが、訓練を全くしていない若者が30年分の身体強化を受けた所で大した能力値にはなりませんよ。現にフェイントに引っ掛かりまくっていますし反射神経は人並みです。そこらの魔物ならば圧倒出来ましょうが、魔王の軍勢相手ではどうでしょうか。それにこの様に搦め手や毒などを用いられればあっさりと」
懲りずに襲い掛かる勇者レベル99をあっさりと片手でいなす。
「倒される事でしょう。このスキルが歴戦の戦士にあれば強力だったかもしれませんが、運動不足気味の若者にあってもちょっと上等な兵士程度でしょう」
「お、俺はまだ負けてない!」
「命令をしっかりと聞く分、普通に兵士を育てた方が上等でしょうかね」
倒れた若者の背中を押さえつけ、身動きをできなくして騎士団長が総評を述べた。
勇者はレベル99の身体能力を持って何とか拘束から逃れるが、肩で息をする有様であった。
「ハァッハァッ……! 俺にこんな事をして、ただで済むと思うなよ!」
「うーむ、逆恨みも甚だしいが、とりあえず出直してくることじゃな」
「このレベル99の勇者を追放したことを、必ず後悔させてやるからなぁ!」
「別に追放はしとらん、鍛えなおしてまた来いと言っておるのじゃが」
「俺は、この力を真に理解してくれる所で本領を発揮して、魔王を見事倒し評価しなかった貴様らを必ず後悔させてやる!」
「それは別にワシらとしても願ったり叶ったりじゃが」
「ざまぁみろ! 俺にはまだ隠された力がある、その力を知らなかった事を後悔するんだな!」
「じゃったら最初にその隠された力を言わんかっ!」
後日。
「惜しいスキルじゃったのう」
「この若者が、今後心を入れ替えて訓練に精を出せば、凄い威力を発揮する可能性はありましたが」
「何か逆恨みされたしのう」
「まさか魔王の軍勢に加勢する事にはならないでしょうか?」
「変な勇者を寄越すなと魔王城から苦情が入ったらどうしようかの」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




