僕は私。Ⅴ
寮に帰った僕を優しく、そしてこっそりと裏口から出迎えてくれたのは、電話の女の子だった。
今なら裏口から入れば大丈夫だと僕は言われ、急いでタクシーに乗り込み、寮まで向かってもらった。
彼女に、裏口まで開けに来て欲しいとお願いすると、
あれ?裏口の鍵持ってたよね?
と電話で言われて、ヒヤリとした。
本当に彼女には感謝している。
活発そうな見た目に反して落ち着いた性格をしているというギャップ萌えを兼ね備えた可愛い女の子。
頭の上の方で結んだ短めのポニーテールがぴょんと揺れる。
「あ、あの、本当にありがとう。
今日は色々忙しくて…」
「えー?別にいいよ、これぐらい。
それに、何時もならもう少し冷たいのに、今日は優しいね!
もしやデレ!?これが世に聞くデレというやつですかおかっさぁん!」
夕日ちゃんのデレとか初めてなんで興奮するね、ツンデレにはまりそうだよ~、あっ、夕日ちゃんはブラデレかな!
延々と語る彼女に思わず閉口してしまった。
ぐっ…、この僕がこんなに押されるなんてっ。
悔しく思いながら、亜美、と携帯に表示された少女を隣の部屋に追いやった。
自分の部屋と思しきところに入り、ひとまず、僕は深呼吸をした。
まあ、色々あったけれど、何とかやっていけそうだ。少し心に余裕を取り戻した僕は、女の子らしさの欠片も見当たらない、黒に満ち溢れた部屋を見渡した。
隅から隅まで、黒い。
さっきまで暗闇にいたせいか、ここにいても、照明が点いているはずなのに、暗闇に包まれている感じがする。
マフラーにしても、手袋にしても黒であることを考えると、彼女は本当に黒色が好きなんだろうなぁ、と思った。
とりあえず制服の上とスカートを脱ぎ、ベットにシャツ一枚という状態で横になった。
疲れていたのだ。
様々な事を一日で考えて、処理して、何をすべきなのか考えこんで。
カバーが薄い黒のベットに、身体の緊張を全てといて預けた。
ふわりとした感触のベットに確かな癒やしを感じていたところで、枕の横で圧倒的な存在感を示す日記帳らしきものを見つけた。
取ろうと手を伸ばすが、少し躊躇う。
まるで取れと言わんばかりに目につきやすい所に置かれていた上、誰かどうみてもまず目についてしまう白い色。
黒いベットの上だから余計に目立っていた。
躊躇う気持ちを押さえつけ、日記帳を手にした。
はやる胸を体現したかのように、日記帳を素早い動作で開いた。
「―…え?
何だ、これ。」
そこには、学校や彼女についての事が事細かに書かれていて、
どれもが僕に向けてかかれたものだった。
そして、今に至る。
昨日の疲労はぐっすり寝たことで、あっさりとなくなった。
まだ朝の光が眩しい、午前5時である。
僕はずっと前にしていた習慣を、やることにした。
朝のジョギングである。
軽く走りながら、今日は、と決意を新たにする。
今日は彼女の日記帳に紹介されていた人物に会ってみる。
6人の登場人物たちに!
ブラデレとは、ブランクデレのこと。
所謂、無表情デレってやつですね。
あ、クーデレの親戚みたいなもんじゃないですか?
勿論僕が勝手に作りましたとも。




