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奇妙な城 14

 帰城した三人は、セルジオの診察に立ち会いました。


「――……昨日と同じ状態ですね」


 聴診器を外したルカは端的に告げました。


「検査結果と症状から、僕の見立ても前任者と同じソゾン風邪です」


 ソゾン風邪は発熱、倦怠感、頭痛、咳、喉の痛みといった風邪に似た症状が出るので、そう名付けられましたが、一般的な風邪――急性上気道炎とは違います。

 致死性の高い感染症で、かつては大量の死者を出した死の病です。しかし今は薬を飲めば簡単に治る病気です。


「でも先生のおかげで、だいぶ楽になりました」

「解熱鎮痛剤と鎮咳薬が効いているからでしょう。ただし根本治療になる抗生剤が効果を発揮していません。それに長期間伏せっていらっしゃるので、体力の衰えが著しい。食が細いのも気になります」


 抗生剤として最もポピュラーなのは、キラービーの王乳(ローヤルゼリー)です。

 王乳(ローヤルゼリー)とは、働き蜂が花の蜜ではなく、花粉を体内で分解・合成したものです。

 普通の蜜蜂ではなく、キラービーが分泌すれば、細菌を殺す抗生剤となります。王乳(ローヤルゼリー)は微小生物を殺す程度の殺傷能力しかないので、人や動物が口にしても害はありません。

 蜜蜂が作る王乳(ローヤルゼリー)と同じく、栄養豊富で免疫力を向上させるので、感染症の治療をしつつ消耗した体を回復させる効果があります。


 今回の治療でも真っ先に投与したのはキラービーの王乳(ローヤルゼリー)でした。

 歳を重ねると体の水分の比率が減り、腎臓や肝臓の機能が衰えることで、薬が体に蓄積しやすくなります。

 当初前任者はセルジオの年齢を鑑みた量を投与しましたが、充分な効果を得られませんでした。

 徐々に増やして若者と同じ量にしても結果は変わらず。


 もしやキラービーの王乳(ローヤルゼリー)に耐性がある菌なのかと、抗生剤を変えて一から繰り返しましたが無駄に終わりました。

 今までの診療記録を読んだルカは複数の抗生剤を組み合わせて投与しました。基本は一種類しか投与しない抗生剤ですが、肺炎など特殊な疾患であれば組み合わせることもあります。

 効果のほどは、先ほど言った通りです。一部の薬はちゃんと効果を発揮しているのに、肝心な薬が効かないせいで、症状を緩和するに留まっています。


「あまり食欲がなくて……」


「運動量が少ないので空腹になりにくく、怠くて食べる気分になれないのでしょう。褥瘡と体が凝り固まるのを防ぐためにストレッチを行っていましたが、薬で自覚症状が抑えられているなら、明日からは負傷兵がベッドの上で行うリハビリを開始しましょう」


 最後にセルジオが薬を飲み干すのを見届けて、一行は退室した――と、見せかけてミカエルだけ部屋に残りました。



「小さな魔法使いさんは、何か気になることでもあったのかな?」

「前に薬の副作用が嫌で、患者がこっそり吐き捨てていた症例を読んだことがあったので」

「ははは。そんな子供じみたことしないよ」


 苦笑いするセルジオに、盆を持ったメイドが近寄りました。


「それは何ですか?」


 ベッドサイドに置かれたシルバートレイの上には、水の入ったグラスと小瓶が乗っていました。


「今の旦那様は食が細くて運動量も少ないので、便秘予防です」


 小瓶に貼られたラベルを見て、ミカエルは市販品と判断しました。


「それってルカ医師(せんせい)が処方した薬じゃないですよね」


 キャップには有名な商会のロゴが描かれ、ラベルには商品名が書かれています。この城で調剤されたものなら、薬包紙に包まれているはずです。


「薬ではなく健康食品です。苦汁(にがり)と呼ばれる塩を作る際にできる副産物で、水分を取り込んで便を軟らかくする効果があるんですよ」


 メイドはすらすらと説明すると「私も飲んでいますが全く問題ありません。腸を刺激する薬とは違い、お腹が痛くなることはないし、クセにもなりにくいんですよ」と言いました。


「そうですか。ところで今日の晩餐はすごく豪華だったんですが、領主様はいつもあんなお料理を食べているんですか?」


 生ハムを散らしたサラダ、一口サイズのポテトのキッシュ、野菜のトマト煮が添えられた前菜プレート。南瓜のスープ、バゲット、メインは鴨のローストのマスタードソースがけ、デザートにプティング。

 特に鴨はじんわりと時間をかけて火を通したことで、表面はパリッと中はしっとりとしていて絶品でした。

 ミカエル少年のお気に入りは、甘いスープとデザートです。

 目を輝かせたミカエルが食べたばかりの料理について語るのを、大人組はにこにこと聞きました。


「それは美味しそうだね。残念ながら私はパン粥だけだよ」


「牛乳と野菜も一緒に煮込むことで栄養価を高めていますが、のど越しの良い料理を何品か追加いたしましょうか?」


 メイドの提案にセルジオは首を振りました。


「今だってお腹いっぱいなんだ。増やされても食べきれないよ」


「もしかして毎日パン粥なんですか? 食欲がわかないのは、食べ飽きたからでは?」


 ミカエルの疑問に、セルジオは野菜を変えたり、パンの代わりに穀物にしたり、チーズを足したりと工夫しているから連日でも飽きることは無いと答えました。

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