第62話 「ゴブリンの襲撃㉗――ヴォルズム領②―」
お久しぶりです。カリンです。
今回は少しルウィージェス様の家族が治める世界についてお話ししたいと思います。
本文中に私の年齢が書いてあるようですが、それは置いといて…。
ルウィージェス様の祖父、世界創造神様は、現在3つの銀河を管理されておられます。
一つ目は、地球がある太陽系銀河。この太陽系は、ルウィージェス様の父上ラティファルス様の兄、ウラノティルス様の直系が治める銀河。
二つ目が、惑星エムラがあるメテオ銀河。メテオ銀河系はルウィージェス様の父上の直系が治めています。つまり、ルウィージェス様のご兄弟。
三つ目が、エレメンテ銀河。ルウィージェス様の父上の妹アステリアリア様の直系が治めています。
エレメンテ銀河系には、精霊界、妖精界などが存在しています。
サラマンダーとフラウは、惑星エムラで『生命の種』から生まれましたが、より強力な精霊となる為に、一旦精霊界に行き、力を溜めていました。
エムラカティア様が剣の魂シューバートに精霊剣を渡した時に精霊界に呼びかけ、惑星エムラカディアに戻っても良いと考え、応答に答えて戻って来たのがサラマンダー。
ルウィージェス様が精霊界、妖精界と惑星エムラを繋ぐことが出来たのは、世界創造神様が管理する銀河にあるからです。
サラマンダーが腐毒の影響で力を失いかけ、命からがら精霊界に戻ったことがありましたが、本当に命を懸けた脱出だったのだと思います。
サラマンダーは、シューバートが転生し戻って来る時まで生き延びる為に残しておいた魔力の殆どを使って、精霊街道を呼び寄せたのです。
本来は、精霊の呼びかけに応じて、創造神が開く街道なのですが、あの時は、創造神に連絡を取ったら、精霊界に戻る力が残らなかった為に、あのような強引な手段に出たのでしょう。そう考えると、サラマンダーの力は相当です。最高位のレベルに達していると思われます。
精霊街道や妖精街道は創造神が設置する事になっています。
『生命の種』から生まれた精霊にせよ、妖精にせよ、自由に精霊界、妖精界を行き来する資格を持ち合わせていますが、ある程度高位の魂を持っていないと、そもそも精霊街道、妖精街道まで辿り着けません。
過去に、エムラカティア様が精霊や妖精が力を持ち過ぎた為に世界のバランスが崩れ、惑星エムラ上にあった生命体を、全てをまっさらにした事がありましたが、そういう事をする精霊、妖精は、精霊街道や妖精街道にまで辿り着くことが出来ない、低位な魂を持つ者たちです。修行が足りない奴ら、と言ったところでしょうか。志が低く、性格も屈折した者が多いと聞いています。
サラマンダーやフラウの様な高位な魂を持つ者は、そもそも、精霊界や妖精界に行き、修行を積み、自己研鑽に励みますからね。
そういう意味で、特異な生まれ方をしたのが土の精霊アリカント。
アリカントは、上級神の眷属の加護を受けるエルンスト殿の魔力から生まれましたから、生まれながらに高位な魂を持っています。
アリカントの場合は、エルンスト殿の成長と共に力を付けていくので、精霊界で修行する必要がありません。
『生命の種』以外から生まれた生命なので、何もかもが例外になりますね。
そもそも、始祖の魂も『生命の種』から生まれていません。転生する際に、『生命の種』に埋め込む事で肉体を得る、そういう存在です。
そういう意味でも、ルウィージェス様自身が例外の魂の持ち主、になりますね。
ルウィージェス様の魂自体が、世界創造神様の神力で作られていますからね。
アリカントがエルンスト殿の魔力から生まれたのも、ルウィージェス様がそういう存在だから、かもしれません。
術の魂は魔術の導師なので、本来は精霊魔術も妖精魔術も、その範囲に入っているそうです。ただ、惑星エムラでは、精霊と妖精の力を制限しているので、その資格を与えていないだけだそうです。
ルウィージェス様は魔導王なので、エルンスト殿にその資格を付与する権限を持っています。
アリカントがエルンスト殿の魔力で生まれた以上、いつかは、エルンスト殿に精霊魔術の資格を付与する必要性が出て来るでしょう。きっと。
知の魂は、妖精とのやり取りをする役割を持っていました。知の魂としての役割を終えた後は、その能力を返上したそうです。
ルウィージェス様は妖精王でもあるので、返上した能力を、もし本人が望めば、戻す事が出来るそうです。
盾の魂に関しては、既に全ての能力を返上し、通常の輪廻に乗り、何度か転生生活を送った為に、そもそも魂自体にその能力を保持する力がなく、盾の魂として、やり直す事は不可能なのだそうです。
剣の魂に関しては、付与魔法はルウィージェス様、武に関しては、私が武神となったら、私が指導者として付くことが決まっています。
もし、本人が望むなら、ですけど。
岩山の状況を見て、雀の涙程にしかならないかもしれないが、少しでも多くのゴブリンを討伐しながらヴォルズム領都まで移動する事にする。
クラウスとフラウは氷魔法でゴブリンを凍らせ、エルンストとサラマンダーは逆流火魔法で凍結し、同時に、エルンストとアリカントは、凍り動きを止めたゴブリンを粉砕・圧砕しながら進む。エルンストは左右で異なる中級の広域魔法を駆使する。
湖を越えて森を抜けると、川がヴォルズム領都脇まで真っすぐ伸びており、その周りは、平坦な土地となっている。本来は草原だったと思われた。今はゴブリンの足爪で草原は見る影もなく掘り起こされ、土がむき出しになっている。
川の両岸はゴブリンの水飲み場と化している。
ヴォルズムの街を囲む領壁から3mの所まで凍らせた。これ以上近付くと、冷気で領壁を痛める危険性もある。この辺りは温暖だ。冷気に強い素材は使っていないだろう。
ルウィージェスは、上空からヴォルズム領都の大きさを把握し、領壁から3mの所で結界を張った。残すは、領壁から3m以内にいるゴブリンと、領内に入り込んだかもしれないゴブリンだけだ。
上から見る限り、ライランの街程のダメージは見られない。ただ、屋根を伝うゴブリンが数匹見える。領壁を登って入り込んだゴブリンがそれなりに居そうだ。
領都の正門近くには多くの人が集まっているのが見える。手に武器を持つ者が多い事から、正門の戸の内側からゴブリンを倒していたとみられる。その他にも、領壁の近くに多くの人が配置されているのが見える。領壁を上って来たゴブリンに対応しているのだろう。
だが、領壁近くに植えられた枝ぶりの良い木に数匹のゴブリンが見える。領壁から直接下りずに、枝を伝って、屋根に飛び降りているようだ。
領都正門から川が見える。その川が凍って行く様子が見えている筈だ。それに、風向きによっては冷気が漂ってきているかもしれない。
正門近くにいる者たちの多くが空を見上げている。明らかに騎士と思われる者が、領主邸に駆け足で向かっている姿も見える。
まさか空から板が飛んでくるとは思わないだろう。声は聞こえないが、大騒ぎになっていると思われた。
その様子をみたクラウスは面倒くさそうな顔をし、そして、
「ルウィージェス様、カリン様、直接領主邸まで行きましょう。」
と言い、エルンストも、小さく2度頷いた。
領主邸の上空に来ると、槍や剣を空に向けている騎士や兵士が見える。
ライランの街の時と同様に上空から自己紹介をし、領主を呼ぶよう騎士らに伝えると、慌てて武器を下げる者、武器は向けたままだが、左右に確認を取るような動作をする者と反応は様々だったが、数名程、互いに顔を見合わせ逡巡し、一名だけ屋敷内に急ぎ入って行った。
どうやら、あの数名が屋敷を守る者の中では地位が高いようだ。
屋敷内に領主を呼びに行った騎士が戻って来た。後ろから、明らかに歩き方が違う者が姿を現した。騎士が飛行板を指さしながら説明しているようだ。その指に導かれるように、男性が顔を上げた。着ている服からして、明らかに貴族だ。
外に出てきたヴォルズム領領主ブルーノ・フォン・ミンツ・ヴォルズム子爵は恰幅の良い高齢男性だった。ただ、その顔には疲労の色が濃く出ている。目の下には隈も見える。
その様子から、ここが囲まれてから数日は経っていると思われた。
ヴォルズム領領主ミンツ子爵の案内で、中庭に板を降ろす。
クラウスから見ると、爵位は同等だが、領主ブルーノはかなりの年配者。旧式の挨拶、領名に爵位で挨拶したら、ブルーノの方から、現代式の名で呼んでくれ、と言われ、ライラン領のカール同様、ブルーノ領主と呼ぶことになった。
但し、ルウィージェスは筆頭公爵家の者。ブルーノは頑なにルウィージェスの事をリリーエムラ伯爵と呼ぶ事を譲らなかった。
とりあえず挨拶だけ済まし、ルウィージェスとカリンは正門に移動し、正門に結界を張りに行く事にする。領壁は結界で囲んでいるが、まだまだそれなりの数のゴブリンが結界内に残っている。正門が倒されたら、一気にゴブリンが街中に流れ込んできてしまう。これだけは阻止しなければならない。
領主ブルーノの対応は団長二人に任せ、ルウィージェスとカリンは板で、正門まで移動しようとして、カリンが気付いた。裏側の領壁がかなり崩れかけていた。その時、領壁に穴が開き、ゴブリンが流れ込んできた。
咄嗟に、侵入してきたゴブリン全てを結界内に閉じ込め、穴が開いた領壁を【時空間魔法:原状回復】で穴を修復し、結界内に閉じ込めたゴブリンを【空間魔法:圧縮】と【火魔法:焼却】で灰も残さず消し去った。
飛行板に乗ったまま行った為、ルウィージェスの姿を見た者はいなかったが、そもそも、裏側まで人を回し切れていないようで、穴が開けられた場所には誰もいなかった。
誰も見ていない事を良い事に、少し離れた場所にいる者たちから見えない範囲のみ【氷魔法:広域冷凍】で裏側にいるゴブリンを凍らせ、そのまま風魔法と火魔法の【混合魔法:灼熱熱風】で瞬時に蒸発させた。
左右はまだまだゴブリンが残っている。ゴブリンを消した範囲内に結界を張り、新たに侵入してこないようにしておくのを忘れない。
飛行板で門に向かうと、門近くに広場と思われる空間があった。そこに板を着地させ、門まで徒歩で移動する。街中に降りると、ゴブリンの声が聞こえてきた。
まだ、大きく破壊されてはいないようだが、あの新型ゴブリンが侵入していれば、時間との闘いだ。
門で防衛をしている者たちに、王都から来た魔術師だと伝え、貴族証を見せる。細かい文字は見えないだろうが、色からして伯爵位と分かるだろう。
多くの者たちが、無言で数歩後ろに下がった。
騎士の一人が近づいてきた。他の者と、鎧に嵌め込まれた領の紋章を縁取る色が違う。役職持ちなのかもしれない。ゴブリン対策だろう。ヘルメットを深めに被っているが、そこから見える顔は、見た目30歳半ばと言ったところ。この年で隊長に就任したのだから、優秀なのかもしれない。
クラウスやエルンストが30歳で国王直下の団長に就任した事が異例中の異例なのだ。
ルウィージェスとカリンの陰を踏まない距離で足を止めた。
「閣下、先ず、非常時につき、ヘルメット着用のままの非礼をお詫び申し上げます。」
一旦言葉を切り、頭を下げた。
「その上で、質問をお許しいただきたい。」
「この非常時です。ヘルメットはそのままで。どうぞ。」
ルウィージェスは笑顔で返答する。
「私は、ヴォルズム領騎士団、ヴォルズム領都所属の警邏部隊隊長アギルマー・フォン・デーリングと申します。デーリング男爵家の次男です。閣下のお名前をお伺い致したく、質問させて頂きました。」
「ぼくはリリーエムラ公爵当主の実弟、ルウィージェス・フォン・リリーエムラ伯爵です。」
ルウィージェスが名乗ると、周りにいた者たちが騒めき、もう数歩ずつ後ろに下がった。
警邏部隊隊長アギルマーは慌てて片膝をつき、立位で対応した非礼を詫びた。
まさか公爵家の者がこのような状況の領まで足を運ぶなど、全くの予想外だったのだろう。
「た、大変失礼いたしました。え、えっと…、」
アギルマー警邏隊長は言葉に詰まってしまった。
「ぼくは、王国騎士団の団長クラウス・フォン・シューバート子爵、宮廷魔術師団の団長エルンスト・フォン・フォーゲル伯爵と、ぼくの専属護衛カリン騎士爵の四人で、ライラン領から来ました。今、シューバート団長とフォーゲル団長が領主のミンツ子爵と話しています。」
ルウィージェスの説明に周りがどよめく。王国騎士団の団長が、とか、宮廷魔術師団の団長が、など、驚きの声が聞こえてくる。
「詳しい事は、後でシューバート団長もしくは領主のミンツ子爵から説明があると思いますが、先ずは先に、門の安全を確保します。既に、領壁から3m離れた場所に結界が張ってあるので、これ以上、ゴブリンは増えません。ただ、3m以内にはまだゴブリンが残っているので、先ずは正門の安全を確保する為に、結界を張ります。」
アギルマー警邏隊長は理解出来なかったようだ。ポカンとしている。頭が混乱していると思われる。
「アギルマー隊長は、誰も門に近付かないよう見ていて下さい。ぼくの魔法に巻き込まれます。」
「しょ、承知した。いえ、承知いたしました。」
アギルマー隊長が指示するまでもなく、周りにいた者たちは既に安全な場所まで移動していた。これから何が起こるのか全く分からなくても「魔法に巻き込まれる」という言葉は理解出来たようだ。
ルウィージェスは、アギルマー隊長と話している間に、門に結界を張った。門には足場となる飾りが施されている。少しでも手を休めれば、あっという間に上って来てしまう。
ルウィージェスは、門の前に立った。従来のゴブリンより少し大きめのゴブリンが、結界を叩く音が聞こえてくる。数が多いからだろうか、思いの外、打音が耳に響く。
ルウィージェスは顔を顰め、両手で両耳をパンパンと軽く叩いた。
結界を張っている本人だからこそ、より如実に感じる、不規則で不快な打音。
不快な感覚を意識の隅に追いやるように、呼吸を整える。
ぱっと見た感じ、恐らく、全てが新型ゴブリン。これに侵入されたら、普通の領民の家は、簡単に窓ガラスや扉が破られ、時間の経過とともに壁が削られ、ライラン領都で見たような状況になるだろうというのは、容易に想像が付く。
領壁に近いゴブリンは全て一旦離さないと火魔法が使えない。
【空間魔法:地図】と【空間魔法:照準】で、領壁から1m以内にいる全てのゴブリンにマーカーを付ける。結構な数のゴブリンが、領壁の上に登っていたことが分かった。
マーカーが着いたゴブリンを、【風魔法:圧弾】で領壁から離れた場所に弾き飛ばす。そして、結界内に残るゴブリンを、【火魔法:火焔旋風】で全てを焼き払った。
魔石埋めは人手がいる。これは後で頼むことにする。
「アギルマー隊長、これで、領壁内に新たにゴブリンが侵入する事はありません。領内に入り込んだゴブリンに注力して下さい。」
「あ、ありがとうございます。」
と貴族の礼を取ったアギルマーだが、状況を呑み込めていない。
これ以上ここにいても何もすることがない。飛行板で領主邸に戻る事にする。
ルウィージェスはカリンと共に、先ほど着地した広場で飛行板を改めてアイテムボックスから取り出し、上空から領主邸に向かった。
領主邸に戻ると、先程と同じ飛行板に乗って来ただけあって、領騎士たちもルウィージェスたちが戻って来た事を直ぐに理解し、部屋に案内された。
中では、クラウスたちが領主を含める複数人と話し合っていた。
「領都を囲んだ結界内に残ったゴブリンを片付けてきた。」
クラウスとエルンストに伝えると、二人が頭を深く下げ、礼をした。
最初に軽く紹介だけして直ぐに正門に移動したからだろう、領主ブルーノが片膝を折り、挨拶をしようとした為、今度もそれを止めて、会議の進行を優先させた。
聞くと、ちょうどクラウスがライラン領都の状況を説明していたところだったと言う。
「ブルーノ領主、ゴブリンがこの街に辿り着いたのは、いつですか?」
「一昨日の昼過ぎ、日が傾き始めた頃に、ボルベド領の方から黒い波が近付いてくるのを、防壁の上から監視していた騎士が気付きましてな。それが、大量のゴブリンと気付いたのは、それから間もなくだった。今日は、まだ風向きが良く、あの独特の臭いは少ないが、昨日は、もろにこちらに臭いが流れてくる状態だったから、大変であった。」
「一昨日…か。」
クラウスは目を閉じ呟いた。今朝、魔石を通して見た光景が思い出される。
「一昨日というと、洞窟を閉鎖して、5つ目の村に到着した日、ですね。」
エルンストが時間経過を確認するように呟いた。
クラウスも、エルンストの呟きに頷く。ボルベド領の方からゴブリンの波が襲って来た、とブルーノ子爵は言った。ボルベド領都からここまで馬車で2日の距離と聞いている。荷を運んでいても、馬の移動速度はそれなりに早い。その馬車で2日なら、あれだけの大規模集団になっているゴブリンの移動速度ではもう1日はかかると考えて良いだろう。つまり、襲撃を受けて、少なくとも3日は経っている、という事になる。
「ブルーノ領主、ボルベトの街はゴブリンに侵略され、領主邸も襲撃を受けていました。遠くから見ただけなので、生存の有無は確認できておりませんが。」
クラウスの説明に、領主ブルーノ子爵は喫驚に目を見開き、そして、目を閉じ、大きく息を吐いた。
「我々の所には一昨日来た。そうなると、3日、いや、1日くらいは抵抗出来ただろう。そうなると、4日前くらいに襲撃を受けた、という事なのだな。」
領主ブルーノは上を向き、目を閉じた。
「4日前とすると、生存は、難しいかもしれんの…。」
二つの街は距離的にとても近い。それなりのやり取りがあったのだろう。近しい間柄だったのかもしれない。
少しの間、沈黙が落ちた。領主ブルーノの後ろに立つ、執事と家令と思われる、二人の男性も俯き、悔しそうな表情をしている。
沈黙を破ったのはエルンストだった。
「ブルーノ領主、我々は、この街までの情報しか持っていません。他の街の様子など、何か情報は入っていませんか?」
その言葉にしばらく考えていたが、ブルーノは何かを思い出したかのような表情をした。
「10日ほど前だったろうか。いや、9日前か。全てのザークセン州領内の領主宛てに、州領都ドレスデンから『非常に大きなゴブリンの営巣地の発見情報あり』と早馬が来ていたな。」
ブルーノは早馬が来た日に自信がなかったのか、後ろに立つ男性に視線を送ると、二人のうち年下の方が頷いた。どうも、彼が執事の様だ。
その言葉を継いだのは、もう一人の男性。家令でビョルンと名乗った。ブルーノの親戚筋に当たる者だと言う。両親が共に準貴族であるために姓は持っていないと説明した。執事の方は、名をバーカードと言い、少し年が離れているが、ビョルンの異母弟と紹介された。
「ヴォルズム領の騎士団はゴブリンの襲撃に備えるため、防壁周辺を固めるなどの準備をし、冒険者ギルドの方では、その規模を見極める為、数組を派遣したと連絡がありました。ゴブリンの襲撃を受ける前日の事です。プファルーツ州領の方で、複数の村が襲撃された、とライラン領からの早馬を託された騎士殿が話して下さり、我々は、向こう側にゴブリンは流れた、と判断しました。しかし、念のためと防壁周辺の防御は解かずにいたのです。そこに、あの大群が襲ってきました。」
「なるほど…。」
家令ビョルンの話を聞いたクラウスが指で顎をなぞりながら呟く。
「10日前にここに州領都から早馬が届いたなら、ボルベド領都まで更に1日かかる。10日前というと、教会の医療院に怪我人が運ばれた日、だな。」
「その前日に、我々が鳥の森の異変を確認しています。」
「その時既にゴブリンの異常行動が確認されていた、と。そうなると、その早馬が来た時には、ボルベドの街は襲われていた可能性もある訳か。もしくは、早馬がゴブリンにやられたか。」
話を聞く限り、始めに被害が出たのはプファルーツ州領側、という事になる。しかし、始めに異常を確認したのは、ザークセン州領側。
「州領都ドレスデンの位置は王都側です。どのようにして情報を得たのでしょうね。」
エルンストの疑問はもっともで、クラウスも、その点が気になっていた。
何故、王都に近い州領都ドレスデンが、王城に商業ギルドからも何処からも情報が入っていない時点で、『非常に大きなゴブリンの営巣地の発見情報あり』と通達を出せたのか。
そもそも、一体何処でその巨大なゴブリンの営巣地を見つけたのか。それ程危険なものと認識していたのなら、何故王城の方に連絡を入れなかったのか。王城に連絡が入っていない時点で、ザークセン州領主は、商業ギルドにすら連絡を入れていない、という事になる。
「9日前、我々が『鳥の森』の異常に気付いた時点では、陛下も宰相閣下も、ゴブリンの異常についての情報は得ていませんでした。」
クラウスも頷く。あの長兄オルトールドが、そのような重要な連絡を見落とすはずがない。
そもそも、オルトールド本人宛の連絡でない限りは、宰相の執務室に届く前に、何人もの目がそれを確認している。ゴブリンの襲撃を、重要度が低いと判断するような者がいるとは思えない。
領主ブルーノは団長二人の会話を黙って聞いていたが、ザークセン州領主側から王城へ、一切の連絡が行っていない事に驚いていた。
手紙には、はっきりと『非常に大きなゴブリンの営巣地の発見情報あり』と書かれていたし、王国の法律では、そのような危険な情報を入手したら即座に王城へ連絡を入れることが義務付けられている。
領主ブルーノの脳裏には、ザークセン州領・州領主ウルスラ・フォン・クライン伯爵の顔が浮かぶ。顔までも肥満太りし、非常にふてぶてしい顔をした御仁。年は60を過ぎ、もうすぐ定年になるというのに、未だ交代時期の知らせがない。
次期伯爵予定の息子だって、もう30歳代の筈だ。だが、何一つとして功績らしい功績を挙げたという話が聞こえていない。
今回のゴブリン討伐を息子の功績にしたいがために黙っているのか?
一瞬そう思ったが、それと義務を履行しない事は繋がらない。ブルーノにも、州領主ウルスラの行動が、全く理解できずにいた。
クラウスとエルンストは、岩山に点々と開いた複数の穴を思い出していた。
自分たちはヴォルズム領都に向かう為、途中で岩山を背に移動してきている。
「ブルーノ領主、あの岩山は、具体的にはどこまで続いているかご存じか?」
ブルーノは後ろに立つ執事バーカードにザークセン州領の地図を持ってくるよう指示し、クラウスの問いに答えた。
「あの岩山は、トリーマ領から南に馬車で1時間程度下がった所まで続いておりますな。トリーマ領は、岩山から続く硬い岩盤で、農作物の育成には向かぬ不毛な土地だが、建築資材としての固い石が特産。州領都までは馬車で4時間程度の距離にある。」
それを聞いて団長二人は目を見開き驚く。今まで、岩山に一番近いにはボルベト領都だと思っていたが、それ以上に近い領都があると言う。
「…一番初めに襲われたのは、そこか?」
クラウスの声には僅かだが怒りが籠る。
執事バーカードが持ってきた、ザークセン州領の地図を机の上に広げた。
バーカードが指を指した場所にトリーマ領と書かれている。その場所は、地図上では岩山から少し離れて見えるが、トリーマ領近くまで来ると傾斜が殆どないために、地図上では岩山から離れたように見える、とブルーノが説明する。
もし、岩山に一番近いトリーマ領がゴブリンの襲撃にあったのなら、そこから馬車で4時間しか離れていない州領都には、早馬を出せばどんなに遅くても、ゴブリンの攻撃をよけながらでも、1時間後には連絡が入っている筈だ。そこから王都に急ぎ早馬を出せば、2日後には着く。その時既に早馬が通れない程のゴブリンに襲われていたなら、とっくの昔に王都にまでゴブリンは辿り着いているだろう。
「何故、王城に連絡がない。」
「陛下と宰相閣下から、その地名は一度も出てきていません。」
――――何か隠している?
クラウスとエルンストが、ザークセン州領・州領主ウルスラ・フォン・クライン伯爵に、不信感を抱いた瞬間だった。
何らかの理由でザークセン州領・州領主ウルスラ・フォン・クライン伯爵が、故意に情報を隠している可能性が高くなった。そうであれば、もう少し詳細を聞いておく必要がある。
「ところで、」
クラウスが領主ブルーノに聞いた。
「早馬が届いたのは、州領都ドレスデンからだったのだな?」
「はぁ、」
領主ブルーノは、クラウスの質問の意図を掴みかねた。
「その後、州領都の方から、騎士団の派遣とか、そういった具体的な話はあったか?」
ブルーノは家令ビョルンに話を振った。
「いえ、全く。次に得たのは、プファルーツ州領の方で複数の村が襲撃された、という情報のみです。これは、先程もお話しした通り、ライラン領の騎士殿からの情報です。」
クラウスは、視線だけエルンストに送った。エルンストも、同じ意見を持ったようだ。
クラウスが小声でルウィージェスに問う。
「ルウィージェス様、今領壁を囲む結界は、領壁からどの辺りに張ってありましたっけ?」
「領壁から大体3mの所で囲んでいる。結界内のゴブリンは既に片付けてあるけれど、領都内には、それなりの数が侵入してっぽい。結構声が聞こえてきた。」
「3mだと、ちょっと近いですかね。ライラン領の時の様に、領壁から5,6mくらいまでは遠ざけたいのですが、」
「うん、わかった。」
「ありがとうございます。」
クラウスは、ブルーノ領主に視線を移した。
「先程ブルーノ領主もご覧になった通り、我々はリリーエムラ伯爵の飛行板で上空から移動してきたが、岩山の周辺は、ボルベドの街も含めてゴブリンで埋め尽くされ、岩山に複数の営巣地と思われる穴も確認している。」
一旦言葉を切った。ブルーノも、後ろに立つ家令と執事も話についてきている。
「ゴブリンは寒さに弱い。ゴブリンの足止めになればと思い、森の中にこの近郊の水瓶と思われる湖があったが、その辺りからヴォルズム領都の近くまで、氷魔法などでゴブリンを凍らせ、破壊しながらここまで来た。その甲斐もあり、今、ゴブリンの進行はかなり遅くなっている。一時的だが足止めにはなった。だが、氷が解ければまた移動して来るだろう。」
領主のブルーノだけでなく、家令と執事の二人にも、この情報は届いていなかったようだ。三人して驚きに目を見開いている。
「現在、このヴォルズム領都は、領壁から3mの所にリリーエムラ伯爵が張った結界で囲まれ、領都内に侵入したゴブリンは別だが、結界内に残ったゴブリンは全て伯爵が先ほど片付けてくれている。」
この情報も届いていない様だ。三人は、先程から驚きの連続で、完全に動きが止まっている。ブルーノに至っては、あんぐりと口が開いたままだ。
「領壁から3mでは、長期戦に備えるには近すぎるから、リリーエムラ伯爵には新たに、領壁から6m位離れた所に再度結界を張って頂く。」
クラウスはルウィージェスを見た。ルウィージェスは無言で頷いた。
「その後、新たに張った結界内に残るゴブリンを討伐する為に、ライラン領都に残している討伐隊全員を【ゲート】で呼び寄せる。結界内のゴブリンを全て退治した後、ライラン領都と同様に、『結界魔石』を埋め込み、長期戦に備える。」
一旦言葉を切って、前に座るブルーノと後ろに立つ二人を見るが、理解しているかどうか、かなり怪しい。
「理解して頂けているか?」
あまりの無反応さに、流石のクラウスも心配になった。
「…あ、…、」
ブルーノは何かを言いかけたが、声になっていなかった。
「ブルーノ領主?」
クラウスが領主を呼ぶが、反応は芳しくない。
家令が、ブルーノに小声で何かを聞いている。それに対し、ブルーノは無言で頷き、それを確認した家令は一歩前に出て、クラウスとエルンストを交互に見た。
「発言する事をお許し下さい。」
クラウスは黙って頷いた。
「申し訳ございません、恥ずかしながら、長期戦に備える方法が理解できませんでした。恐縮でございますが、今一度、ご説明願いませんでしょうか。」
古参侯爵家出身のクラウスと古参伯爵家当主のエルンストは、家令の見事な立ち振る舞いに感心する。
自分の主にこれ以上恥をかかせない為の行動であるのは明白。だが、事が事だけに、誤魔化す事も許されない。だから、恥を忍んででも理解しようとしている。
全ての恥を一手に引き受けた、家令ビョルンに対する二人の評価は爆上がりだ。
一方で、ルウィージェスのブルーノに対する評価はかなり低かった。
たかだか50年、60年生きてきただけで、何を恥ずかしがっているのだろう?知らない事が沢山あって当たり前でしょう?何故、素直に理解出来なかったと言わない?何故、自分から聞かない?
ルウィージェスの目には、家臣に全てを押し付けたブルーノの虚勢が滑稽にうつっていた。
当主として長年部下を引き連れ、領民を導いてきた、その矜持を理解するには、17年という神生経験は浅すぎた。
ルウィージェス同様に、カリンのブルーノに対する評価は低い。
人間族でいうところの30歳代に見える、落ち着いた女性、これが周りからのカリンの評価だ。
だが、カリンは神族。誰も聞かないから黙っているが、実年齢は既に2億年を超えている。
カリンからしたら、年齢二桁は未熟で当然。その年で、知らぬことを恥と思うとは、何と言う思い上がりか。自惚れるな、自分を過大評価し過ぎだ。
だからカリンも、ブルーノが家令を前面に押し出し、恥を一手に引き受けさせた事に対し、酷評していた。
家臣を守れよ、立場の弱き者を矢面に立たせるな。
姓を持たぬ、社会的地位が脆弱な者を、古参侯爵家出身子爵当主、古参伯爵家当主を前にして直に質問させるな。未来の武神の怒りは、この一点に尽きる。卑小な人間族、これが、カリンが下したブルーノへの評価。
全てを億単位で考える神族との価値観の違いは、1年や2年で埋められるものではない。
だが、ルウィージェスは兎も角も、他の者たちは、社会的価値観、判断基準では大人に分類される。
だから、表情を崩さない、変えない。見事なポーカーフェイスで対応する。
「家令ビョルン殿、どの辺りまで理解したか伺いたいのだが、宜しいか?」
「はい、シューバート騎士団長閣下、先程の説明の中に『結界を張った』という言葉があったと思うのですが、結界を張ったとは、一体どういう意味でしょうか?」
その質問に対して対応したのはエルンスト。
「家令ビョルン殿、その質問に対してお答えする前に、ビョルン殿は、結界をどのようにご理解なさっていらっしゃいますか?」
「恐れながら、」
ビョルンは、胸元からハンカチを出し、額から吹き出る汗を拭いた。
宮廷魔術師団の団長と言ったら、この国最強の魔術師。その者から魔法に関する質問をされ、答えなければならない。その心労からくる緊張は、相当なものだろう。尋常でない汗も理解出来るというもの。
「小生は結界という物を見たことがございません。愚生が知っているのは、空間魔法属性が使える魔法使いが、見えない盾を張る事ができ、攻撃を防ぐことが出来る、その程度でございます。」
その答えに、クラウスは思わず天井を見上げた。
あまりに魔導王ルウィージェスの巨大魔法に慣れ過ぎて、一般的な魔法のレベルを完全に失念していた。クラウスも、自身の焦りを自覚した。
「すまなかった。そうだよな。」
クラウスは素直に陳謝した。
その時、エルンストの肩に乗るアリカントが、異様にソワソワしているのに気付く。
小声で聞くと、アリカントは、ゴブリンの声が近くで聞こえる、と答えた。
のんびりと理解を得ている時間はなさそうだ。
エルンストは伝家の宝刀で納得してもらう事に決めた。
「ビョルン殿、リリーエムラ伯爵はリリーエムラ公爵家の者、公爵当主のご令弟です。リリーエムラ公爵家は『創造神の血族』と言われているのは御存じですよね?」
「…はい、それは勿論存じております。」
エルンストの問いに対し、ビョルンの返事が遅れた理由を、二人とも想像出来た。答える声が震え、一気に顔から吹き上がる汗、首を伝う大量の汗も、理解出来た。
ビョルンは流れる汗を懸命に拭いている。
カリンのブルーノを見る目がどんどん冷やかになっていく。
ブルーノは、ルウィージェスとカリンが領都の正門に移動する前に二人から自己紹介を受けている。正門から戻って来た時も、公爵実弟への挨拶をしようとしていた。
だが、最初に、外で挨拶した時には家令と執事の二人はおらず、正門から戻って来た時も、執事はいたが、家令ビョルンはまだあの部屋には来ていなかったから、ブルーノから聞いていない限りは知らなかった筈だ。
騎士団と魔術師団の団長らとの話が既に始まっている時に、二人とも、立場的に私語は慎むだろう。家令ビョルンがルウィージェスの立場を知る機会は全くと言ってなかった筈だ。
その、一番情報を得る機会も、心を整える時間も全くなかった者に、神族の血族であると紹介された者が行う事について質問を続けさせ、重責を負わせ続ける領主の存在が、カリンの中で薄れていく。
ルウィージェスが、チラっとカリンを見る。カリンは未来の武神だ。守るべき者を守らない輩に対して、非常に厳しい。
だからルウィージェスは、ビョルンがあのような状態になっても動かないブルーノに対して、カリンが怒りを覚えている事に気付いていた。
ルウィージェスも、この状況に対し立腹していた。だから、ルウィージェスの中からも、ブルーノの存在が薄れていく。
神が、目の前にいる者の存在を意識しなくなる。
ルウィージェスもカリンも神だ。惑星の創造神と異なり、本来なら知る機会のない神々。だが、今、二人は地上に降臨しており、地上の者がその名と顔を知る機会がある。
二柱本人たちが特に意識しなくても、二柱にその存在を認められた者は、大なり小なりの恩恵を受ける。だが、目の前にいながら、その存在を神が意識しなくなる、その存在が薄れていく、それは、即ち、恩恵を受けなくなる、という意味。一言で言えば、自分の存在を直接知る神からの庇護を失うという事。
地上の者は知らないが、それは非常に恐ろしい事。ましてや、ルウィージェスはこの惑星の創造神の実弟。創造神の判断に大きく影響を与える、大きな一柱。
流れ落ちる大量の汗を見ながら、ビョルンには申し訳ないと思いながらも、エルンストは続けた。
「多くの者が、それを噂と信じておりますが、事実です。ですので、ルウィージェス様の魔法は強大です。一般の魔術師が使う『結界』は、ビョルン殿の認識通りです。ですが、ルウィージェス様は、このヴォルズム領都を守る領壁を『結界』で囲んで、これ以降、ゴブリンが入り込まないようにしました。」
エルンストはビョルンの様子を確認する。
ビョルンは、エルンストが話した事を復唱し、理解しようと努めている。
アリカントの言葉はルウィージェスにも聞こえていた。実際にルウィージェスも、領内に入り込み、屋根を伝うゴブリンを見ている。早く討伐しないと、ライラン領都のように被害が大きくなる。
ルウィージェスはアイテムボックス内から薪を取り出し、簡単な模型を作った。
「あのね、これがヴォルズム領都だと思って。領都を守る領壁がこれね。この領壁を、今、ぼくの結界で、こんな風に囲んでいるんだよ。」
そう言いながら、ヴォルズム領都を模した模型の周りに、色を付けた結界で、クルリと囲んだ。
ようやくビョルンは理解出来たようだ。
「今、この結界はすごく領壁から近いから、長期間この状態だと、ちょっと気分的に厳しいでしょう?だから、クラウス団長は、これから、」
そう言うと、異なる色の結界で、始めの結界を囲んだ。
「少し離れた場所に別な結界を張って、領壁からゴブリンをもう少し遠ざけようとしているわけ。領内に入り込んだのは別だけど、この内側の結界内のゴブリンは既にぼくが全て片付けた。だけど、外側の結界との間には、ゴブリンが残るから、このゴブリンを退治しましょうっと話していたんだよ。」
ブルーノも何気に前のめりになって説明を聞いている。
「クラウス団長が言ったように、今、王都から来た討伐隊はライラン領にいるから、ぼくの空間魔法でライラン領とここを繋いで皆を呼ぶよ、という話だったわけ。」
クラウスとエルンストは、思わず苦笑してしまった。
本来なら不敬ともとられかねない話し方だ。だが、エルンストがリリーエムラ公爵家の話をした後なら、話は異なる。神の血族の者の説明に対して不敬だ、と思う方が不敬だ。
家令ビョルンも執事バーカードも姓は持たずとも、ミンツ子爵家縁の者たち。
筆頭公爵家の噂は当然知っている。「不可侵家」と呼ばれている事だって知っている。
口調とは裏腹に、見た目年齢も相まって、自身が持つ武器を最大限に有効活用したルウィージェスに、ちょっと舌を巻く。
一見、一切の表情を変えずにいるカリンは、胸の内で細く微笑んでいた。
皆の目が模型に集まった瞬間に、ルウィージェスが家令ビョルンに対して、小さな恩恵を渡した事を見逃さなかった。
ブルーノに何か起こっても、彼は助かるだろう。彼が身を挺して、神からの守りを失ったブルーノを守っても、ビョルンはルウィージェスの恩恵に守られるだろう。
その恩恵は、本当に小さいもの。数回で消えてしまう、本当にささやかなもの。それでも、カリンは小気味良かった。同時に、自分の主の優しさが嬉しかった。
今回の第61話から、ザークセン州領の話が始まりました。初めに向かったのはヴォルズム領の領都です。
ヴォルズム領はライラン領と異なり、色々と問題を抱えた所の予感が。
次は、来週10月10日(土)20:00公開予定です。
第63話 「ゴブリンの襲撃㉘―ヴォルズム③―」
来週もよろしくお願いいたします。
また、お会いできるのを楽しみにしております。
月 千颯 拝




