こうして約束した
第2の悪魔戦の日を迎えた。
前回は硬かったが、今回は解体屋が新スキルを引っさげ
満を持しての登板だ。
前回ほどの苦労はしないだろう。
「予定を変更する。
最近、青の国で地震が頻発しておるとの情報を得た。
おそらく、青の国の悪魔に関係があるはずである。
故に、今回は青きアイアナーの国
ラウブに向かう。
各人、気を引き締めていくように。」
例によってドクターが指揮る。
ラウブに着くと、やはり錠前屋が何かを察知したようで
一目散に外に出る。
前回と同じく、錠前屋が罠を外しダンジョンの中を10人で進む。
やはり、敵は出現せず
やがて、俺たちの前に青い扉が現れた。
サラサラサラサラ・・・
ダンジョンの中にも川があるのか、
水が流れる音がする。
「行くぞ。」
ドクターが扉を開け、そこで俺たちを待っていたのは
1人の男だった。
『ようこそ。
小生、ここに封印されておりました
流水のレブジード と申します。
以後お見知りおきを。』
亀野郎のような巨体でもないのに
掛けられる威圧感は遜色ない。
全員が何時でも戦闘開始できるように構える。
『あぁ、それ程いきりたたないでいただけませんか?
小生、こう見えて臆病者なのですよ。』
嘘だ。
レブジードと名乗った男から発せられる殺気とでもいうべき
重圧感はゲームで感じるべきものを超えている。
『少し、お話をしませんか?』
誰かが No と言った瞬間に、戦闘が始まる。
そんな予感すらしていた。
『沈黙は肯定だと受け取らせていただきます。
小生の話というのはですね、
小生を封印するのは、できるだけ後回しにしていただきたい。
それだけなんですよ。』
その言葉とともに、重圧感が少しだけ薄れる。
一体、何が目的だ?
『小生、恥ずかしながら九魔将の中では
”強欲なる知将”などという、大層な名前で呼ばれておりまして。
小生に言わせれば、単なる好奇心の塊でしかないでのすが。』
九魔将。
それが、亀野郎やこの男を含めた9人の悪魔の事を指すのだろう。
『小生、知りたいと思ったこと以外は
基本的にどうでも良いのですよ。
今回、小生が知りたいと思いましたのは・・・』
ゆっくりと人差し指を上げ
『貴方です。
たしか、召喚士と呼ばれていたと存じておりますが。』
俺か!?
『貴方の召喚獣と呼ばれる能力は実に興味深い!!
多種多様な組み合わせ、融合強化、更には融合状態での強化。
小生、貴方のこと知ってから
眠れぬ夜を過ごしておりました。』
そこだけ聞くと熱烈なラブコールのようだが、そのセリフを吐いてるのが
俺好みの可愛い子ちゃんじゃないってのが、非常に残念だ。
『小生の元に来る時、貴方がどのような能力を見せてくれるのか
非常に楽しみにしておりました。
楽しみにしすぎたあまり、興奮して地震を起こしてしまったようで
貴方がたが小生の元に来たのが、些か残念ではありますが。』
「じゃ、お前としては後回しにされたいんだな?」
『左様でございます。』
「ここまで来て只で帰る、っちゅう訳にもいかんやろな。
この場合。」
腰に差したナイフに手をやりながら錠前屋が唸るように呟く。
『無論、只で帰って頂くわけではありません。
小生のウッカリとは言え、
貴方がたをお呼びしてしまいましたので、
そのお詫びという訳ではありませんが、1つ助言をいたしたいと思います。
受け入れてはいただけませんでしょうか?
貴方がたにとって、損ではないと思いますが。』
ドクターを見ると頷いている。
俺に任せるということだろうか。
「いいだろう。」
『では、商談成立ということで。
貴方が最初に倒したのは ”怠惰なる硬将”ロイエス。
彼は大地の力を扱う者でした。
故に、次に貴方が倒すべきは2人に絞られます。
1人は鋼の力を宿す ”粗暴なる蝕将”ゴングネグラ。
鋼の力を宿しておりますが、彼の体は柔軟です。
むしろ、柔軟であるがゆえに硬いとも言えるでしょう。
いま1人は雷の力を宿す ”妖艶なる色将”ヴィースラッテ。
彼女の雷は強力ですが、そも雷というものは
”風より出でて水を伝い炎を纏いて、消えると知りながらも鋼を求めて地に向かうもの”
以前であれば致命傷となり得る彼女の雷も、今の貴方の召喚獣であれば
完全にとは言えませんが、その威力を減じることが可能でしょう。』
「その2人は何処に?」
『ゴングネグラは蟲人多き里、
ヴィースラッテは竜人の里に封印されておるはずですよ。
小生に言えるのはここまでです。』
「ヌシの意見は終わったようじゃがのう、
ヌシの言い分が嘘でないという保証はあるのかのう?
むしろ、ヌシの今までのセリフがワシ等を嵌める為の嘘であった、
と考えるのが妥当じゃとワシは思うのじゃが。」
関節をポキポキ鳴らしながら、破戒僧が一歩前に出る。
『そこなアイアナー。
貴方の意見はもっともですが、
こればかりは小生を信じてくれとしか言い様がありませんな。
悪魔はたとえ口約束であろうとも、
交わした契約は遵守する存在なのですよ。
契約した後であろうと、自分に都合がいいように誘導するという点は、
小生としては些か不本意ながらも認めるところではありますが。』
「ヌシは最後まで倒されたくない。
そう言うとるんじゃな?」
ガンを飛ばしながら、さらに一歩前に出る。
『その通りです。
そもそも、小生は召喚士の能力を全て見られるのであれば
今封印されても構わないと思っているのですよ。
それが、小生の抗いがたい性というものなのです。
あの方の命は小生共にとって重要ではありますが、
小生はそれ以上に小生の性が重要なのです。
もし小生から知りたいという欲求がなくなったとすれば、
それは小生の姿をしていても、もはや小生ではありませぬゆえ
死んだ方が百万倍マシというものなのですよ。』
「もう1つだけ聞きたい。
お前はどうやって俺を知った?」
その質問をした瞬間、部屋に流れていた水が逆巻く。
『ロイエスが地、ヴィースラッテが雷の力を宿すように
小生にも宿す力があるのです。』
逆巻く水は龍の様な形になる。
今の俺じゃ勝ち目は薄い。
たぶん、他のみんなも。
川があったんじゃない、川が出来たんだ。
『小生がこの身に宿す力は水。
小生、自然であれ魔法であれ
水が見た物を見る能力があるので、非常に助かっておるのですよ。』
仕方ないが、撤退しかない。
ドクターを見ると、またも頷く。
「ここに契約はなった。
お前には、できるだけ最強になった俺を見せてやるよ。」
『えぇ、小生も楽しみにしております。
小生が言うのもなんですが、他の魔将如きに倒されないでくださいね。
応援しております。』
にこやかに笑って水の龍を収めた男の顔は、とても悪魔には見えなかった。




