こうしてドクター節が炸裂した
「拾ったことないって、お前・・・
今までどうしてたんだ?」
「アイテムも金もドロップする、とは聞いてたけど
実際にドロップしたとこ見たことないから拾ったこともない。
てなわけで貰い物と初期装備。以上。」
実際、俺の装備は
武器:編集者から貰った本
装備:転職前と同じ だ。
まぁ、拾ったトコロでアイテムの売り方が分からんから
アイテム欄が一杯になってるか、なってないか
の違いしかないが。
「別段、今まで困ってないし、まぁ問題ないだろ。」
「なんていうか、
物知らずもソコまで突き抜けると、いっそ清々しいな。」
「縛りプレイにしてもやり過ぎ・・・」
「あ、でも。
召喚獣が人型になった時は、武器が持てたら強くなるかな?
とは思ったぞ。」
装備できないだろうけどな。
「人型の召喚獣も居るのか・・・
だったら、試してみるか?」
「ん?何を?」
「先行してるプレイヤーから
そこそこ使える効果の片手剣を安く売ってもらえたから
一応、予備っちゃ予備で1本余ってる。
レベルアップしたら装備しようと思ってたやつがな。
要求が足りてるなら、持たせられるか試しゃいい。」
ふむ、アリはアリだな。
「OK。洞窟に行ったら試そうぜ。
たしか、もうスグだろ。」
似たような風景が多くて自信はないが
モスノに入ってから、そこそこ時間は経ってるし
感覚的にはそろそろだと思うんだが。
「黄色い岩の洞窟だったな。
じゃ、アレか。
アーシィ、全速前進。」
土霊獣は俺の命令に応え、足を速めた。
そこまで急がなくても、洞窟は逃げやしないのに・・・
「さて、到着したわけだが基本的には
シュート、お前がすることは何もない。
むしろ、開けるだけでいい。
戦闘は俺に任せろ。」
「は?」
「ここ、熊とか蝙蝠とか変な触手くらいしか出ないし。
そんなに苦労はしないだろ。」
俺は土霊獣を帰し、光精と闇精に切り替えて
俺達は突き進む。
光精、闇精ならどっちもスキルで遠距離可だ。
「光精は光線、闇精は散弾で敵を殲滅。」
物理攻撃力が上がったあたり
意外にも武器は装備できるようで、
面白そうに闇精が剣をブンブン振っているが
背が低くて届かないので
結局スキルで遠距離攻撃になっている。
レベル150近いコイツ等にとって、
5~6発で倒れるこの洞窟の雑魚は本当に雑魚だ。
ちなみに、光線、散弾はおれが勝手に呼んでるだけで
本当は違う名前だと思う。
まぁ、発動するなら結果オーライだろう。
「で、まぁこんな感じでずっとやってたんだが
見たとおりだ。
アイテムも金も出てこねぇだろ?」
倒した傍から消えていく。
「本当に、金もアイテムもドロップしてなかったんだな。
どんなバグだよ・・・」
「そんかし、戦闘は楽なんだがな。」
そして、前にも訪れた階段前で一時休憩する・・・
ことなく、階段を降りる前に【召喚獣融合強化】。
混精にだけして、ボスと対面する。
当然、闇精が借りていた剣は返却済みだ。
持ったまま【召喚獣融合強化】した場合、
どうなるかも見てみたかったが。
グギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!
階段を降りると、デカいミミズと対面する。
相変わらず、牙をカチカチ噛み合わせて威嚇している。
「よぉ、1週間ぶり位か?」
言い切る前に、突撃してくるが
それは混精によって阻まれる。
以前と同じく、グランドワームは
混精の体に吸い込まれ混精から放出される。
自分で自分に噛み付いてるのも
前回と同じだ。
「混精、そのまま倒しきるまで抑えといてくれ。」
「お、おい・・・
いいのか?」
「あのまま放置しときゃ、勝手に自滅する。
前もそうだったし。」
「前って、クリアしたのお前かよ!?」
「偶然だったがな。」
「唯一クリアしたのがお前だったとは思わんだろ。」
「あん時ゃ、8人PTだったぞ。
俺とタンカー以外は全滅したが。」
アイツ等、今頃どうしてるかな。
妙に名前にインパクトがあった”モツ鍋”しか名前覚えてないが。
体感時間で5分ほど。
ドチャリという音とともにミミズが力尽きて
地にひれ伏す。
「お・・・ん・・・?
え?」
「どうした、シュート。」
「いや、レベルの上がり方がおかしい。
一気に15近く上がった。
やった、これなら転職できる。」
「お前、何になるんだ?」
「翔剣士目指してたけど、
お前の召喚獣見てたら、騎士も良いなって思えた。
だから、騎士か幻獣騎士を目指す。」
***
「お疲れ。教えてもらったトコは明日から篭るわ。」
「おう、こっちこそサンキュな。
アスちゃんもありがとな。
御陰で退屈しなくて済んだ。」
俺が、というか、俺の召喚獣が戦ってる間
本当に何もする事がなかったシュートは予言者と話してばっかだった。
50年後のコイツしか知らない予言者からすりゃ
新鮮な感覚だっただろう。
「えぇ、ではまた会いましょうシュートさん。
マタヨロです。」
「またよろ?」
「また今度会ったらヨロシクお願いします。
という意味です。」
「おぅ、マタヨロ~。」
シュートは転職しに行くらしく
トレッカースの入口前でシュートと別れて
預言者と2人でホームに帰ることにした。
「昔のお爺ちゃんは、あんな感じだったんですね。」
「未来のアイツがどんなのか知らんけど
俺が知ってるアイツは、いつもあんなアイツだよ。
ただ、少し緊張してたっぽいけどな。」
「緊張・・・?」
だってそうだろ?
「可愛い子が短時間とは言え、ずっと傍に居たんだ。
お調子者に見えても、根は誠実。
そんなアイツが緊張しないわけがない。」
それが俺のアイツに対する評価だ。
周囲が本気でイヤだと思うような真似はせず
調子に乗って付け上がるようなこともしない。
意外に、周囲に気配りのできる人間。
それが俺の友人だ。
「ただい・・・」
「自分はどうしても、中途半端な剣士や弓兵にしかなれないんです!!」
そう、予言者に教えてやろうとホームに入ろうとしたところで
喚き声が聞こえた。
中を覗くと解体屋がドクターに喚いている。
今、顔を出すのはマズいよな。
予言者も、口に人差し指を当てて静かにするよう促している。
「受け売りでしかないのだが。」
そう前置きをしてドクターが語りだす。
「学ぶの語源は真似武、つまり武術を真似ることだと
かつて聞いたことがある。」
語感は似てるな、うん。
「おそらくは、強くなるために、師の動き方や呼吸などを
真似るという意味であろう。
極端な話だ。
解体屋、君は剣を使っておるが
その持ち方1つにしても、既に真似である。
最初に剣を握った誰かのな。
片手で剣を握る、両手で斧を持つ、腰を入れて撃つ。
どれもこれも、言ってしまえば
最初に成した誰かの真似事に過ぎん。」
解体屋は黙って聞いている。
「たしかに、我々はオンリージョブという
ある意味、この世界でたった1人の先駆者である。
戦い方とて独自の物であるが故、教わることも教えることもままならん。
唯一職ではなく、孤独職だ
等と揶揄されておることも、我輩もちろん知っておる。
しかし、それがどうしたというのだ?
思う存分、強い誰かの真似をして
いずれ誰かに真似をされるような、
そんな強さを手にしてしまえば良いではないか。
孤独職?
それすら極めてしまえば、究極のソロプレイヤーであろう。
戦い方が剣士や狙撃手に近い?
大いに結構。
それが、我輩たちに迷惑だとでも?
甘ったれるでないわ。
むしろ、敢えて言おう。
真似をしてでも強くなるがよい。
何、自分のスタイルを探すのは、それからでも遅くはあるまい。
それから・・・」
意外に熱いなドクター。
いつになく饒舌だ。
「誰かは知らぬが、帰ったのであれば覗いておらんで入ってくるが良い。
解体屋、得てして悩みというものはな、
1人で悩むより、多人数で悩んだほうが
答えは見つかるものである。
昔から言うであろう?
”3人寄れば文殊の知恵”と。
ギルドというものは、利点無くして存在せぬ。
たしかに、ピンクボムは普通のギルドとはかけ離れておる。
ならば、このギルドの利点とは何か?」
俺と予言者がホームに入り、
解体屋を見据えていたドクターの視線が和らぐ。
「それはな、全員が初心者である。
その1点であり、それこそがピンクボム最大の利点でもある。
吾輩も含め、予言者も破戒僧も
プレイヤーとしては上級者かもしれぬが、職人としては初心者よ。
初心者が上級者に聞くことは恥ではない。
故に1人で悩まず、皆に相談すれば良いわ。」




