クエスト19【王都復興3】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
「国王陛下、今お時間宜しいでしょうか!」
そこにつかつかと姿勢良く、眼鏡をかけた低身長種族の女性が姿を現す。
「むぅ大臣か、仕事の話かの?」
「冒険者組合から、王国の要望に際して、何でも宝飾品とか魔道具を欲しがっているとか? それは例えば美術品、絵画とか発掘された古代の日用品等も対象なのかとか、魔道具は呪われている品も良いのかとか色々と問い合わせが来ておりませて」「実は商業組合から街道の復旧に関して応援要請がありまして、資材の運搬の関係から馬車等の人出が足りないとかで、余裕があれば兵士を復旧部隊に駆り出して欲しいと」
「ええい同時に話すでない!」
煩そうに王様は頭を振った。
二人は顔を見合わせて、大臣がお先にどうぞと騎士団長を指す。
「では私から……えーっと、何でしたっけ?」
「要件はちゃんとメモしておくんじゃ!」
「えっと、冒険者組合からの問い合わせですね。後で品目と詳細をまとめて通達しておきます」
横から大臣が、騎士団長の要件を取りまとめた。
「それでは、お願いします」
「はい、それで私の方の要望ですが」
言いかけた大臣に待ったをかけるように、騎士団長が口をはさんだ。
「街道の復興ですよね、それでしたら冒険者組合から復興に役立つ勇者を紹介されています!」
「ふむ、確かにそろそろ神の権能を授かった勇者達にも一仕事してもらう時かもしれんな、よし連れてまいれ」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、三人の若者が連れて来られた。どの若者もがたいが良く力仕事に自信がありそうだった。
「ほう、別にスキル拘らなくてもそのガタイならそのまま現場に送っても活躍してくれそうだがの」
「いえいえ王様、やはり彼らの本領はスキルを聞いてからですよ! では貴様からだ! その脅威のスキルを王に語って聞かせよ!」
呼ばれて一人の若者が一歩前に出る。
「俺のスキルは巨大化だ! この体を家よりも大きくする事が出来るぞ!」
「おお、凄いのう」
「どうですか王よ! このスキルがあれば隣国からでもひょいっと資材を運ぶ事が可能なんですよ!」
はしゃぐ王と騎士団長に、大臣がちょっと待ったと手を挙げる。
「ちょっといいですか? 巨大化は大体何倍くらい大きくできるのでしょうか?」
「そりゃ10倍でも100倍でも可能だぜ!」
「ではあまり有用ではありませんね。あまり大き過ぎると共同して作業が出来ませんし、周囲に被害も出てしまいます」
「一応街とか壊しちまわないように2~3倍くらいでも行けるぜ」
「そのくらいなら荷運びには便利そうですが、それなら馬車で事足ります。大体この力は土木等の地味な作業に使うのではなく、その巨体でそのまま魔王城でも取り壊して貰う方が良いのでは」
「い、いや実は俺は戦闘はからっきしで、特に痛いのが……大きくなると攻撃も避けられないしで戦場に行くのは」
「体は大きくなれるのに肝は小さいままですか」
「……すみません」
なんだか小さくなって男は一歩下がった。
「ま、まぁ荷運びには使えるんじゃから……」
「えっと、次は貴様だ。その脅威のスキルを王に語って聞かせよ」
二人目が指名されて一歩前に出る。
「お、俺のスキルは怪力だぜ! どんな重い物でも持ち上げて運ぶ事が出来るんだぜ!」
「それは凄い!」
「どうですか国王よ! この者の力があれば百人力!」
はしゃぐ王と騎士団長に、大臣が再びちょっと待ったと手を挙げる。
「ちょっといいですか? 石畳の負荷重量は約2トンちょいです、それ以上重い物は輸送できませんし、そんな重い建築資材もありません。っというか、やはりそんな力があるのなら最前線に赴いて敵の軍団を相手に」
「い、いや一度は誘われて冒険に出かけたんだが、ちょっと動きが遅くて置いていかれて」
「なるほど、重い物を持ち上げる力に特化し過ぎて、全身がブレーキ筋となってしまって瞬発力が犠牲になっている感じですね。重量挙げ選手がスポーツで活躍出来ないのと同じです、無駄な筋肉が多く実用性が無い」
「……無駄筋肉」
凄く落ち込んだ様子で、男は一歩下がった。
「ま、まぁ荷運びには使えるんじゃから……」
「そ、それでは……最後の貴様、その脅威のスキルを」
「い、いやだ!」
最後に残った若者が大声で喚き始めた。
「お、俺はここに来たらスキルを自慢出来て凄い! って褒められると聞いてきたんだ! こんな辛辣なコメントされに来たんじゃない! 俺はここで帰らせてもらう!」
そう言って半泣きで部屋を出て行ってしまった。
「……まったく意気地のない、あの様子では戦場に行っても活躍できそうにありませんね」
冷酷に大臣は告げた。
「えっと、彼らは一応一般人じゃからもっとお手柔らかに」
「え、これでもオブラートに包んだ方ですが?」
「王様、大臣を中心に交渉部隊を編成して魔王城に送り込む事を提案します!」
騎士団長の提案を、案外悪くないかもと王様は思った。
後日。
「王様! 私が提案した交渉部隊なんですが!」
「おお、どうなったのじゃ?」
「全員が大臣の毒舌に心折られて解散となりました」
「そうであろうなぁ……」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




