第二十三話 かめんぶとうかい
うぉー、すげー!
つい、心の中で唸った。
ギルドの地下にこれだけでかいホールがあるとは。
しかも、その壁や天井に施された装飾の見事さといったら。
うちの城なんて目じゃない。
これが、本当の金持ちってやつか!
そんな風に心の中で俺が思っているのを知ってか知らずか、ピエロのマスクで目元だけ隠したゼクスが、隣で笑みを浮かべている。
どうやら、俺たちが入場者の最後らしく、後ろで重々しく扉が閉まる。
「紳士、淑女の皆様。今宵、私ゼクサイスの秘密舞踏会へとご参加いただきましたこと、まことに感謝申し上げます。皆様におかれましては、お時間許す限り、ごゆるりとおくつろぎ下さい」
静寂の中、ゼクスの声が響き渡る。
さあ、パーティーが始まった。
みんな、めいめい踊っているが、視線はなぜか、俺に集中している。
はて? 俺はまだなにもしていないが。
「では、姫。私とまずは一曲お願い致します」
優雅な仕草でゼクスが俺を誘う。
「ゼクサイス様。よろしくお願いいたします」
俺たちが、舞台中央へと進み出ると、先に踊っていた皆さんが真ん中に空間を開けてくれた。
おいおい。恥ずかしいから、そんなに注目するなよ。
俺の内心など知らずに音楽が奏でられる。
無我夢中で踊っていると、あっという間に終わってしまった。
うん、なかなか楽しい。
「お上手ですね。姫様」
「ゼクサイス様のリードが上手でしたから」
ゼクスが息一つ乱すことなく、俺をエスコートして、壁際へと導く。
俺はこんなにも心臓がばくばくしているというのに、すごいな。慣れか?
壁際で、ワインをちびちびと飲んでいると、次々にダンスのお誘いを受けた。
断るのも無作法かと思い、躍り続ける。
さすがにしんどい。
つーか、お前、躍り終わったんだから、いい加減に俺の手を離せ。
いつまでたっても手を離さないキラキラマスクのおっさんに心の中でどつく。
「僕のパートナーは、そろそろ帰宅の時間ですので、申し訳ありませんが、皆様、また次回お願い致します」
最後には、俺に変わってゼクスが断ってくれた。
ありがたい。
断るのって苦手なんだよな。小心者なので。
「奥の方でお休みになりますか?」
ゼクスが優しく俺の耳元で囁く。
奥の方を見ると、次々と男女のペアがなかむつまじくドアの向こうへと消えていくのが見てとれた。
しかも、すでに俺の腰にはゼクスの手が回されている。
「いえ、結構です」
そういって、さらりとその手から逃れる。
こいつも、生粋のタラシだな。
俺はにこやかな笑みを浮かべながら、心の中で舌べらを出していた。




