闇と光
「邪魔が入ったけど、皆が強化したからトントン。
仕切りなおしといきましょう。」
武器を手に入れた皆が、予言者の言葉でニカちゃんとやらを取り囲む。
先に動いたのは魔将の方。
『形だけの道具に頼っても無駄よ。
それに、それらは元々アタシ達の物なんだから
返してよね。』
言うが早いか、魔将が仕立屋に向かい
振り下ろした爪を仕立屋の鎌が受け止める。
『おとなしく返しなさいよ、この泥棒!!』
爪の短い左手が仕立屋の鎌を掴む。
「!?
泥棒じゃありません!
私のどこをみたらシーフ系のジョブに見えるんですか!
それに文句があるなら、あのお爺さんに言ってください。
あのお爺さんが『私達にくれる』って言ったんですから!!」
仕立屋も鎌を離すまいと、両手で鎌を引っ張る。
先に手を離した方が本当の持ち主だ・・・
って、大岡裁きを出せる状況じゃねぇな。
『もう・・・
ビル君は後でお仕置きだよ!
お姉ちゃんの物を勝手にあげないでよ!!』
左手だけで鎌を引っ張りながら魔将がそんなことを叫ぶ。
爺さん、アンタはどっちにしても地獄だな・・・
封印する時は、できるだけ早めに終わらせるよ。
「仕立屋、加勢すんで!!」
錠前屋が声と同時に、妖刀で魔将の手首を狙いに行く。
その斬撃は右手で受け止められたが
「加勢は!」
「1人じゃない!」
「ついでにコレはオマケだ!!」
大親分と解体屋が斧と剣で魔将の背中を斬りつけ、
離れたと同時に調律師の矢が傷口を増やす。
『男は、こういう時は黙って見てなさいよ!
か弱い女の子1人を大勢で襲うなんてサイテー!!』
「『か弱い』女の子なら、爪を武器にしたりする訳がない。
【槍天の霹靂】!」
予言者の杖から9本の雷撃が伸び
魔将の突き刺さる。
「ふぅ~ん、こういうスキルがあるのね・・・
ダブルだったら、基本形は疾風と切札なのかしら。
それとも武装的に月光と銃撃かしら?
【二重弾丸】。
も一つ、おまけのこっちは双子ちゃんよ。
【双重弾丸】。」
色々とヤバそうなことを言いながら、編集者も負けじと銃弾を放つ。
「スキル付加型の特殊武装とは・・・
ふむ、実に興味深い。
余裕があれば、皆もスキルが増えておらぬか試してみよ。
【蛇伸鞭】!」
ドクターの口振りからすると、
装備した時点で、何らかのスキルが追加されるようだ。
くそっ、羨ましい。
『邪魔するんなら、そっちから先に殺っちゃうよ!』
編集者の弾丸とドクターの鞭で
仕立屋から距離を取らざるを得なくなった魔将が手を離し
『死んじゃえ!』
右手から闇を放った。
「わしのスキルは・・・
おぅ、面白そうじゃの。
それ、【醜踏み】じゃ!」
闇と編集者達の間に割って入った破壊僧が
左足を大きく真横から真上に上げ、そのまま力強く真下に振り下ろす。
ズシン!
ただそれだけの動作で、破壊僧に迫っていた闇が
ことごとくかき消される。
ズシン!ズシン!ズシン!
破壊僧が足を上げては振り下ろし、迫る来る闇をかき消していく。
「ふむ、元来相撲というのは神事であり、
四股を踏むという動作は、邪気を退散させるための儀式であると
聞いたことがあるが、
いや、なかなかに忠実であるな。」
それが事実なら、破壊僧は無敵じゃねぇか?
あのオッサン、どう見ても腕力に極振りだし
魔法耐性どころか、魔法無効化まで習得したようなもんだろ。
消費MPがどのくらいか知らんけど、完全にバグキャラだよな。
おっと、見とれてる場合じゃねぇや。
「アシタローは組み付け。
ライコ、攪乱しろ!」
命令を受けたアシタローがニカちゃんに突進し
ライコが顔の周囲を飛び回る。
『数が多くて、もうやだぁ・・・
お姉、ビル君のお仕置きは後にして
こっちを手伝ってよ。』
ついに、ニカちゃんに泣き言が入った。
もうちょいってトコか?
『もう・・・
仕方ないわね、ニカちゃんは。』
樹の魔将を相手にしていた光の魔将が
途切れることなく光弾を放ちつつ
闇の魔将に近寄っていった。
『・・・!?』
闇の魔将に近づいた光の魔将の胸から
黒い腕が生えた。
『ニ・・・カちゃ・・・』
妹を援護するために近づいた光の魔将は
その胸を
味方であるはずの、闇の魔将に貫かれていた。
『キャハハハ、これでアタシは戦えるわ。
ありがとね、お姉。』
『光の姉上!!
闇の姉上、正気か!?』
あまりのことに、樹の魔将すら声を荒げて
正気を問うていた。
『裏切り者のビル君に言われたくないわ。
アタシは正気よ。
だって・・・』
光の魔将の体が、急速に干枯らびていき
それと同時に、闇の魔将の傷が癒えていく。
『だって、アタシは』
魔将の傷が完全に癒えたと同時に
姉だと言っていた光の魔将を、
まるでゴミのようだと言わんばかりに投げ捨てる。
『アタシこそが、最強なんだもの。
こいつがアタシから切り離されたせいで弱体化してたけど
こいつを吸収できれば、アタシはアタシに戻れる。』
魔将の体から闇が広がり、
『この感じ、久しぶり・・・
気が遠くなるほどの年月を待ち続けた甲斐があったわ。』
その背に3対6枚の翼が開く。
『闇の姉上、どういうことじゃ!?』
『ビル君は、
いや、アタシとアイツ以外は誰も知らなかったわね。
気分がいいから、特別に教えてあげる。』
腰に両手を当て、無い胸を張って答える。
『アタシは最初の闇だった。
でもね、誰も認識できなかった。
だって、見えないんですもの。
そしたら、アイツがやって来てアタシからこいつを切り離しちゃったの。』
放り捨てた光の魔将だったモノを一瞥もせずに続ける。
『誰かがアタシを認識できるようになったのはいいんだけど
それはこいつのおかげ。
そこは感謝してるんだけど
それを恩着せがましく言うし、弱体化するし。
光が無ければ、闇を認識できないって言うけど
闇は光がなくても存在できるのよ。』
さらに続く。
『こいつが居てこそ、アタシが居るという認識ができるようになったから
こいつが姉でもいいんだけど、馴れ馴れしいったらありゃしない。
元々はアタシの搾りカスの分際で!』
『でもね、それももう終わり。
今はコイツが居なくても大丈夫なほど光が満ちているから。
ずっと、元に戻るのを待ってたのよ。』
腰に当てていた両手を広げ、
その掌に黒と白の球体を造り、
『短いけれど、お話は終わり。
無限に広がる空間を司る闇と
無限に流れる時間を司る光。
ビル君は耐えられるかしら?』
2つの球体を、樹の魔将に撃ちだした。
『くっ、姉上め!』
生やした根で防ぐが
2つの球体が触れた部分から消滅していく。
『ぐわぁぁぁぁぁ!!』
防ぎきれず、
いや、防ぐことすら許されず
姉からの無慈悲な攻撃が爺さんに直撃した。
後に残ったのは、
光の魔将同様に、大地に横たわり干涸らびてしまった
変わり果てた樹の魔将の姿。
『ビル君ったら、根性がないんだから。
でも、お仕置きはこれで勘弁してあげる。』
まるで、ゲンコツ1発で済ませてやった
とでも言いたそうな感じだ。
『さぁ、残るのはアンタ達ね。』
再度2つの球体を造りだす。
『もう、その武器もどうでもいいんだけど
泥棒にはちゃんと罰を与えないとね。』
「うわぁぁぁぁっ!!」
撃ち出された2つの球体が
俺に当たった時、俺の意識が飛び
「ってぇ・・・
って・・・?」
意識を取り戻した時
「おいおい、どんだけの衝撃だったんだ・・・?」
俺はログアウトしていた。




