僕の説明書 ニ
ふっと意識が浮かぶ。
誰かが僕の声を呼んでいる、気がする。
遠くから、何度も。
誰なんだろう、
あれ?ここはどこだっけ…
「あき、起きて。」
耳につくその声は不快さを感じさせない。
それでもまだ、まどろみの中にいたいと強く嘱望する自分が、起きることを拒んでいた。
「ん、んぅ、やだぁ。眠い、から。」
何とか声を絞り出して、再び眠りにつこうとする。
「あき。起きないと、キス、しちゃいますよ。
…いいですか?」
ぼやぼやと聞こえて、要領を得ない。
何か、嫌な予感がするが、眠気が勝っていた。
顔に影が落ちた。
まぶたの裏がふっと暗くなって、すぐ近くに誰かの息遣いが感じられる。
「好きですよ…あき。
僕の、可愛いあき。」
嫌だ。
僕の本能がそう叫ぶ。
頭の中で鳴り止まない警鐘を無視してまで、僕は彼だと認識することをためらっていた。
…ここは僕の部屋じゃない?
動きが鈍い思考で、現状をまず確認しようとする。
僕は目を開けた。
「あき。
起きちゃったか、残念だな。」
目の前に彼の綺麗な顔がある。
認めたくない事実だった。
「でも、…」
彼はそう言い切った。
彼の手が僕の口をこじ開けて、
きがつくと口を塞がれていた。
舌が僕の口内を動きまわる。
彼の手が僕の服をたくしあげ、素肌に直接触ったところで、僕は抵抗した。
「…ふ、はぁ。はぁ。も、なにするんですか。」
肌に触れていた彼の腕を払って、
精一杯彼を睨みつける。
生理的な涙で目が潤んだしまった。
「…はぁ。あき。
可愛すぎて、抑えられないです。
入れてもいいですか?
あきの中に入れたいです、とっても。」
今すぐに、と言って、彼はズボンに手をかけた。
「やめ、嫌だぁ!
」
反抗しようと身をよじっても、彼の身体に阻まれて身動きが取れない。
ついにズボンが下ろされて、僕は本格的に泣き出した。
「っひう、やっ、嫌だぁっ。ふうぅ、ひっく、やだやだ。」
やだやだやだ、と連呼する僕を見て、彼はうっとりとした目つきで顔を紅潮させている。
「ああっ、あき!
何て可愛いのでしょうか!
あきっ、あきっ。」
あきっ、と呼び続ける彼の声がずっと部屋に響き渡っていた。




