コボの恩返し
カンカンカンカン
ツルハシで岩壁を叩く音が響く中
「東より洞窟コボルトの襲撃!!
数、およそ20。
手が空いている者は迎撃に向え。」
誰かがそう叫んだのを切っ掛けに
戦闘が始まった。
「アーシィ、ライカ。
俺達も迎撃に向かうぞ。」
『ちょっと待っておくんなせぇ、ご主人。
アッシはコボルトとは戦えませんぜ?』
「何ぃっ!?」
『実はコボルトはアッシの眷属でしてね。
コボルトを従えるアッシがコボルトと戦うってのは
本末転倒ってヤツでしょうや。』
『おぉ、そう言えばそうであったの。』
『アッシとしてはコボルトとの戦闘は回避したいんでさぁ。
アッシが話してみやすんで、
ご主人は戦闘中止してもらえるよう
呼びかけてはいただけやせんか?』
『グギィギィ。』
現場に到着した時、コボルトの群れは
20匹どころか、50匹くらい居たんじゃないだろうか。
「皆、戦闘を止めてくれ!!
コボルトと戦わないでくれ!!」
アーシィを信じて戦闘中止を呼びかける。
「ふざけんな!
湧いてんのか、お前!!」
「俺は正気だ!!
頼む、俺を信じてくれ。
頼む!!」
俺が声を限りに叫ぶなか、アーシィがのっそりとコボルトの群れに近づき
『グルアァァァァァァッ!!』
吠えた。
その咆哮にビビったのか、コボルト達は一斉に武器を置くと
『グギィ・・・』
片膝をついてアーシィに平服した。
「今、コボルト達に戦闘の意思は無い。
無意味な戦闘は止めてくれ。
頼む。」
「お・・・おぅ・・・」
プレイヤー側も一旦、戦闘を止めてくれた。
「アーシィ、任せた。」
『グルル?』
『グギィ、グギィ、ギャー。』
『ガルラララララ。』
『ギャーギャー、グギュ。』
『グルルルル。』
『ギャーギャーギャー、グギィ!』
『グルラララララ。
ご主人、コボルト共は
”ヒビイロアカネ”の採掘に来ただけで
”ヒビイロアカネ”さえ手に入るなら、
おとなしく帰ると申しております。』
「”ヒビイロアカネ”?」
『へい。
コボルト共の王が新しく即位するのに合わせ
戴冠用の装備を新調するのに
”ヒビイロアカネ”が必要らしいんで。』
『ギャギャ!!』
『グルアァァァァァ!!』
『ギュ・・・』
『失礼いたしやした。
コボルト共は黙らせやしたので、ご安心を。
どなたか、”ヒビイロアカネ”をお持ちでしたら、
4つ分けて頂けるよう、お願いできやせんでしょうか?』
「分かった、聞くだけ聞いてみる。」
早いのは、今回の依頼人の仕立屋かな?
「仕立屋、”ヒビイロアカネ”って持ってないか?」
「”ヒビイロアカネ”?」
「コボルト達はそれを採掘しに来ただけで、
それさえ手に入るならおとなしく帰るって言ってる。
って、アーシィが言ってる。」
「その”ヒビイロアカネ”なんですけど、どんな鉱石ですか?
”ヒヒイロカネ”なら持ってますけど
”ヒビイロアカネ”は聞いたこともないんですけど。」
「アーシィ、”ヒビイロアカネ”って、どんなの?」
『少しだけ赤い鉱石でさぁ。
これくらいの大きさで・・・』
アーシィの説明を仕立屋に通訳すると、
思い当たるものがあったのか
「それって、コレのこと?」
取り出した鉱石をアーシィの前に置いた。
『これです。
4つ分けていただけやせんでしょうか。』
「合ってるって。
全部で4つ欲しいらしい。」
「全然良いわよ。
はい、アーシィ。」
同じ鉱石を更にに3つ取り出し、アーシィに載せる。
「でも、4つだけで良いの?
それだったら幾らでもあげるわよ。」
大量に所持しているのか、仕立屋がアーシィに聞く。
「その”ヒビイロアカネ”って
貴重な鉱石ってわけじゃないのか?」
「レアどころか、その反対ですね。」
仕立屋の解答はこうだった。
「屑銅石は、使わないというより、使えないんです。
採取で出たら、ほとんどの皆さんは
その場で捨ててますしね。
自慢じゃありませんけど、使えるのは私だけだと思いますよ。」
”ヒビイロアカネ”もとい、屑銅石を持っていったアーシィは
赤くキラキラした石を載せて帰ってきた。
『ありがとうごぜぇやした。
コボルト共から御礼の品だそうです。
受け取って下せぇ。』
「仕立屋、コボルト達から御礼だって。」
アーシィに載せられた石を受け取った仕立屋は
「これは・・・
流石に貰い過ぎです。」
受け取ったあと、返そうとした。
「御礼って言うんだから、素直に貰っとけばいいじゃん。」
「タダ同然のアイテムだったんですよ。
真鉱石なんて貰えません!!」
「シンコウセキ?
なんだそりゃ?」
「ひらたく言えば、オリハルコンです・・・」
「ぶほっ!!」
そのトレードは
わらしべ長者もビックリだ。
ヒビイロアカネ―卑微色亜金
屑銅石のこと。
採取すれば出やすいが
プレイヤーは鍛冶に使えないし、
NPCに売ったところでタダ同然なので、一般的にゴミ扱い。
採取に行った場合に拾ったら
どこまで遠くに投げ捨てられるか競い始められる。
このため、基本的に周囲に残ってることがないので
採取ポイントに身長が届かないコボルトにとっては
洞窟の奥に行けば普通に拾える真鉱石よりも
遥かに価値がある。




