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生まれ変わったら天才少年? 〜いいえ、中身は普通のオバサンなんで過度な期待は困ります  作者: 藤村 紫貴
第三章

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第百十六話 所詮私の予定なのですから。


 辺境伯夫妻が気球から降りて、次はフィアの番。

 ベガ様と私は今日でなくても構わないし、お先にどうぞとフィアに譲ろうとしたところ、警護のためにも一緒に乗り込むと思っていたデイラックがフィアと一緒にどうぞとばかりにベガ様と私を押し込んだ。

 『貴方が一緒であれば私よりも間違いないでしょう』と。


 いやいや、フィアの警護は貴方達の仕事。

 私に押し付けるのはやめましょうよ。

 と、言おうかとも思ったが、閣下達の一人分の体重よりもベガ様プラス私の体重の方が間違いなく軽いはず。フィアがそれなりに強いのも知っているし、特に断る理由もなかったので私が防御を担当すれば済む話かと諦めて三人乗りすることにした。

 フィアと一緒だったのは予定外だったけど、無事になんとかベガ様の好みの男性像を少し聞き出すことにも成功した。

 好みのタイプは優しくて頭が良くて、ヒールを履いた自分より少しだけでもいい、背が高い人。武芸については強くなくても良いのかと尋ねたところ、心配なら外出の際には護衛をつければ済むことなのでどちらでもいいと。顔立ちはあまりゴツイのはお好きでないようだ。父親である辺境伯みたいなタイプが好きなんじゃないかとも思っていたのだが辺境伯のスキンシップが激しいらしく、ああいう暑苦しいタイプは御遠慮したいとのことだった。


 優男系の顔で細身で頭が良くて優しい人?

 好みが結構私と被ってるような。

 私の場合は優しい人じゃなくて仕事ができる人だけど。

 誰にでも優しい人でなくても私は私に優しければそれでいい。仕事ができるということは思い遣るかどうかは別として他者の心をある程度察して動ける人だし、特別な才能を持つ人は別として、そう思わせるようにソツなく対応できているからというのが理由だが、ベガ様が言うのはおそらく誰にでもある程度優しいタイプだろう。

 ウ〜ン、結構いるんだよね。

 程度にもよるけど商業班には特にそのタイプが多い。

 何故なら優しくしておいた方が得だから。

 作るなら敵ではなく基本味方という考え方。ナメられるのは宜しくないが優しいと思われていれば相手が油断する。親しくなれば無理も押し通さなくなるからその方が商売しやすいというわけだ。その笑顔に多少の胡散臭さはあるけれど、相手が美人なら間違いなく満面の笑みで対応するから問題ないと思うのだ。

 面食いというほどではないようだがテスラの顔を見て頬を染めてたことを考えるとそれなりに面食いなのか?

 いや、テスラを基準にしては駄目だろう。

 アレは規格外の傾国級だ。

 男でもテスラに見惚れて振り返る人をよく見かける。だが美しすぎると今度は女性に嫌厭される傾向があるのは間違いない。見るだけなら目の保養だが隣に並んで引き立て役になる。それが嫌だということらしい。

 私は好きな人の引き立て役なら光栄だって思うけど。

 綺麗な恋人を連れて歩けるなんて自慢でしょう?

 だがイケメンが嫌いな女性は少ないはず。ってことは、やはり狙い目はユエトとスキットか。残念だがミゲルはガッチリ体型、バルディはベガ様がヒールを履くと同じくらいの身長だ。

 となればまずはあの二人を付けてウチの案内を。

 そんなことを考えているとトントンッと肩を叩かれて顔を上げる。


「ハルト様、色々と企んでいるところを申し訳ないのですが、残念ながら女性幹部の誕生は暫く先になりそうですよ?」

 ブツブツといつものように呟いていた私を珍しくマルビスが邪魔をした。

 いつもなら極力私の思考を遮ろうとせず、見守りに入ってそれをメモって利用するのに何故だろうと『あれを』と視線で指し示したそちらに目向ける。

 瞬間、目撃した光景に目が溢れ落ちそうなほど見開いた。


「確かにここには貴方自慢のイイ男が揃っていますけど、彼の方に太刀打ち出来る男は流石に厳しいかと」


 ・・・・・。

 あ〜っ!

 ウ、ウチの女性幹部候補がっ!

 私の立てた計画が目の前でガラガラと音を立てて崩れていく。

 折角ここまで御膳立てしたのにあんまりだ。

 トンビに油揚げを攫われたっ!

 マルビスのその台詞に反論できるはずもなく、そこには仲睦まじい姿で微笑み合いながら会話を交わしているフィアとベガ様の姿があった。


 いたね。

 そういえばそこにも。

 ベガ様の好みピッタリの、しかも特級ブランド付き男が。

 年頃も丁度良く、美形の王子(おとこ)が。

 これがデイラックがフィアと一緒に乗らなかった理由か。道理で強引に私達を押し込もうとしたわけだ。おそらくいつも一緒にいるデイラックやコルトバルならフィアの女性の好みをよく知っているはず、そこで私というお邪魔ムシはいるものの、フィアの反応とベガ様の様子を見るのにも丁度いい、むしろ私という友人がいることで警戒心を和らげるクッション材的役目となり、会話もしやすかろうと思ったのだろう。

 だがその彼等の目論見が判明したところで時既に遅し。

 

「まあよろしいんじゃないですか?

 女性幹部候補は惜しいところですが、未来の王妃様ともなれば第一王子殿下の代でもハルウェルト商会の王室御用達は約束されたも同然。しかもファッションショーの出演予定は確保出来ました。

 話題を浚うのは間違いないかと。充分にもとは取れます。

 ウチに損はありませんよ」


 そうね。

 そう、でしょうね。

 宣伝効果ならばかなりあるのは間違いない。

 ゲイルの言うことももっともです。

 でもまさか、こんな落とし穴があろうとは。

 フィアもつい先日までベガ様は対象外だったんじゃないの?

 素通りで声すら掛けていなかったじゃない。


 それが美人だと判明した途端にコレですか?

 折角私が見つけて磨いた原石なのに、

 これからも磨いて活躍してもらうつもりだったのに、

 世の中というものはどうしてこうもままならないものなのか。


 ・・・・・。

 まあいいか。

 こうなってしまったのは仕方がない。

 フィアの花嫁候補選びに陛下も頭を抱えていたことだし、身分的にも辺境伯令嬢であるなら悪くないはずだ。

 恋に身分差はないとよく言う人がいる。

 確かに私もそう思う。

 だが結婚となれば話は別だ。その乖離が大きいほどに苦労は増す。

 女の子が憧れる王子様に見初められてのシンデレラストーリー。

 結婚はゴールではない。

 新たな生活の始まりなのだ。

 そんな夢物語は現実となれば苦難の連続。

 学ぶべきことが多すぎるのも勿論だが、身分が低ければ生活のギャップを埋めるのには並大抵の努力では務まらない。上流階級、まして王族ともなれば格式、礼儀作法にしきたり、教養、その他、身につけなければならないものが山程だ。そして認められなきゃいけないのは当人だけにとどまらない。陛下、お妃様、国の要人達、そして国民だ。『愛があれば大丈夫』なんて幻想は最初だけ、恐ろしいほどの根性と気合、努力無しには成り立たない。

 必要なのは神経も心も擦り切れて、それでも前を向く、折れない覚悟。

 好きなだけでは済まされない、夢の代償はそんな現実だ。

 花のような笑顔と美貌だけで乗り切れるほど妃の座は甘くない。

 城にある財産は国民から集めた税金であり、無限ではない。湯水のように考え無しに散財すれば当然だが国が傾く。そして時には国王陛下の名代として諸外国や各領地に赴かなければならない。安穏と城で優雅に御茶会を開いているだけと考えては駄目、贅沢で怠惰な暮らしを望むならむしろ財政豊かな大貴族の長男か豪商に嫁ぐべきだ。

 しかしベガ様なら上位貴族の娘、礼儀作法も辺境伯の令嬢として子供の頃からしっかり叩き込まれているだろうし、先程のドレス一枚も自領の経済状況を考えて買って欲しいと言えないほどには慎ましやかだ。しかもミレーヌ様が次男の代わりに長男の補佐に考えるほどには優秀。フィアの花嫁に相応しいと言えなくもない。

 それでも苦労はするだろう。

 後はベガ様にその覚悟が出来るか否か、だが。

 

 この際頭を切り替えて、ベガ様にその気があれば上手く二人の仲を取り持って、陛下とフィア、ついでに辺境伯にも恩を売っておこう。

 人の恋路を邪魔して馬に蹴られて死ぬのもゴメンだし、女性幹部候補は惜しいがその仲を引き裂くほど心も狭くない。

 相手がロクデナシの男なら邪魔もするが相手がフィアではね。

 だが転んでもタダでは起きないのがこの私とハルウェルト商会。

 この出会い、しっかり利用して、宣伝に使わせてもらおうじゃないの。

 ウチの化粧品とドレスが結んだ縁。

 そうだな、キャッチコピーは、


 『貴方の魅力発掘 オシャレして貴方だけの王子様を捕まえよう』

 なんてのはどうだろう? 


 勿論文句は言わせません。

 私の計画をブチ壊した責任はしっかり取って頂きますよ?

 


 とりあえず今日の仕事が無いというならこのまま明日の朝までフィア達に滞在してもらい、彼等には明日の朝、陽が昇る前にでもお帰り頂き、仕事に戻ってもらうとしましょう。

 迎賓館を追加でカラル達に用意してもらい、厨房にはフィア達の夕食分を追加。

 ロイにさりげなくデイラック達にそれを伝えてもらい、全面的バックアップ体制を敷くことを決定。その裏工作に走ってもらった。

 当然、ミレーヌ様にも応援を要請。辺境伯と閣下には黙っていることにした。

 何故かって?

 そりゃあ空気を読もうとしない無骨な武人に雰囲気をブチ壊されては敵わない。辺境伯には辺境伯の良いところは勿論あるが、今回は残念ながら『およびではない』のだ。ライオネルには閣下と辺境伯を騎士団に剣術指導をお願いし、連れて出してもらいつつ、そのまま夕方にはウチの騎士団がたむろしている酒場に連れ出してもらう。酒が入ればまずあの二人は余程の用がない限りはこちらに戻ってこない。マルビスとゲイルには奥方様二人に発売前のメイク道具をセールスしてもらう程でそちらの商品がおいてある部屋に誘導、私はロイと一緒にフィアとベガ様を連れて迎賓館一階の応接室でお茶を。デイラック達にはイシュカとランスと一緒にその扉の外と窓の前で警護してもらって、タイミングを見計らいテスラにミレーヌ様が呼んでいると私達を呼びに来てもらう。四人しかいない部屋からロイと私が出ていけば部屋にはフィアとベガ様が二人きりになるっていう寸法だ。

 これで二人の距離が近くなるなら充分脈アリ。

 急遽立てた計画にしては上出来でしょ?


 ダメなら私の当初の計画に戻ってウチのユエトとスキット推しで。フィアと比べられないか心配ではあるものの人の好みはそれぞれ、わからない。

 だって私ならフィアよりあの二人を選ぶもの。 

 王室に入るなんて真っぴらだ、平民として自由気儘に生きる方がいい。でもそれは私の選ぶであろう選択であってベガ様が私と同じとは限らない。

 それは価値観の相違というものだ。

 あの二人だって充分私が推すくらいにはイイ男ですからね。

 私のロイ達には負けるけど。

 でもそれは『私にとって』だ。

 今はあの二人に彼女がいなくても、いつか会えるのではないかと思うのだ。

 彼等が一番だと言ってくれる、運命の人に。


 というわけで適当に理由付けしてもらって私の側までお越し頂いたミレーヌ様にマルビスが作戦をお伝えする。

 辺境伯達に背を向けたままのミレーヌ様の顔は真剣そのものだ。いつもどこか余裕があるようにも見える対応は見る影もない。こんなに必死なミレーヌ様を見るのは初めてかも。

 ウ〜ン、やっぱり女性は表情で変わるなあ。

 美人のこういう顔はなかなかの迫力だ。


「・・・と、このような段取りでどうかとハルト様の提案なのですが」

 マルビスが表情はあくまでも笑顔、目だけが微妙になんというかイヤラシイ(?)所謂野次馬根性丸出しの悪徳代官顔。

 これは間違いなく次代のお妃様の御用達を狙っての計画的犯行ってヤツだ。

 構いませんよ?

 商会経営は全てマルビス達商業班に任せてありますからどうぞ御存分に。当然私が協力できるところは全面協力致しますとも。

「わかったわ、こちらは任せて頂戴。こんなチャンス、二度とないわ。絶対上手く行かせてみせる。ベガと一緒に私も残るから」

「でも来客が・・・」

「そちらよりもこちらの方が重要に決まってるでしょう。

 夫と長男、秘書でも対応できるよう今夜中に準備は整えておくから平気よ。あの人には私以外の妻も二人いるもの、接待自体は問題ないわ。先方には後日、私から謝罪の手紙と品物を送っておくわ。ロイ、小さいものでいいわ、私の部屋に執務机を。ペンと紙も束で運んでおいてもらえるかしら」

 そう、なりますよね?

 ミレーヌ様の気合いも理解る。

 行き遅れと揶揄されていた娘に降って湧いたチャンス。しかもとんでもない玉の輿が突然目の前にブラ下がったのだ。

「畏まりました」

 そうしてすぐに戻りますとロイが席を外す。

 ミレーヌ様の瞳の奥にメラメラと火が燃えているように見えたのは決して気のせいではないはすだ。

「夫達の酒代、その他経費は全てこちらに回して頂戴。勿論、貴方がたの兵の分も含めてもらって構わないわ。

 上手くいったあかつきには当然協力して頂いた謝礼も弾むから」 

 でも、今はステラート領の財政状況は・・・

 その言葉に私が動揺するとミレーヌ様が苦笑する。

「その程度はベガのドレス代と比べればたいしたこともないわ。私達もただ黙って月日が過ぎるのを待っているつもりはないの。農場経営も随分と上向きになって他所の領地に出荷出来るようにもなってきたわ。だから余裕が全くないというほどではないの。数年もステラートは燻っているつもりはないわよ?」

 そうだった。

 この人は前世の記憶に頼っている私よりも遥かに優秀だ。

「出過ぎた真似を。申し訳ございません」

「いいのよ。貴方がたが喫緊の財政難を救ってくれたのも事実ですもの。心配して下さったのよね、ありがとう、ハルスウェルト様」

 私は小さく首を横に振る。

 多分、ミレーヌ様がそう申し出て下さったのは、ここにベガ様が来たのはウチの誰かのところに嫁に来てもらえないだろうかという下心があったのを御存知だからだ。だがフィアと縁談が纏ればウチにメリットは殆どないどころかほぼ損失を被るだけになる。それを考慮しての申し出だろう。

 なんて言えば良いか。

 上手く説明出来なくて口籠った私の代わりに口を開いたのはゲイルだった。

「いえ、経費をお支払い頂く必要も、謝礼も必要ありません。ですがこちらも全力で協力させて頂く以上、無料奉仕(ボランティア)というわけには参りません。私共のお願いも聞き届けて頂きとう御座います」

 ゲイルが発した言葉にミレーヌ様が視線を向ける。

「何かしら? 可能な限り前向きに検討させて頂くわ」

 即座に是と言わず、検討に留めるあたりがやはりミレーヌ様は思慮深い。

 返事は内容を聞いてからってことだ。

「もし婚約が決まっても、通常その準備期間としておおよそ一年から二年、婚姻まで間がありますよね?」

 そりゃあね。王族の仲間入りしようってわけだから今すぐにってわけにはいかないよね。

「ええ、そうね。お妃教育があるもの」

 確認した答えにマルビスとゲイルが顔を見合わせて頷き、今度はマルビスが交渉に乗り出した。

「その婚約期間中、結婚三か月前程度まで構いません。ベガ様にはウチの専属モデルとしてファッションショーに御出演頂き、社交界ではその新作を着て出席願いたく存じます」

 フィアとの話が纏まれば、ウチの宣伝広告料としてそれ以上の利益が見込めるという算段だ。

「つまり協力料はハルウェルト商会の広告塔としてのベガのモデル料ってことね」

「はい。勿論、ドレスの仕立て代その他は全てこちら持ち。流石に豪奢な宝飾品まではこちらで御用意致しかねますので、お帰りになる際にはキールを一緒に辺境伯邸に同行させます。お持ちのものを彼にスケッチさせて頂ければ、それも考慮してドレスをこちらでデザイン致します。何度か仮縫いや衣装合わせにウチの者が邸にお伺いすることになるかと思いますのでそちらも御許可を頂ければ」

 すごいな、マルビス。

 ベガ様が身につけるとはいえミレーヌ様所有の宝飾品もファッションショーにレンタルしようってことか。ちゃっかりしている。

 普段着ばかりでは派手さに欠けるのでパーティドレスはショーのトリを飾る一着なわけだが、ウチでは常日頃派手な宝飾品を身につける女性がいないのだ。ショーのために買っても使う機会がない。

 何せ男密度が高いから。

 私にお高い首飾りなどを眺め回す趣味もない。まさに豚に真珠というやつだ。

 ミレーヌ様はマルビスの提案に大きく頷いた。

「よろしくてよ。必ず夫とベガ、反対された関係者の方々は責任持って私が説得するわ。但し、上手く話が纏まれば、よ?」

 なんとっ!

 面倒な説得まで引き受けて下さると?

 だとするなら万々歳、文句はありません。 

「結構でございます。では交渉成立、ということで」

「必ず成功させるわよ、マルビス、ゲイル」

「ええ、必ず」

 そうしてマルビスとミレーヌ様、ゲイルはガッチリと手を取って握った。


 ミレーヌ様?

 なんでそこに私の名前が入っていないのでしょう?

 微妙にハブにされている気がするのは何故でしょう?

 その作戦の大筋を立てたの、私、なんですけど?


 いやいやいや、ここは流石ミレーヌ様というべきだ。

 私の大根役者ぶりとそういう空気や機微を読むのが苦手だとよく御存知だからこそのこの人選だろう。

 やはり見る目があるということか。

 ちょっと気分は複雑だけど。

 そういうわけで利害関係の一致したミレーヌ様と私達によるフィアとベガ様の親密度爆上げ大作戦は火蓋を切った。

 

 花嫁選びに難航していたフィア側のデイラック達もこれに乗っかり全面協力。途中でフィアがそれに気がついたものの、これ幸いと利用してきた。

 辺境伯達が預かり知らぬところで二人っきりの時間にベガ様の好感度も着実に上がり、翌日、ミレーヌ様は仮病によりベガ様と滞在延長。フィアは二人が滞在中には毎晩仕事が終わるとウチに夕食をタカリに来て、ベガ様との時間を捻出していた。

 勿論、ベガ様の参加して下さったファッションショーも無事に成功しましたよ?

 その翌日早朝にジュエイルに旅立った私達は結果を報告されなかったが、何せベガ様に言い寄った男は『超』の付く『特上』の男。

 シルベスタ王国第一皇太子殿下。

 後日のことは私達の関与することでもなく、国と辺境伯達、そしてベガ様達の心情と状況と成り行き次第。

 当初の計画とは大幅にズレて進路変更を余儀なくされたが今更だ。

 私の予定が狂うのは毎度のこと、驚くほどでもない。

 好きなだけでは成立出来ないのが王族の結婚ではあるのだけれど。

 

 でもまあ多分、大丈夫だろうなとは思ってる。


 私の見込んだ二人だもの。

 帰ったらきっといい報告を聞けるだろう。

 予定外だったキューピッド役もこれでひとまず御役目御免。

 私は船の甲板の上で、夜明けのまだ薄暗い空を見上げて祈った。

 

 

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