クエスト12【姫誘拐事件4】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
その王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、ご報告があります!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……報告は聞いた、姫が無事救出されたらしいの」
「はい喜ばしい事です!」
「しかし思ったよりも迅速だったの、もう少し時間がかかると思っておったが」
「まったく驚くしかありません、いざ救出作戦を開始しようとした矢先に、洞窟奥から爆発音がしまして」
「なんと!」
「気が付けば周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図、そこからこちらも慌てて対処しておりましたら、奥から姫様が出てきたのです」
「では、姫自ら逃げ出してきたというのか!?」
「恐らくは、詳しくは姫様に話を聞いてみるまではわかりません」
「そうか、それで姫の様子は大丈夫なのか!?」
「多少衰弱しておられましたが、命に別状はありません。保護した後に現在この城にて療養中で御座います、お会いになられますか?」
「そうじゃな、無事な顔を見て一先ず安心しようかの、ワシの方から出向こう、案内せよ」
「いえそれが、お会いになるのであれば、姫様の方から出向きたいとのご意向が」
「むぅ、そうか……」
「は、ではお連れ致します」
こうして王の前に、フワリとしたフリルの付いたドレスを身にまとう、クリス姫が騎士団長に並んで姿を現す。
「陛下、お久しぶりでございますわ、この度はご迷惑をおかけしまして」
王の御前にて、姫は優雅にスカートの裾を広げ会釈をする。
「うむ、そちらの方こそ大変であったな」
魔物に攫われたというのに、姫は気丈な様子を見せる。
「ブナイア大洞窟、かつて鉄の古代文明と呼ばれる遺跡を調査しておりました所、急遽現れた魔王の手下に捕まってしまいましたの」
そこに騎士団長が情報を補足する。
「姫様は、遥か昔に栄えたという文明を調べておいででした」
「ふむ、そうであったか。ならばそのブナイア大洞窟には魔王にとって調べられては困る物があるのかもしれんの」
「その事で報告があります、今回私を捉えたのは魔王の手下となった人間でした」
「何と!?」
「様子は禍々しく変貌していて、恐らく半ば魔物化した人間のようでしたわ」
「王様、犯罪者や盗賊が魔物化する事例は各地で報告されております、魔王には人間を魔物に変える力があるようです」
「何と恐ろしい」
「もしかしたら、姫様も魔物と化して城の内部から滅ぼそうと画策していたのかもしれません、いやはやよくぞご無事で」
騎士団長が何気に恐ろしい事を口にした。
「そうじゃ、現場の状況が詳しく伝わっておらんのだが、姫はどうやって脱出できたのじゃ?」
「はい、魔物に囚われた私は遺跡の研究を魔王の為に使えと脅されたのですわ」
「古代遺跡、鉄の文明には恐ろしい兵器が存在していたと噂されていますね」
騎士団長の言う通り、各地で発見された遺跡には使い方こそわからないが、鉄製の何やら恐ろしそうな武器や兵器の痕跡が多く見つかっている。
「私は趣味で古代遺跡を調べておりましたので、鉄の文明には多少の知識がありましたわ。そこで一計を案じ、協力するふりをして逃げ出す計画を立てたのですわ」
「流石姫様ですね、それで洞窟内部で爆発などが起きたのですね」
感嘆する騎士団長をよそに、姫は当時の状況をつらつらと語る。
「幸い魔王の手下は数こそ多いけれど、魔物化した人間と知能の低い魔物ばかりで、古代遺跡の知識がある者は居りませんでしたし」
「何と豪胆な事じゃ」
「鉄の古代文明を解析し魔物達に兵器を作るふりをしながら、脱出の為に自らを守る鎧を作り始めましたわ」
「ん、ちょっと待て?」
「その際、完全に魔物化していない協力者が居りましたわ。彼は魔物の通訳として私のそ傍に居りました、最後は協力していたことがばれ、魔物によって殺されてしまいました」
「何かどっかで聞いたような……?」
困惑する王様をよそに、姫様は決意を固めたような表情で。
「私は彼に誓ったのですわ。助かった命を無駄にはしないと!」
そう言うが否や、扉を突き破るようにして鉄の塊が飛来する。鉄の塊は姫の元へと飛んでくると、展開を始め、姫を包み込むようにして鎧へと変形した。
「私は決めましたの、この鉄の文明の力を世界平和の為に役立てると!」
「いやいやちょっと待つのじゃ! え、ちょなんか浮いとらんか!?」
謎の文明の力で、鎧を纏った姫は眩い光を放ちながら飛翔を始める。
「私が[鉄姫]ですわ!」
そう言い残して、窓を突き破りながら彼方へと飛んで行った。
「姫様……立派になって!」
何故か感銘を受けた騎士団上は、涙ぐんだ声で姫の門出を祝福していた。
まさに今ここで、姫の復讐記が始まったのだ。
後日。
「姫は結局何処へ行ったのじゃ!?」
「さて、行方は分かりませんが、各地で魔物の集落と思しき場所が謎の爆発に襲われたと報告が」
「……ジャーデン侯にはどう説明したらいいんじゃ!」
「かつての弱かった姫はもういない、そう素直に答えるしかありませんね」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




