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僕の彼女  作者: 密玄
一の章 はじまりは唐突に
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僕は私。Ⅷ

しばらく更新しません。あらすじは決まっていますが、書けない状態になったので一時的に断念します。

寮から長いこと歩いて正門に至る。


大きな黒い檻を連想させる学園の正門は、朝早くから開いていて、其処を通り抜けると、ただひたすらにレンガの道が広がっている。


校舎に入るドアは、生徒一人一人に支給されているカードを機械に翳すことで自動に開く。


カードには電子マネーと個人情報が入っているため、なくすと大変なことになるらしく、寮にもどると寮監督の先生監視の下、個人ロッカーに預ける。


寮じゃない生徒も、もちろんいるが、普通科と特進科に分かれている普通科の方の生徒がほとんどだ。


この学園においては特進科は授業料免除の上に成績上位者には随時お金が支給されるようになっていて、学力が高い生徒しかいない。


普通科は、その名にもかかわらず、普通でない生徒が多く在籍する。


所謂コネ入学や、寄付金による優遇、一芸入学による生徒で、金持ちの子息や令嬢、芸能人などがいるのが普通科である。



違いはカードや制服に現れている。


制服は黒と水色とに分かれていて、それぞれ黒地に灰色の線、水色に白い線が入る。


学年の区別もされていて、タイの色が学年で異なっている。

一年生から順に青、黒、赤となる。


なので今の僕の服装は黒い冬服に加え、黒いタイを付けている状態だ。


ちなみにスカートはチェック柄になっているが、黒地に灰色の線なのであまり目立たない。


クラス分けは、1、2、5、6、7組が普通科、3、4、8が特進科であり、特進科の方が全体的に人が少ない。


夕日ちゃんの教室は3組らしく、広い校舎で迷って遅刻なんて笑えないから、早めに登校したのだ。


一応、学園についてはこんなことが書かれていた。


地図も挟まれていたが、如何せん、広すぎる上に、複雑すぎてよくわからない。


とりあえず、校舎に入ろうと夕日ちゃんのカードを機械にかざした。


一瞬、名前と残高が表示されて、残高のところには結構な額が書かれていた。


―夕日ちゃん、あんまりお金使わなさそうだしなぁ。


これだけ貯まってたら逆に使わなくなるのかも?


夕日ちゃん、財布の中にも結構なお金持ってたしなぁ、とか思いながら、まだ静寂を保つ校舎に入った。


冷え込んだ校舎の中は、密度が小さいためか更に寒く感じて、思わず身震いする。


どこを見ても目新しく、綺麗な廊下や玄関口だけでも未知の世界を前にしたようで胸が躍る。


地図には、3組の教室は、


「玄関口から右側の廊下をまっすぐ歩いて、一つ目の階段を上って左に行くと、すぐに3組が見える、っと。」


書いてあった通りにすると、確かに3と表示されたプレートのかかった教室が目の前に見えた。


迷わなくて本当に良かった…。


自慢じゃないけど、方向感覚はほぼ無いに等しいからね、僕。


教室には朝早いというのに人影が見えた。


少し薄暗い廊下を、教室から漏れ出す光が照らしている。



これまた日記帳に書いてあったことだが、3組で朝早くから来る人間は限られていて、


一人はいつも大人しく口数も少ない猫背の男の子。


二人目は赤い眼鏡をかけた、ショートカットの女の子。



三人目は、委員長。


いた。


一人で、黙々と勉強しているのは、恐らく委員長。


特別な記載は何も為されていなかったから、委員長かどうかの確証なんて無いけれど。


まっすぐに張りつめられた背中と、真面目そうな雰囲気だけで、彼が委員長なのではと推測してしまう。


声を発するのですら躊躇ってしまう空気の中、やはり最初が肝心だと思い気を取り直す。


開いていた後ろの扉から教室に入った。


30ぐらいの机や椅子が並べられ、窮屈そうには見えない。



委員長の後ろ姿に声をかけた。


「委員長、おはようございます。」


声をかけてから気づいたが、そういえば夕日ちゃんと委員長の関係性はそもそも良好なのか?


―もし仲が悪かったりしたら、


そこまで考えて顔が青ざめかけていたところで、委員長が後ろに振り向いた。


「おはよう。彦都くん。

…おや?何だか顔色が悪いようだが、大丈夫かね。」


「あ、そうですかね。


大丈夫ですよ、うん。」


少し間が開いた。


委員長は何か考えるような素振りをしてから、くいっと指で眼鏡を押し上げて、


「君なら保健室に行っても評価が下がるなんてことは滅多に無いだろう。


大丈夫だ、行きたまえ。」


「ちょ、し、失礼ですね!


…ほら、大丈夫ですよ。ほーら。」


これみよがしに手を広げる。


ふむ、と呟いた。


「やはり保健室だな。


いつもの君らしくない。


…そうだな、いつもの君にあの担任の朝のうざさを無理やり加えたかのようだ。」


ぴくっと身体が反応した。


―やはり分かる人には分かるってことかぁ。


そういうことなら、委員長と夕日ちゃんはよく話すのかな。


「保健室の先生にあれ以上いて迷惑かけたくないですし。


それより今日も早いですね。」


話題展開に逃げた。


「ああ、担任が来ないからな。」


「えっ。」


担任、というと、恐らく登場人物の一人であろう。


写真やプロフィールをみた限り、爽やかな青年に見えたのだが、嫌われているのか…?


「ど、どうしてですか?」


一瞬不思議そうな顔をして、


「…君には話した覚えがあるのだが、どうも忘れたようだな。

僕とあの先生は波長が合わないのだ、壊滅的に。」


へ、へぇ。


小さく呟きながら、予め確認しておいた夕日ちゃんの席に座った。


夕日ちゃんの席は窓際の一番後ろだ。



「…そういえば、彦都くんは今日あれが…、」


ガラッと前の扉を開ける音が響いて、僕と委員長の視線は其方にむいた。


そこには女の子が立っていた。


―ジャージ!?


堂々とした立ち振る舞いをするその少女は、ベリーショートの黒髪で、一見活発そうな運動部の生徒である。


しかし、この少女も日記帳に載っていたのだが、運動部の生徒ではない。


「よーっ、二人ともおはよ。


あ、やべ、タオル忘れたかも。」


ふと思いついたかのように肩から下げた鞄を探り出した。


「君は毎日御苦労なことだな。


そんなに剣道がしたいなら、部活に入ればいいものを。」


そう、彼女は毎日自主的に剣道の練習に参加している。


この学園はあまり部活に入っている人がいない為、使わない場所は使うことが出来る。


「またまたぁー、分かってるくせにそういうことを言うから嫌だよ、もう。


部活入ったら先生から睨まれるじゃん。


肩身狭い思いするぐらいなら、入らない方がいいし、入らなくても剣道は続けれる!


だから私は…、って、前にも言ったじゃん、これ!」


むきー、と毛を逆立てながら、委員長に威嚇している彼女。


壁に掛かった時計を見ると、あと少しでみんなが来始める時間だろうと思われた。


―それまで時間がある。


委員長のように勉強をしてもいいけれど、生憎と今は別にすることがある。


校舎探索。


一度帰る場所を覚えてしまえば、方向感覚がない僕でも、なんとか帰ることは出来る。


それに、早めに知っておかないと後で困りそうなので、と改めて考えてから、廊下に出た。


ちょうどジャージの少女が廊下を走っていく後ろ姿が見えた。


タオルを取りにいったらしい。



僕はどうしようかな、まず上に上がろうか、と思いながら校舎を探索し始めた。

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