破壊僧という男
リアルの都合で遅くなりました。
申し訳ない。
「ワシが花を見かけたのは・・・
撃妖蟲と戦った後じゃったと思うから、
たしか、この辺のはずじゃ。」
破壊僧に案内されて、湖の隣のMAPにある森の中の一本道から
かなり離れた場所まで行った。
破壊僧が、何でこんな離れた所に行ったのか、
聞かなくても何となく分かる気がする。
というか、当たってる確信がある。
「う~ん、この辺で見かけたとなると
誰かが持って行って捨てたのかしら・・・?」
「クエストじゃし、ありえるのぅ。」
編集者の推測に破壊僧が相槌を打つ。
オッサン、考えずに返事してるだろ。
「あの白いのちゃうか?」
錠前屋が指差した先には、白い花が散乱していた。
中には、赤や紫、黄色い花も何本か混じっている。
「彩だけなら、花束になってそうな色ね。」
落ちていた花を調べた編集者が
そのうちの1本を手にしながら言った。
「とりあえず、依頼人に見せてみるわ。
ありがとう、破壊僧。」
「なんのなんの。
役に立てたかどうかはまだ分からんが、良かったわい。」
「破壊僧の戦闘欲も役に立つことがあるんやなぁ・・・」
「やっぱりか・・・」
想像していたのと寸分違わぬ破壊僧の行動に
軽く頭を抱えたくなった。
「そんで、姐さん。
花束じゃなかったけんど、それらしい花が見つかったゆうことは
あしらはお役御免でええんやろか?」
「ん~、そうねぇ・・・
これから何か用事があるんだったら、抜けてくれていいわよ。
用事がないんだったら、念のために居て欲しいんだけど。」
錠前屋が問いかけ、編集者が答える。
違ってた場合は探しなおす羽目になるんだから
居てもらった方が都合がいい。
「あしはまだイケるけど、破壊僧はどうなん?」
「わしゃ、先約があるでの。
そろそろ抜けるとするわい。」
拳をポキポキ鳴らしながら破壊僧が言う。
オッサンの先約って、戦闘絡みじゃないだろうな・・・?
「とは言え、先約とは言っても稽古を見るだけじゃしな。
おおかた1時間前後といったところじゃろう。
幸い、場所も近いし終わったらまた来るぞい。
その場合は湖方面で良いかの?」
「そうねぇ・・・
湖の近く、3人のNPCが集まっている所の
真ん中のNPC前にお願い。
居なかったら、終わったか帰ったと思ってちょうだい。」
「了解じゃ。」
破壊僧がPTを抜け、軽く手を振りながら
元来た道へと引き返す。
破壊僧を見送ったあと、俺たちも湖へと引き返した。
編集者達と別れた破壊僧は
元来た道を引き返し、緑の国方面へと南下していった。
約束の時間には余裕があるのだが
遅れる事があってはいけないと思い、ひたすらに道を駆ける。
そうして10分程も走り続けた頃、目的地である森の入口に到達した。
しかし目的の人物の姿はない。
「ふむ、ちぃとばかし早かったか・・・」
顎に手をやりながら独り言を漏らす。
「まぁ、遅れるよりはマシじゃろうて。」
答える者の居ない独り言を言いながら
待つことにする。
ただ待つのも暇なので、滅多に使わない
というより、ゲームを始めて右も左もわからなった頃しか使っていない
自分の武器を取り出して装備する。
「やはり、武器があるとだいぶ拳速が落ちるのぅ・・・」
両の拳に鋼拳を装備し、シャドーボクシングのように拳で空を切ると
そんなことを言った。
何かを確かめるように、シャドーボクシングを繰り返す。
「フットワークも悪いな。」
前後左右のステップも組み合わせたシャドーボクシングを終えて、装備をしまう。
そこにタイミング良く目的の人物が現れた。
「すいません、お待たせしましたか?」
「いや、待っとらん。」
暇潰しに動作速度の確認をしていたので、
破壊僧は待っていたと思ってないし、待っていたという自覚もない。
暇を持て余したのなら待っていた、であり
暇じゃなかったなら待っていない、というのが破壊僧の考えだ。
故にほとんどの場合、破壊僧は人と会う時は待っていたとは思っていない。
単に先に来ただけだ。
普通はそれを待つと言うのだが、本気でそう思わないのが破壊僧という男だ。
「セトさんならそう言うと思ってましたけどね。
今日は何処に行くんですか?」
「そうじゃのぅ・・・
森の奥で絶光蝶を見つけたことじゃし
それを狩ることにしてもらおうか。
お主よりは少しLvが高くて、盲目状態にしてくるだけじゃ。」
「いや、あの・・・
絶光蝶って僕と20近くLv違う気がするんですけど?」
「くかかかか。
やって殺れんことはない。
わしゃ、50上までなら何とか出来たぞ、"師匠"。」
「セトさんの尺度で言わないでくださいよ。」
「最初から上だと思い込むから負けるんじゃ。
あんなもん、攻撃さえ当てれば倒せるわ。
あっちの攻撃は避けろ。
わしに出来たんじゃから、師匠にだって出来るはずじゃ。」
破壊僧に教えを請うた手前、師匠は諦めて破壊僧と共に森の奥へと入っていった。
師匠と呼ばれる男が単独で絶光蝶を退治出来るようになったのは
およそ2時間後の出来事である。
破壊僧は師匠と別れた後、一応湖の方へと行ったのだが
編集者達が居なかったため、赤の国のホームに帰還しログアウトした。




