こうして居場所を見つけられた
「で、アスちゃんが過去に来たのはえぇとして、
どうやって来たがぜ?」
「時空確率論の応用。
時間は過去から未来に進む確率が最も高いというだけであって
未来から過去に戻る確率はゼロではない。
故に、未来から過去に戻ることは可能。
理論的には同じような歴史を辿った平行世界に跳躍することも可能。
神隠しと呼ばれる現象は時空確率論の結果の1つ。
未来から過去に時間が戻る確率を高めることで過去にやって来た。」
突拍子もない話だ。
分かったことは、話に着いていけないってことだ。
「じゃ、タイムパラドックスいうやつは?」
「それは空想の産物。」
バッサリ切ったな。
「とはいえ、確実に予言者になる必要はあったから
本来の予言者のゲームソフトと私がこっちで買った物を
勝手に交換させてもらった。
オンリージョブだけは特別に開発されたゲームソフトにしか登場しないから
そこだけは仕方ない。
きっと、普通にゲームを楽しんでるはずだから、結果オーライ。」
サムズアップして言い切った。
条件不明だと言われていた裏は
まさかの条件だったよ。
最初から別物かい!!
「私が現在から未来に戻るとして、
戻れるのは、書き変わった未来。
完全に同じ未来へは決して戻れない。
なぜなら、同じ過程を辿っていないから。
みんなが助からなかったというだけの、
よく似た未来には戻れるけれども
そこは私が居た未来じゃない。
同じだったとしても、お爺ちゃんは後悔し続ける。
たぶん、死ぬまで。」
あの修がねぇ。
なんか想像しにくいわ。
普段、一緒になって馬鹿なこと話してる分だけ余計に。
「私は、後悔していない。
ずっと会いたかった人に会えた。」
そして、何冊かの本とサインペンを出した。
「ずっと、ファンでした。
サインください、南豪山ゆ~かりん先生。
先生の『恋するネクロマンサー』シリーズは最高です。
特に、第三巻『イケメンゾンビは死神幼女の夢を見る』での
電子レンジを冷蔵庫に隠すトリックは目から鱗です。」
OK、ちょっと待とうか。
その『愛するなんとか』シリーズは
恋愛小説なのか?それとも、推理小説なのか?
「『恋するネクロマンサー』よ。
あと、分類はファンタジー小説になるわ。」
サインしながら答えたのは編集者。
作者が言うんなら間違いないんだろうが、
そのタイトルは流石に無いだろう・・・
「あんた、口から出ちょったぜ。」
「マジで?」
「ダダ漏れや。」
「はい、これでいいかしら?」
「あ、できたら”木村飛鳥さんへ”ってお願いします。
木曜日の木に市町村の村、飛ぶ鳥で木村飛鳥です。」
「はいはい。
嬉しいわね。50年経っても私のファンが居るっていうのは。」
サインを書き上げた編集者が予言者に本を返す。
「ありがとうございます。
これ、家宝にします。」
「そこまで大層な物じゃないけど、
これからもよろしくね。」
「はい。」
「で、話を戻しても構わんかね?」
「コホン。
構わない。ドクターの聞きたいことは見当がついてる。」
「ほう?」
「最初に攻略しようと思っているのは、レダイに封印されていた悪魔。
未来の貴方が遺した日記によると、
少なくとも、対峙した4人の悪魔の中では、最も動きが遅かったらしい。
その代わり、防御力が高い。
メンバーが揃った今なら、さらに動きが遅くなるか、防御力が低下しているか
もしくはその両方だと考えられる。
いずれにしても、揃っていなくても勝てたことから、勝機は十分。」
「流石だな。
だが、それは吾輩が聞きたいことではない。」
「?」
攻略順じゃないとしたら、報酬か?
クエスト未完了だから、報酬まで知っているとは思えないし
それが分からないドクターでもなかろうに。
「君は未成年だろう?
過去に来てから、どこで寝泊まりしていたのかね?
まさか、野宿していたわけでもあるまい?」
至極、もっともな質問だった。
逆に、何故気にならなかったのかが、
今更になって気になってきた。
「ネカフェに泊まっていた。
お金さえ払えば、客の素性は詮索しない。」
「ならば今日から此処に泊まると良い。
我輩、1人暮らしゆえ幸いにも部屋は空いておる。」
「せやなぁ。
安いっていうたち、金かかるがやったら
ドクターの世話になった方がえぇんちゃうか。
アスちゃんが『男女が』って言うんがやったら
あしの所で泊めたんで?」
「錠前屋の気持ちだけで十分。
ドクターの所の方が、留守になる心配が少ないだけ安心。
ドクター、悪いけどお世話になります。」
「承知した。後で部屋へ案内しよう。
勝手に部屋に入る事はない故、安心したまえ。」
「ありがとう。」
家なき子状態だった予言者は
過去で居場所を見つけられたようだ。
つまり、予言者やドクターに会いたくなったら
この店に来れば会えるってことだ。
きっと、オフ会はこれからもこの店でやるのだろう。




