クエスト21【勇者謁見】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、謁見の申し込みが来ております!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か。謁見の申込みとは珍しいのう?」
「はい、何でもセーフ神教会から勇者の推薦がありまして」
「ふむ、勇者から来るとは珍しい、なんぞ売り込むスキルでもあるんじゃろうか……まぁ通すが良い」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、1人の若者が連れて来られた。若者はまさに今旅立ちの準備を終えたばかりという初々しい出で立ちであった。
「うむ、よく来たの面を上げい」
王に促されて若者は顔を上げた。
「さて、教会より選抜されし勇者よ、何用で参られたか!」
その若者に対して騎士団長が問う。
「は、実はこの度教会で勇者の任命を受けまして」
「ほう、お主はどんなスキルを授かったのじゃ?」
「いえ、スキルはありません」
「む?」
「スキルは授かっておりませんが、教会の指定した訓練課程を終えたことで、勇者認定を貰ったのです」
「あー王様、アレですよ教会が良くやる、お金を払えば誰でも勇者にって奴ですよ」
「むぅ相変わらず教会は懲りんのう、免罪符の時も止めろというたのに」
王と騎士団長の会話は聞こえていないのか、若者は話をつづけた。
「それで今より旅立とうと思います」
「うむ、頑張ってくるのじゃぞ」
「はい、それでですね、城に行けば旅立ちの餞別が貰えると聞きまして」
若者の言葉に、王は騎士団長に問い合わせた。
「……騎士団長よ、そんな御触れワシ出したかの?」
「あーえー、冒険者組合に財宝等を集めるよう要望は出しましたけど。教会に関してはわかりませんね、まぁ若者の門出ですし、多少は祝ってもいいのではないでしょうか」
「しかし、王城を建て直したばっかじゃしのう……」
「訓練用の剣と防具とかでいいんじゃないですか?」
「ふむ騎士団長よ何か見繕ってやるのじゃ」
「は、しばしお待ちを」
そう言って騎士団長は部屋の外へ出て行って、すぐに戻ってきたと思ったら、若者の前に宝箱を置く。
「さぁこれをもって冒険に出るのです」
「ありがとうございます、では中を拝見、これは! 松明と500Gですか」
「よし勇者よ、頑張ってくるのじゃ、ん、旅立たんのか?」
「……これから僕は、魔王を倒す為に旅に出ていくんですよね?」
「そうじゃ」
「……もうちょっと貰えませんか?」
若者の言葉に、騎士団長が声を荒げる。
「最近の若者は我儘ですねー、私が見習いの頃は棒一本と布の服で魔物討伐に行ったものですよ!」
「まぁ騎士団長よ落ち着くのじゃ、スキルも無いのであれば不安もあろう、それで勇者よ、何が欲しいのじゃ?」
王の提案に、勇者はしばし考えて。
「とりあえず護衛として騎士の2,3人くらいはつけて欲しいです、あとダンジョンまで馬車で送迎してもらって、装備として城の伝説の武器防具を一式渡して貰いたいです」
「よーし若き勇者よ、闘技場に来なさい、先輩として一回顔の形が歪む程度に稽古を」
「まー待て待て騎士団長よ、別に言うだけはただじゃろうて」
「はぁっはぁっはぁっ!」
興奮した様子の騎士団長を後ろに下がらせ、王が若者に言う。
「さて残念だが勇者よ、お主の要望は聞けぬ」
「何故ですか!?」
「え、分からないマジ? お主はまだ実力をワシらに示して居らんからじゃ。騎士の護衛をつけ送迎の馬車を用意するほど重要な人物ではないという事じゃな」
「そんな、僕は世界を救う勇者なのに!」
「まぁまったく手を貸さんという訳ではない、まずは最初のダンジョンを踏破し、一人前の冒険者となって先達の勇者達の跡を追うのじゃ、魔王の手先を見事撃破した暁には、望む報酬を約束しようぞ」
「ちょっとそういうの分かんないです」
「分らんかー……」
「王様! 我が王よ! 提案です、この若者の護衛に是非私を! こ奴の冒険譚を城を一歩出た瞬間に血塗れにして見せますよ!」
必死で挙手をアピールする騎士団長を無視して、王は若者に語り掛ける。
「とはいえ、城の騎士にしても装備一式は自前で用意する決まりじゃし、装備すら碌に用意できぬ者に、色々と施しを与えては他の者に示しが付かぬ。精進する事じゃ」
「わかりました、ちょっと街で仕事してお金貯めます。っはーケチな王様だったな」
「よーし言いたい事は以上ですか? それが墓に刻む言葉となるので慎重に喋ってくださいね? この城から出る際は覚悟して一歩を踏み出してくださいね? 貴様の第1エンカウントはこの私だ!」
「早く行くんじゃ! ワシが抑えられているうちに! あと迅速に旅に出よ!」
後日。
「王様、あれから結構立ちますが、あの若者まだ旅に出ていません!」
「だろうなー」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




