こうして2匹目と対峙した
「で、どうするつもりかね?」
得体の知れない男の部屋から出て
ダンジョンからも抜けた後、ドクターが俺に問いかけた。
「どうする、とは?」
「質問に質問で返すでない。
あのレブジードなる男が言ったことが真実であるならば、
ラウコンかイテシのどちらかに向かうことになる。
君としては、どちらの方が都合が良いのかね?
そういう事だ。」
レブジードの言うことが真実であると信用するなら
鋼か雷のどちらかを相手にするべきだろう。
だったら
「だったら、鋼だな。
戦力強化という面で考えるなら、
アーシィと相性がいいのは鋼だ。」
「では、ラウコンに向かうとしよう。
鋼の魔将はインセクターの国に居るような口ぶりであったしな。
皆、まだ時間は良いな?」
「応ともよ。
あんだけの威圧感をぶつけられてんのに
戦えねぇまま落ちたんじゃ、不完全燃焼で寝れやしねぇ。」
破壊僧が真っ先に同意する。
他の皆も、時間は空いてるようだ。
俺達は、その足で藍の国とも呼ばれる
インセクターの国ラウコンへと移動した。
「今度こそ戦えるといいんだがな。」
俺の中でバトルジャンキーの疑いが濃厚になってきた破壊僧が
藍色の扉の前で、またも関節を鳴らしながら吠える。
「総員、戦闘準備はいいな?
抜かるでないぞ。」
そう言って、ドクターが扉を開けた。
『俺、三十?』
『違う。なんだっけ・・・
そうだ、俺、参上。
でも、お腹すいた・・・』
扉の前で待ち構えていた巨大なスライムからそんな声が聞こえた。
キン○スライムが居たとしたら、あのサイズなんだろう。
もっとも、声は幼稚園児のように何故か幼いので
なんか脱力感が否めない。
『俺、お前たちを食べる。
だから、俺、お前たちを、逃が・・・
逃が・・・』
逃げる気はないが、向こうも逃がす気はないらしい。
そんな緊迫した空気の中、
スライムが発した言葉は
『お前たち、苦酸っぱい?』
OK。
スライムの思考は俺の斜め上を独走態勢で爆走中だ。
お前の味覚など知るか!!
「いや、たぶん酸っぱくないと思うのである。
酸っぱいのは、体を構成する物質が入っておる場合であるからな。
余談だが、苦いのは一般的には毒となる場合である。」
なるほど、ビタミンCとかが入ってる柑橘類は酸っぱいな。
それにしても、毒って苦いのか。
勉強になるなぁ・・・
『毒は困る。
でも、なんか違う。
ヌガー酸っぱい?
酸っぱいヌガー?』
「ヌガーとは、水飴にナッツ類を混ぜて固めたお菓子であるな。」
流石はドクター。
伊達に現実で喫茶店のマスターをやってないな。
食材から料理まで幅広くカバーしてる。
『これも違う。
苦い酸・・・
そうだ、逃がさない。』
うん、そうだよね。
なんか疲れる。
周囲を見ると、錠前屋を始め
クールが売り(?)のドクターや予言者までもが脱力しかかっている。
『俺は鋼鉄のゴングネグラ。
お前たちを食べ尽くす。』
その言葉とともに、キ○グスライムがその巨体を更に膨張させた。
「【初封閃】!!」
亀野郎の時と同じくドクターがナイフを投げ、
それを切っ掛けに戦闘が開始される。
しかし、前回と違ってナイフはゴングネグラに吸収される。
『マズい・・・
辛い。』
「おいドクター。
辛いってのは、どんな役割の味なんだ?」
「辛味は舌が痛覚を感じた時に生じるものであって
本来なら味覚とは言わん!!」
軟体なだけあって、柔軟な体を縦横無尽に伸ばし
触手のようにして攻撃してくるゴングネグラ。
そして、それを器用に回避しながら講釈するドクター。
「じゃあ、辛いってんならダメージはあったってことだな!?」
「おそらくな。
ぐぅ!!」
回避し損ねたドクターに触手が当たる。
「仕立屋、ギルドで最も硬いのはお主である。
一時タンカーを任せる。
破壊僧、触手が伸びたところを狙え!!」
仕立屋と破壊僧に指示を飛ばす。
「【絶対予言】。
破壊僧、3秒後に仕立屋の右斜め前30~45度を攻撃。
【極虹の吐息】。」
予言者の言葉に従い、破壊僧が触手を殴りつけ
方向が変わった触手に預言者のブレスが命中する。
『辛い、辛い、辛いぃぃぃ!!』
痛いってのは、スライムにとって辛いらしい。
「火精、水精同時にぶん殴れ!!
解体屋ぁ、新スキルのお披露目には丁度いいんじゃねぇか!?
出し惜しみすんな!!」
火精と水精が触手を1本挟み撃ちにする。
解体屋も俺の指示で武器を持ち替え、構えた。
「新スキルとな?
それは楽しみであるな。」
後方に回って回復に専念していたドクターが楽しそうに言う。
「あぁ、とっておきだぜ。
ありゃあよ。」
「【電磁加速斬】!!」
解体屋のスキルは元々磁力を使用するスキルだった。
だったら、磁力に電力が加わればどうなるか?
その答えは、磁力が強くなった だ。
「火精、触手を焼け!!
水精、火精の周囲の触手を弾け!!」
結果、剣に振り回される形にはなるが
音速に近い速度で間合いに到達し、すれ違いざまに剣を振り抜き、
そのまま離脱する新スキル【電磁加速斬】が生まれた。
俺の時といい、解体屋といい
オンリージョブってのは、何か切っ掛けがあればスキルを覚えるのかもしれない。
「【正拳突き・7段】!!」
ただ、解体屋の新スキルは有り得ないほどの超加速で剣を振り抜き離脱する
いわば一発必中の大技である。
事実、ゴングネグラの柔らかい触手を速さだけで断ち斬るほどの剣速と
触手の断面が粒子になるほどの威力を兼ね備えるが、3つの欠点がある。
「どわぁぁぁぁ!!」
1つは速すぎて、自分で止まれないのだ。
要練習なんだろうが、その辺は自分で何とかしてもらうしかない。
2つ目は、1度使うとクールタイムが長いということ。
そして3つ目。
「換装、雷・鋼・剣!!」
何故か、武器に付与されていた雷属性が消失するのだ。
その上、剣は大破する。
直ったとしても、単なる剣にしかならない。
一撃必殺の漢の浪曼スキルと言えば聞こえはいいが
実際は武器を使い捨てにするスキルである。
ちなみに、解体屋が雷鋼剣と呼んでるのは予備でキープした
”黒鋼の剣 +雷属性”のことである。
「【正拳突き・7段】!
【正拳突き・7段】!!
【正拳突き・7段】!!!
【正拳突き・7段】!!!!
おまけに【紅煉脚】で30段コンボじゃぁ!!」
解体屋とは離れた所で触手をサンドバック替わりに
破戒僧がスライムをどつき続けていた。
あぁいうのを見てると俺も召喚獣任せじゃなくて、自分で戦ってみたくなる。
ボス戦はゴメンだが。




