隣国へデリバリー
隣国の王女が、重い病(実はただの食欲不振とホームシック)で伏せっているという情報が入ります。左京はこれを「絶好のプロモーション案件」として受注しました。
「ターゲットは隣国のロイヤルファミリー。この『焼き立てピザ・デリバリー』に成功すれば、国際的なシェアを一気に獲得できる。……アルフさん、納期(アツアツのうちに届ける時間)は30分です」
元ADのアルフレッドが、
「30分!? ここから国境まで馬で3日はかかるぞ! 放送事故レベルの無茶振りしやがって……! だが、現場の意地を見せてやる。おい、あんた! 助手席(飛竜の後ろ)に乗れ!」
とミノンに叫ぶ。
二人は左京が手配した、最高速の「超特急飛竜」に飛び乗ります。手には魔力で保温された特製ピザボックス。
ミノンが、
「きゃっ! 風が強すぎて……!」
と落ちそうになる。
アルフレッドが、片手で手綱を引き、もう片方の腕でミノンの腰をグイッと引き寄せる。
「しっかり掴まってろ。……悪いな、こんな危ない現場にまで付き合わせちまって」
いつもは「画」のことばかり考えている厳しい彼の腕が、意外なほど太くて温かいことに、あなたはドクンと胸が高鳴ります。
アルフレッドが話し出す。
「……俺さ、前世ではモニター越しにしか世界を見てなかったんだ。でも、今はこうしてあんたと一緒に、本物の風を感じて、本物のメシを届けてる。……悪くねえなって、ちょっと思ってるんだ」
ふいに見せた、公爵でもADでもない、一人の男性としての穏やかな眼差し。夕日に照らされた彼の横顔は、ゲームのラスボスとは思えないほど優しく見えました。
二人は、国境を魔法の加速で突破し、王女の寝室のバルコニーに強行着陸しました!
アルフレッドが、
「お待たせしました! 制作……いや、ディトナウス公爵家特製、『とろけるクワトロ・フォルマッジ 〜ハチミツの魔法がけ〜』です!」
と王女に声をかけました。
箱を開けた瞬間、部屋中に広がるチーズとハーブの香り。食欲を失っていた王女が、目を輝かせてピザを頬張ります。
「……おいしい! こんなに温かくて、ワクワクする食べ物、初めてですわ!」
左京が水晶玉越しの通信で指示する。
「ふむ、カスタマーサティスファクション(顧客満足度)は120%ですね。……アルフさん、ついでにそこの王女と『タイアップ契約』のサイン、もらっておいてください」




