クエスト22【偶像の王】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、遠方の国の使者が王に謁見を求めております」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお騎士団長よ、ほう珍しい事もあるものじゃ、よし通すが良い」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、異国の服装の人が連れて来られた。
「うむ、よく来たの面を上げい」
王に促されて、使者は頭を上げる。
「さて、異国より参られた使者よ、何用で参られたか!」
騎士団長が問う。
「はい、様々な民の悩みを解決せし偉大なる賢王のお噂はかねがね」
「え、ちょっと待って、何処からそんな噂が?」
困惑する王に、使者は淡々と告げる。
「この度は我が国の王の悩みを聞いて欲しいのです」
「いやワシ人々の悩みを聞いてズバッと解決、みたいな事やっておらんのじゃが?」
「……我が王は孤独な人でした」
「あ、これ話聞いてくれん奴じゃ」
使者はつらつらと語り始める。
「我が王は、人を信じず孤独でありました。故に寂しさを紛らわせる為かあるいは孤独に耐えかねてか、王は彫刻にのめり込みました。来る日も来る日も岩を削り、そして自らの理想となる女性を彫刻したのです」
「ふむ、不安や寂しさを芸術で発散出来るのは良い事ではないか?」
「そうですね、王は自ら生み出した彫刻の出来に満足しました。しかし王は、己の理想を投影した彫像に何と恋をしてしまったのです」
「ほう」
「勿論、王が自らの理想を思って作った彫像です、モデルの人がいるわけではありません、似た感じの人とかではなく、彫像そのものに恋をしてしまったのです」
「まぁ、愛の形は人それぞれだし?」
「賢王よ、どうすればよいのでしょうか!?」
「ええ、本人困ってないなら別にいいのではないじゃろうか?」
「正直我々家臣はいたたまれません、裸では可哀そうだと彫像に服を着せ、毎日一緒の席に座らせて食事をとり、寝室に持ち運んで一緒に寝ているのです!」
「えーっと、探せばペットとかをそんな風に恋人扱いで飼って居る人とか割といますけど、それが石だってだけで」
騎士団長も口をはさむ。
「使者殿よ、そもそもどうしたいのじゃ? 聞いた話ではそちらの王は悩んでいるというよりむしろ幸せそうじゃし、お主らの方が困っておるのじゃろう?」
王の言葉に、使者は口を噤む。
「我々は……」
「相談をする以上は腹の内を隠したままでは解決できんぞ、何が悩みか?」
「……正直我が王ちょっとキモイなって思って」
「いや、まぁ他人がどうこう言う物ではないじゃろうが、まぁ世間体はちょい悪めか」
「でも人間不信さはちょっと改善しまして、まぁ家臣達に彫像の可愛さとか萌えポイントとか語って聞かせてくれる程度に打ち解けてくれるのはいい傾向だとは思うんですけど、やっぱ彫像を伴侶にするのは一国の王としてどうかなーってみんな思ってて」
「まぁ彫像と結婚するぞってなったら国民大困惑じゃろうなー」
「最悪国王が死去したら、王位継承権を持つ彫像が残るりますしねー」
「それはそれで女神像崇拝の宗教が生まれそうではあるがの」
「お願いします! どうすればよいでしょうかー!」
「と、言われてもなぁ、え、その彫像の出来栄えはどれほどなのじゃ?」
「そりゃもうすっごい美人な出来栄えです! 王が自ら作って惚れる気持ちもわからなくはありません」
「えーすっごく見てみたいですね、一般公開とかはしないんですか?」
「王が完全に嫁扱いしているので、嫁が恥ずかしがるからーとか言ってあんまり人には見せたがっていませんね」
「それじゃ!」
そこで王が声を上げた。
「それ、というのは?」
「王には秘密裏に、彫像を民衆に公開するのじゃ。そして民衆には王が想像で作ったとは言わずに、この彫像のモデルを探していると触れ込むのじゃ」
「なるほど! それで彫像に似た人を探すんですね!」
騎士団長が合いの手を討つ。
「しかし、王の理想の女性ですからね、まったく同じ見た目の女性は難しいのでは」
「ある程度美人というからには、きっと王自身無意識に女性の好みのパーツを集めて作られるはずじゃ、国中探せば似た女性くらいおるじゃろう、後はメイクとかで近づければ良い」
「そうですね、近い雰囲気の女性なら居るかも。でもその女性を彫像に似せたとして、王はそっちに興味行くのでしょうか?」
「そこでじゃな、機を見て女性を彫像と入れ替えるのじゃ。そして神への祈りが通じて彫像に命が宿ったんだと、皆で奇跡を演出するのじゃ!」
「おお、なんと大胆な!」
「なるほど、多少造詣が違っても人間になる際にちょっと崩れたとか言えばだいぶ誤魔化せそうですね!」
騎士団長も興奮した様子で声を上げた。
「その作戦が上手く行ったとして、元の彫像はどうしましょうか? そのまま置いてあったら神の奇跡が嘘だってバレてしまいます」
「うーむ、見つからぬよう隠しておくか、いっそ打ち砕くのが良いじゃろうが、王の力作を壊すのも忍びないのう」
「なら入れ替わった後に、生身の女性をモデルに彫像を作って貰いましょう! 何個か作った後に戻せば、見分けがつかなくなりますよ」
「なるほど、木を隠すなら森の中、彫像ならば彫像の中か」
「わかりました! これで我が国の未来は明るい! 流石賢王です!」
「……その賢王っての、止めてくれんかのう」
後日。
「国王様、遠方の国の使者から手紙が来ております!」
「ほう、例の作戦は上手く行ったのかのう?」
「何でもその後も彫刻に励んでいて、二体目の彫像にも魂が宿らないかと祈っているそうです。彫像は国民に見せる事も了承されたそうなので、いっそ国を挙げて彫像似ている女性オーディションを始めたそうです」
「むう、偶像崇拝になったか」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




