クエスト20【王都復興4】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
そう言って王は、自身の座る王座、そして絢爛豪華に作られた謁見の間を見回し。
「なんか居心地が悪いんじゃ」
「ずいぶん奇麗になりましたねー!」
「何かなー、いつもと違う椅子はしっくりこんのう!」
「いつもの椅子に戻せばいいんじゃないですか?」
「どっかに仕舞われてしまってのう……由緒ある椅子じゃから捨てられては無いはずじゃが」
「あー多分地下の倉庫じゃないですかね、何でしたら持ってきましょうか?」
「それはお願いしたい所じゃが、忙しいのなら別に無理には」
「いえ私も色々と探し物がありますので、しばしお待ちを」
そう言って騎士団長は部屋を出て行った。
そしてしばらくたった後、何やら大荷物を抱えて戻ってきた。
「王様! 椅子沢山あったんですけど、どの椅子ですか!?」
「いや全部持って来なくてええよ、ほらいつも座ってたやつじゃ、覚えておらんか」
「いやーいつも座っているのは覚えているんですけど、何か見た目だけ記憶が無くて」
「それは仕方がないのう、それでどんな椅子を持ってきたんじゃ?」
「では、まず最初の1脚目はこちら! 足の部分は緩やかにカーブを描き、背もたれは傾斜があり体を預けて休息もとれる、安楽椅子!」
「ふむ、座り心地はよさそうじゃがのう、ちょっと威厳が足りんかな」
「そうですか、シンプルで良いと思うのですが。では次、2脚目はこちら! 天然の大岩から削り出された大理石の椅子!」
「いやよく持って来れたの、凄い彫刻が施されとるし」
「彫刻は絵画から地獄と天国をモチーフに亡者と悪魔、無垢なる天使が全面に施されています」
「下手に座って壊したら大ごとになりそうじゃ、それに硬くて座り心地悪そうだし、てか、え、こんなんうちの倉庫にしまってあったの?」
「それでは次、3脚目はこちら! オリエンタルな雰囲気を醸し出す天然竹から職人が編み込み作り上げた、竹の椅子!」
「座り心地は良さそうだがの、ちょっと玉座の間には相応しくないかのう」
「品位は大切ですからね、では次、4脚目はこちら! 大きくて気品もばっちり、安心安定の座り心地、人間椅子!」
「何か中身がくり抜かれておるが? そもそも人間? が座る椅子なのかの?」
「さぁ? タイトルがそう書いてありましたので、まぁ置いといて次、5脚目はこちら! 何か魔道技術が込められているらしく、背もたれや椅子の高さが任意に切り替え可能、さらに何かピカピカと光る最新の魔道椅子!」
「最新と言っている時点で、ワシが元々座っていた椅子ではないの」
「でも座り心地はだいぶ良さそうですよコレ!」
「でも、一国の王がこんな虹色に点滅する機能性抜群の椅子に座ってるの何か嫌じゃろ?」
「確かに何か嫌ですね、では次、6脚目はこちら! 座った人間を呪い殺す、バズビーズ」
「いやいやいや急に呪いのアイテムになったから!」
「でも……よく見ると王様が普段座ってた椅子に似ているような?」
「いや、怖い事を言うでない……次じゃ」
「では次、7脚目はこちら! ヒャッキン遺跡から発掘されたという収納ボックス風椅子! 何と椅子としても使える上に中に収納スペースがあるんですよ!」
「確かに便利そうじゃが、それに座る王は何か嫌じゃろ」
「わがままですねーでは次、8脚目はこちら! 道具の本質的な意義を問う、空席の会議室の椅子!」
「それは、え、どういう椅子なのじゃ?」
「例えば重要な会議の場では、その場には王が座るべき椅子や、大臣が座る椅子、参謀が座る椅子など役職に合う椅子が用意されるわけです。しかし会議は上手く行かず話し合いを放棄したり、権限を私物化したり、責任を押し付けあったりするとですね。その会議の椅子は空っぽのまま、機能していないわけです」
「なるほどのう、役職の椅子がありそこに座るのが大事なのではなく、そこに座った者が、役職に合った責任を果たせとちょっと待った、良い話だけど今は関係なくない?」
「では次、9脚目はこちら! これは凄いですよ! 何と神が座るとされる椅子を模したという、人類には早すぎる椅子、座天使[スローンズ]!」
「……これはどう座るのじゃ?」
王は中空に浮いた、翼の生えた無数の目の付いた車輪状の椅子(?)に頭を傾げる。
「さぁ、何せ神の椅子なので、王よちょっとチャレンジしてみましょうよ!」
「いや絶対身分不相応じゃ! ワシ王だけども! この椅子には座る資格無いって!」
後日。
「国王様! 例の椅子の件ですが!」
「おお、見つかったのかのう?」
「大臣に聞いてみたら、元の椅子に豪華なカバー掛けてあるだけって言ってました!」
「何と! え、あホントだ、よく見たらチャックあった……」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




