第百十五話 全く理解に苦しむところです。
そうして閣下達と入れ替わりで辺境伯とミレーヌ様が上がっていくと私は興味津々で気球を見上げるベガ様に語りかける。
「興味がおありですか?」
まずは私の野望達成のためにも聴き込み調査だ。
一緒に乗って親密度を上げ、なんとか聞き出せないだろうか。
「ええ。高いところから景色を眺めるなんて機会、早々ありませんもの」
「では乗ってみますか? 私と一緒に。
心配ありませんよ? 何があっても必ず私がお守り致します」
大事な将来の女性幹部候補だもの。
是非ともベガ様の好みのタイプ探りを入れておきたい。
外見、性格その他、好みか否かでいうなら好みのタイプの方に傾くのは必至。ならば確率が少しでも高い男を選抜して、上手くいったら儲けもの。行かなくても今後のためにウチの仕事に興味を持ってもらえたら就職してもらえるチャンスはある。
気合い充分、しかし怯えさせないためにも表情はあくまでもにこやかに。
(別の意味で)下心ありまくりの私の会話にフィアが割り込んできた。
「ハルト、そちらの美しい御婦人を紹介してくれないか?」
『美しい』というフィアの言葉にベガ様が頬を染める。
まあね。眉目秀麗な王子様にそんな言葉を囁かれたらベガ様が紅くなる気持ちもわからなくない。だって私もロイ達のあの顔にずいっと迫られて、甘い言葉でも囁かれたらいまだに赤面してしまうもの。
だけど折角話が纏まりそうだったのに空気を読んでくれませんかね?
胡乱げな瞳で憮然と言い返す。
「話を聞いてなかったの?」
「聞いてたよ。でも正式に紹介されていないからね」
自己紹介してもらってないって意味か。
辺境伯の御令嬢で通称はわかってもフルネームは知らないってことね。
私はベガ様の前から横に移動する。
「こちらステラート辺境伯の三女」
「ベイルガネット・ラ・ステラートと申します。お会いできて光栄ですわ、殿下」
私の言葉を引き継いでベガ様が優雅にお辞儀する。
まだミレーヌ様のような色気が出るのは先だと思うけど、知的な瞳とその立ち姿はやはり素敵だ。たった半日、自信が持てるようになっただけで人はこれだけ変わるのだ。この先、きっとすごく素敵なレディになっていくんだろうなと思って私は微笑ましく見守る。
気分は既に母親(父親?)だ。
中身が年齢詐欺の状態の私からすればベガ様は充分初々しい。
やはり女性は表情だけでも印象がかなり変わる。
フィアがフッとプリンススマイルで挨拶する。
「こちらこそ。フィガロスティア・ラ・シルベスタだ。よろしく」
ズルイよね。
王子ってだけで既に女性垂涎の抗い難いブランドだもの。
私も大概だがフィアのネコ被りも相当だと思うのだ。
「フィアは今日来る予定なかったよね?」
突撃訪問は本当に勘弁して頂きたい。
陛下にしろ、フィアや団長、連隊長、閣下や辺境伯にしろ、シルベスタの重鎮達はこちらの都合を殆ど考慮せずに押しかけてくる。
少しは遠慮という言葉を覚えて頂けないだろうか?
厳しいかな?
いや無理に違いない。
彼等に悪気はない。周囲が彼等に都合を合わせるのが普通の環境で暮らしているが故の弊害だろう。だから突然の訪問に対応できなくても突然来たこちらが悪いと怒らない。本当に品の良い上流階級の人間というのは鷹揚というか、その器も大きいのだ。
でもまあ先にこちらの都合を聞いてくれるのが、一番良いのは変わらない。
私達はともかく、応対する一般従業員の心臓に悪い。
心の準備というものがね、必要なのですよ。
当の本人にその自覚はないのでしょうけども。
私はジト目でフィアを見る。
そんな視線にビクともするでもなく、フィアが宣う。
「まあね。でも船の上から気球が上がっているのが見えてね。気球は準備に時間が掛かるだろう? だけど既に上がっているならそんなに時間もかからないかなって。今日は移動日だから他の予定も入ってないし、四日後には君はジュエイルだろう? その後ってなると君オススメの紅葉が見れないじゃないか」
確かに。
半月後となれば黄色や紅に色付いた葉もだいぶ落ちているだろう。
ハゲ山はハゲ山で面白いと思うけど、美しいのは春の花咲く新緑の頃か今の紅葉の時期だ。どうせ見るなら綺麗な方が良いのもわかる。王族相手では私の留守中に何か事故があっても困るし、賠償金などという話で片付けられない。私がいれば万が一でも聖属性の魔法が掛けられる。
フィアはチラリとベガ様に視線を流す。
「それにしてもハルトが女性を連れてるのは珍しいよね」
なんでしょう?
その意味深な言い方は。言いたいことはハッキリ言って下さいまし。
何度も言うように私に察しろは無理です。
私の行動はあくまでも想像と予測。
空気を読んでいるわけでは決してない。
それにフィアのその言葉には語弊がある。
連れているのが珍しいというのではなく、私の周囲の男密度が異様に高いだけ。だからこそベガ様を迎えて女性密度を上げたいと企んだのだ。
言えないけど。
「そうかな?」
「そうだよ。君のお気に入りはステラート辺境伯夫人だろう?」
すっとぼけてそう答えるとフィアからミレーヌ様の名前が出てきた。
勿論、否定はしませんよ?
お気に入りと言わせて頂くのも烏滸がましいけど、私の前世と今世で出会った女性の中でも最高ランクに素晴らしい女性だもの。
尊敬もしてますよ?
「優しくて聡明で色気のある歳上美人、最高でしょ?」
何かおかしなことを言いましたかね?
なんなの、そのフィアの微妙な顔。
「でも人妻だよ?」
なるほど、そういうことね。
人妻に不埒な想いを抱いてるとでも思ってる?
それは飛んだ勘違いというものだ。
「私の理想の女性像なんだもの、人妻に憧れちゃダメなの?
不倫しようとか辺境伯から奪い取ろうなんてこれっぽっちも考えてないんだから別に構わないでしょ?」
「そうなの?」
何故そこで疑問系?
私、人のものまで取った覚えはないんだけど。
ロイもマルビスもテスラ、イシュカ、レインも私が初めての恋人だって。ガイは他にも絶対いそうだけど、そこは根掘り葉掘り聞かない方が幸せだと思うので追求しない。
今が私のならそれでいい。
私だけだって信じさせてくれればそれでいい。
知らない方が幸せなこともあると思うのだ。
誰かから奪った可能性があるならガイ一択だと思うけど、ガイがそういったことで下手を打つとは思えない。
なんにせよ、私は他人のものに手を出す泥棒にも間男にもなる気はない。
奪ったところで、そうやってすぐ心変わりする人は他に魅力的な人が現れればふらふらとそちらに引き寄せられていくんじゃないかと思うのだ。守備よく奪ったところでいつか他の誰かに奪われるのがオチだ。
だから他人のものは奪るつもりは全くない。
「当然。人様のものを奪う趣味はありません。
私には私の大事な人がいる。どんなにミレーヌ様が魅力的でも私は私の婚約者みんなが最高に素敵だと思ってるからね。私の一番は揺らいだりしないよ。
まあ一番が六人いる時点で説得力欠けてるかもしれないけど」
そのあたりは御愛嬌ということにしておいて下さい。
「じゃあそちらの御婦人は? 人のものには手を出さない主義じゃなかったの?」
へっ?
ベガ様?
ああそうか。この世界では一般的にベガ様の年齢は既婚者なのか。
フィア、それは決めつけというものですよ?
ウチの商業棟にもいるでしょうが。
そういう人達が山程。
それともこんな美人を周りが放って置くわけがないと?
そういう意味ならわからないでもないですが。
「ベガ様は未婚です。婚約者もいないから問題ナシ」
手を出す予定もありません。
「それにベガ様に失礼だよ。こんなのと噂になったら気の毒でしょ」
だからウチの誰かの嫁に来てもらおうと企んだわけだけど。
私みたいなのの嫁になったら気苦労かけすぎて折角の美貌も窶れそうだ。
ロイ達には諦めてもらうしかないけど。
「貴族の男に見る目がないから私とっておきの男達を紹介させて頂こうと思って。ウチには私自慢のイイ男達が揃ってるからね」
商業班の男なら戦場に駆り出されることもない。
幹部クラスなら稼ぎもいい。不自由はさせないはず。
そしてベガ様にも夫婦共働きで働いて頂ければ尚更だ。
「確かにハルウェルト商会には身分を問わないと言うならば陛下や大臣達も一目置く有能な人物が揃ってるからね」
そうそう、絶対オススメ。
偉そうにふんぞり返っているだけの貴族子息より余程イイ男揃いなんだから。
男はやっぱり仕事が出来てこそでしょう?
稼ぎのないゴクツブシはいくら顔が良くても駄目だよね。
そういう男は大抵『君がいなければ駄目なんだ』と言いつつも、面倒見てくれる人なら誰でもいい。そんな口説き文句の前に端折った言葉は『俺を養ってくれる』が付くのだ。要するに養ってくれないのならいらないということだ。
嫁にもらおうっていうのなら『俺が幸せにするっ』くらいの気合をみせろ。それは経済的な意味じゃない、一人の稼ぎで生活できないなら二人で稼げばいい。家事と育児を女房に全て丸投げし、忙しく動いている奥さんの横で『疲れた』と自分だけ寝そべっている、そんな男やもしもの時に責任を負えない男が駄目なのだ。
疲れていても忙しなく動いている奥さんを労って自ら黙って家事を分担するような、気持ちとか心の問題だ。やってもらって当たり前、ではなく、『ありがとう』という感謝の心を忘れちゃいけない。
その点ウチの男達は働き者ですよ?
いやむしろ働き過ぎだけど。
「そうなんですか?」
驚いたように目を見開いてベガ様がフィアに尋ねる。
ええ、ええ、是非とも私以外に確認して下さい。
それが誇張でも嘘偽りでもないと証明するためにも。
私は胸を張ってフィアに言えとばかりに視線で催促する。
それに気が付いてフィアが微笑う。
「本当だよ。各大臣が顔を合わせるたび勧誘してるくらいには。
連戦連敗だそうだ。
ハルトの下ほど面白い職場があるとは思えないから辞退させてくれって言われてるらしいよ。面白さを追求されると宮仕は確かに厳しい。あそこで得られるのは主に地位と名誉。それに魅力を感じない者にとっては楽しい職場ではないだろうね」
面白い?
私の下が?
それはどういう意味でしょう?
そんなおかしなことをした覚えは・・・ないこともないですけど。
むしろそんなことばかりしているような気がしないでもない。
私はよくみんなに笑われている。
馬鹿にされているのでないなら大好きな人達が笑ってくれるなら気にするほどでもないけど、微妙に複雑な気分で顔を顰めた私にフィアがクスクスと微笑う。
「私の弟がよく言ってるよ。
ハルウェルト商会は人を楽しませて稼ぐのが仕事。それには自分がまずは楽しまなきゃ駄目だって。自分が楽しくないと思うことは人が楽しいと思ってくれるわけがない。大変なことも多いけど、だからこそ自分の手掛けた仕事で人が笑ってくれるのを見ると最高に嬉しいんだそうだ」
そうだね。
ミゲルは本当に楽しそうに仕事をしている。
仲間に囲まれて、いつも笑顔で。
今ではミゲルも私オススメのイイ男の一人ですよ?
ベガ様にも是非紹介したいっ!
「殿下の弟君がここで働いていらっしゃるという話はお聞きしていますが」
「企画営業部だそうだ。イベントを企画して盛り上げるのが仕事だって。
ホント、昔のミゲルからは想像もつかないよね」
ベガ様の言葉にフィアがそう答える。
私もそう思うよ。
あれはミゲルの『若気の至り』ってヤツだろう。
でもあの頃のミゲルがあって、それを反省して変わろうと努力した結果が今のミゲル。ならばあれも必要な過程だったのではないかとも今では思う。
ミゲルが子供の頃に振り回された方達には申し訳ないけど、今のミゲルを見たら少しは見直してくれるんじゃないかなあって。
今やウチにはなくてはならない人材だ。
「ウチの企画部のエースだからね。返せって言われてももう返せないかな」
先頭に立って仲間を引っ張っていけるあの行動力はひとつの才能だ。
「帰る気もないでしょ、ミゲルは。
すっかりハルトにタラシ込まれて、退屈な城での生活は二度と戻りたくないって言ってたよ」
「タラシてないよっ、人聞きの悪いこと言わないでよっ、フィア」
なんでそうなるのっ!
「そうかなあ。私はミゲルがハルトと結婚すると言い出しても驚かないよ」
「ありえないよっ、ミゲルは女の子が好きだもん」
絶対ないっ!
「ハルトの場合、女好きの男も陥すから油断ならないよねえ」
「陥してないっ」
「陥すつもりじゃないの間違いじゃないの?」
・・・・・。
ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う。
まさに暖簾に腕押し、ヌカに釘、蛙の面に水。
そういえば前にも誰かに似たようなことを言われた覚えが。
誰だっけ?
いや、誰かというより複数の人に言われた気も。
そうですよ。
陥すつもりは全く、サラサラ御座いませんっ!
本当に陥しているとするなら私の預かり知らぬところで落ちてるだけですっ、身に覚えも記憶もありません。
不本意極まりない顔でくしゃっと顰めた私にフィアが爆笑する。
そんな魅力が私にあるとはとてもじゃないが思えない。
だがそれがもし真実であると仮定するなら相当にみんな趣味が悪いと思うのだ。それとも美人の基準に時代や地域色、流行があるように、丁度うまい具合に私がハマったというのならラッキーだったのかもしれないが、私、『魔王様』なんだよねえ。
どう考えても辻褄が合わない。
「随分とイメージが違うんですね」
そんなフィアと私のやりとりを見ていたベガ様が意外そうな声で呟いた。
「フィアのこと?」
そりゃあ澄ました顔でドSなことを指示するようなところもあるからねえ。
見た目通りじゃないと思うけど。
「殿下も、ですけど」
『も』ってことは私のことか。
私自身は至って単純だけど、世間的には様々なイメージあるよね、確かに。
フィアが笑いを止めて口を開く。
「ああハルトか。ハルトは一部の人を除いて公の場では『魔王様』な自分を演出してるからねえ。イメージが違うのは当然だよ」
ベガ様が目を丸くした。
別に演出してるわけでもないんだけど。
相手が勘違いしてくれてるのを利用して不機嫌な近寄るなオーラを出しているのは認めるよ?
「だって面倒臭いじゃない」
特に貴族同士の付き合いは。
もっとも親しくさせて頂いている人達にはそれも無効化されてるけど。
ビビる必要もない団長や連隊長達はまだしも付き合いのある地方領主にも最近では効き目が薄い。
慣れてきたってことなのかな?
やはり人間の順応力は恐ろしい。
「つまり確信犯、計画的ってことだよね。
まあハルトの愛想が良かったらハルトが避けようとしてる面倒事は列を成すどころか怒涛のように押し寄せて、対処するのが大変にはなるだろうけど」
フィア、嫌な予感めいたこと言わないでよ。
縁起でもない。とにかく、
「余計なことは極力避けたいの、私はっ」
「その余計なことが押し寄せてきてもハルトは対処できるんじゃないの?」
それは買い被りだよ、フィア。
「私には無理です」
今だってほとんどみんなに丸投げなんだから。
私のやっていることはなんだろうって首を傾げるくらいには。
そう答えた私に思わぬフィアのツッコミが入った。
「私には? つまりハルトを含めたアレキサンドリア騎士団とハルウェルト商会になら出来るってことだよね〜」
可能か、不可能か。
それを問われたら、多分ウチのみんなはできるんじゃないかなあとは思うけど。
でもそれは頷いちゃいけない、そしたらどうなるかが目に見えている。
「出来ませんっ、そんなことしたらみんなが過労死しますっ、困りますっ、嫌ですっ、絶対嫌ですっ、御遠慮致しますっ、ただでさえウチは仕事中毒が多くて困ってるんだから」
どうやって休みを取らせるか苦労してるのに仕事増やしたら逆効果でしょっ!
特に商業班の幹部クラス以上っ!
楽しそうに目をランランと輝かせて仕事してるんだよっ!
時々目の下に隈まで作ってまで。
ウチはブラック企業ではありませんっ、と、言いたいところだが彼等は自ら望んでブラックな働き方をしてるのだ。
アレはある意味ホラーだよっ、怖いよっ!
ゾンビみたいな顔してポーション飲んでまで仕事しないでよっ!
ポーションは栄養ドリンクではありませんっ!
実際、それで隈が薄くなり、顔色も良くなるから始末に負えない。体力までは回復しないはずなのに。
それって高いはずだよねと問えば、期限切れ間近の従業員限定格安品だから大丈夫だと言うあたりも救い難い。更にはそれを安価にするためにビニールハウスでの薬草栽培まで計画してるのだ。
ここまでくると立派な中毒患者では?
アンタ達っ、いったいどれだけ働きたいのっ!
いい加減にしろと怒鳴れば、キリさえつけばまとめて休日をもらっていると宣う。
それ、本当でしょうね?
無理をすれば歳を取ってからいろんな弊害が出てきますよ?
もっと体をいたわりなさいっ!
限界超えてると判断するとマルビスが気絶させて強制休養させているらしいけど、本当に頭が痛いことだ。
あれは独身だから余計に駄目と思うのだ。
綺麗な嫁さんや可愛い子供がいればいそいそと家に帰るんじゃなかろうかと考えたのもあって、ウチの男達には早急に彼女を作らせたいのだ。
お願い、ミゲル。
是非とも素晴らしいイベントをっ!
とにかく、これ以上仕事が増えるのは困りますっ!
あの人達はそうでなくても自ら仕事を増やしに行く傾向が強いんだから。
商売というのは結果がわかりやすい。
成功が『金』という形になって返ってくるからだ。
だから楽しくてたまらないということらしいのだが。
に、してもだ。
商魂逞しいにも程ってものがあるでしょうよっ!
「ってことはやっぱり出来るって思ってるってことだよね?」
シメたとばかりにニタリと笑わないでよ、フィア。
「出来ないっ」
絶対認めてはならない。
やっと陛下からの仕事も減ったのに、これ以上増やされてたまるかっ!
この現状絶対キープ。
死守だ、死守っ!
「フィア、最近益々陛下に似てきたよ」
特にそういう腹黒そうなところが。
嫌そうな顔で私がそう言うとフィアは嬉しそうに言った。
「それは嬉しいね。稀代の名君と呼ばれる父上、陛下に似てきたというのなら光栄以外のなにものでもないね」
つまりフィアが目指しているのはあの腹黒陛下ということか。
そりゃあ凄い王様だなあとは思うよ?
思うけど。
「フィアはフィアでしょ?」
陛下と同じである必要ない。
国王とは時代に合った、時代を読む力を持った人が繁栄の鍵ではなかろうか?
戦乱の世には兵を率いる統率力を持った人が、荒れた世には国を立て直す知恵と人脈を持った人が、平和な世には他国と和平を結べる求心力を持った人が。
国王とは国のトップに立つ人だ。
国王陛下本人にその力がなくてもいい。
そんな力を持った、信頼できる腹心をたくさん持てる人ならばその人達の心を掌握し、人を動かす力を持った人であれば良いと私は思うのだ。
今の陛下も荒れた国を建て直すために王妃様達の力を借りたと言っていた。
一人で全てを負う必要はない。
国王が負うべきは決断とそれに対する責任ではないかと思うのだ。
「陛下には陛下にしか出来ないことが確かにあると思うよ?
私もスゴイ御方だなっ思ってるし」
でもフィアは陛下じゃない。
フィアにはフィアにしか出来ないことがあるんじゃないかな。
「陛下の波乱だったこの国を治めた手腕は素晴らしいと思うけど、フィアに必要なのは陛下と同じ才能かな?
必要なのは今の平和を維持する力でしょ?
フィアが独りで頑張る必要もないんだし、陛下を、じゃなくて、フィアを助けてくれる人達だっているでしょう?
私は充分、今でもフィアは凄いと思ってるよ?」
そこまで言ったところで固まったフィアの顔を見て、私は『しまったっ、言い過ぎか?』と焦って慌てて謝る。
「あっ、ゴメン。これって理想の押し付けだよね。
フィアはフィアの思う通りに頑張れば良いと思うよ。
私のは単なる個人的な意見、感想だから忘れて」
ペコリと私は頭を下げて謝る。
本当に私は余計なことばかり。
この性格が余計な面倒を引き寄せてるんだよね、きっと。
反省、反省。
それでも懲りずに繰り返すのが私の悪いところだ。
だが悪いと思ったなら即謝罪。
こういったものは先延ばしにしても拗れるだけだ。
するとフィアは固まっていた表情を解き、綺麗に微笑った。
「・・・私はハルトのこういうところがタラシたる所以だと思うんだけどね」
だからどのへんが?
言いたいことを言いたい放題言ってるだけですよ?
余計なお世話というものでは?
小煩い説教ババア(ジジイ?)みたいなものでしょう?
全く理解に苦しむところだ。
それで周囲がタラシ込まれてるというならば、
私の周りはドM揃いですか?
私がドSなのは自覚してますよ?
でもそれは流石に考え難いと思うのですよ。
それともやはり私の周囲の人間が、みんな悪趣味な変人で間違いないと?
こういうことなのでしょうかね?




