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クエスト14【嵐の襲来2】

 ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。

 その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。


「国王様、既に一階の各所が床上浸水している模様です!」

「むぅどうなっとるんじゃこの城は、水捌けが悪いにも程があるぞい……」


 そう、百年以上の歴史を誇る王城は、今未曽有の大嵐に直面し水没の危機を迎えていた。


「どうも非常事態に備えて設置された、王族専用の隠し通路の脱出先が水没したみたいで、そこから大量の水が入り込んでいます」

「これでは秘密の通路の意味がないのう」


 古い城には、重要人物がいざという時に脱出できるよう、秘密の地下通路が作られるのが常である。しかし今回はその設計が仇となっていた。


「街の方はどうか?」

「はい、風の方は勢いが収まってきたので、兵士総出で様子を見に出ています」

「ふむ、困っている人も多かろう、出来うる限り力になってやるのじゃ!」

「は、そういえば冒険者組合からも、災害に強い勇者を派遣するとの通達が」

「うむ、え、ああ……勇者か、本当に役に立つんであろうな?」

「王様何でそんな歯切れの悪そうな感じなんですか、とりあえず人手は多いに越した事はありません」

「そうじゃの、それでは、まぁ連れてまいれ」

「は、しばしお待ちを」


 こうして王の前に、三人の若者が連れて来られた。


「今回は珍しく三人なんじゃな、では早うスキルを紹介せよ」

「ではまず貴様からだ、その驚異のスキルを王に語って聞かせよ!」


 呼ばれて一人の若者が前に出る。


「私のスキルは水泳、水の中を魚のように泳ぐことが出来ます」

「ん、むう? それは単に泳ぎが得意とか?」

「王よ、それではただの特技に過ぎません! だったら私だって水泳は得意です、この全身甲冑状態で河を泳ぎ渡る事が可能です」

「それはそれで凄いの」

「私のスキル、水泳はあらゆる急流、荒波をものともせず、どれほど濁っていようとも泳ぐことが可能です、水場は私にお任せを!」


 勇者が自慢げに語っていると、控えていた一人が割って入るように前に出た。


「その程度で水場を任せろとは、な。それでは俺のスキル、水中呼吸の敵じゃないぜ!」

「何と、貴方は水中で呼吸することが出来るのですか!?」

「そうさ、いくら自由自在に泳げようとも、水中で呼吸出来る俺の方が有用だ! なんせ一時間でも二時間でも、一日中潜る事だって可能なんだぜ!」

「なん、と凄い! 私だって10分潜るのが限度だというのに!」

「いやそっちはそっちで凄いのう」


 その時、最後の一人が待ってましたとばかりに前に出てくる。


「二人ともまだまだだな、それでは僕の、水上歩行の足元にも及ばないぜ!」

「な、まさか……それでは貴方は水の上を!?」

「そう、僕の能力ならば、泳ぐとか水の中とかの次元じゃない、水の上に立って歩くことが出来るんだ、しかも重さに関係なく荷物を運ぶ事も可能だ!」

「それは、凄い! 私だって水の上なんて10歩くらいしか歩けないのに!」

「むしろお主も水の上行けるんかい!」


 何故か対抗できる騎士団長に王様が突っ込みを入れる。


「いえいえ王様、流石に水切りの応用で水面をちょっと走った程度ですよ、水面の上に立つなんてとてもとても、そんなのは明鏡止水の境地に達したあの瞬間だけでした」

「立った事はあるんじゃな……」

「どうですか王様! この三人が居たらこの水没寸前の王城でも、問題なく救助活動を行うことが出来ますよ!」

「まぁ水場に強い者が居るのはよい事じゃのう」


 王が、それぞれに作業を振ろうとしたところ。


「いいえ、王様。彼らと一緒にされるのはご遠慮いただきたい」


 勇者の一人が声を上げる。それに続いて他の勇者も。


「そうだぜ、一緒くたにされるのは遠慮願いたい」

「僕は水に入るような無粋な真似はしないんだ、仲間じゃない!」


 勇者三人は互いに反目する。


「言い争っとる場合か、力を合わせて困難を乗り切るところじゃぞ」

「そうですね、ではこの中で最も優れているスキルを持つ者がリーダーとなり、他の者はいう事を聞くというのはどうでしょうか?」


 勇者の提案に、ほかの二人も首肯する。


「いいじゃねぇか、種目はそっちで決めてくれ」

「第三者視点で優劣を決められたなら、ここは納得し従いましょう」

「うむ、仕方ないのう、のんびりもしてられんからな種目は競争じゃ、泳いでも潜っても走ってもよい、城を出て門まで行って一番に戻ってきた者がリーダーとなるのじゃ!」

「わかりました」「おうよ」「了解です」

「では時間も惜しいので、スタート!」


 王の開幕の宣言と共に、三人はそれぞれの方法で城を出て行った。


 そして。


「では、一番乗りだった私がリーダーですね」


 勢いで一緒に城を飛び出して、何やかんやで一番乗りで帰ってきた騎士団長が優勝となった。


「もう全部お主1人でいいんじゃないかな……」



 後日。


「王様、彼ら三人が協力した事で、水上歩行で資材を運搬し、泳ぐスキルで水中の修理箇所を見つけ、水中呼吸が作業を行う事で城の浸水を直すことが出来たようです!」

「それは良い報告じゃな、ちなみに騎士団長は何を?」

「え、彼らとは別の水没場所を一人で補修しておりましたが」

「スキルって何だろうな―」


 王の悩みはまだ晴れそうにない。


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