こうして知ってしまった
「今回みんなに集まってもらったのは、
知っておいて欲しいことがあるから。」
料理を食べ終えて暫くしてから
予言者が切り出した。
「まず、最初に言っておきたいこととして・・・
これから私が言うことが信じられなくても
黙って聞いて欲しい。」
真剣な様子だ。
皆黙っている。
「ありがとう。
私は、今から丁度50年後の2086年から来た。
目的は、此処に居るメンバーを死なせないこと。」
そういって、バインダーを取り出して開く。
見せたのは、新聞の切り抜き。
「今年2036年の11月28日金曜日、19時37分。
グランドクエスト進行中、このメンバーの内9人が意識不明の重体になる。
理由は、不完全な状態でクエストを受注したことによるボスの強化と
それに伴う脳に掛かる負荷の増大。
グランドクエストを受けていたのは、予言者を除く9人のオンリージョブ。
その結果、4人目の悪魔で負荷に耐えられなくなり9人全員が意識不明。
のち、3人が意識を取り戻すも負荷が大きかったため後遺症が残る。
意識を取り戻したのは、破医者、錠前屋、仕立屋の3人。」
予想外に話がヘビーなので、全員が口を開こうとしない。
いや、開けない。
「残りの6人は意識を取り戻すことなく死亡。
裁判での公式側の主張は
『クエスト条件を完全に満たさずに、クエストを受けたため
ボスが強くなってしまった。
10人全員で受ければ問題はなかった。』
というもの。
この発表を受けて、1人の少女が自殺した。
自殺した少女が本来の予言者。
彼女は転職後、戦いにくいことを理由に早々に引退していた。」
「自己満足だけど、私は私が本来居た未来を変えたい。
だから、皆に手伝って欲しい。」
少女は言いたいことは終わった。
とばかりに座ると、飲み残していたホットミルクを飲み干した。
「予言者、たしかに信じがたいことばかりだが
未来は変えてしまってもいいものかね?」
まっさきに声を掛けたのはやはりというか、ドクターだった。
「時間は1本の大木のようなもの。
その枝のように、未来はあらゆる方向へ分岐する。」
「その理論なら、我輩とて知っておる。
しかし、その場合は予言者が未来からやって来たことで
我輩たちが助かったというパラレルワールドが作られるだけであろう?」
「自己満足だと言った。
私は皆を助けたい。
例え、それが本来の歴史ではなくなっても。」
「よかろう。吾輩は予言者を信じる。
誰にも教えていない、吾輩の本当のジョブを知っとっただけでも
信ずるに値する。」
「にわかには信じられんけんど、
アスちゃんが嘘言うてるようには見えんけん
あしも信じるわ。」
2人を筆頭に、皆が予言者を信じる方向で一致した。
新顔の解体屋も。
もちろん、俺も。
予言者は泣き顔だけど笑顔だ。
「でも、なんであしらを助けたいって思うたん?
言ってしもうたらアレやけど、
あしらとアスちゃんって赤の他人どころの話しやないやん?」
錠前屋の問いに答える。
「私には、優しくしてくれるお爺ちゃんがいた。
お爺ちゃんと一緒に色んな所に行った。
お爺ちゃんは、お爺ちゃんの友人だという人のお墓の前で悔やんできた。
『アイツに俺がハルゼルトを勧めたばかりに。
アイツを殺したのは俺だ。』って。」
どっかで聞いた話だな。
「私の本名は木村飛鳥。
お爺ちゃんは木村修。
友人だったという人はグランドクエストを開始するために必要な種族
10種類目の種族、超越種のオンリージョブ、召喚士。」
その言葉で、全員の視線が俺に集中する。
種族が見れなかったのは、やはり10種類目だったせいか。
そして修、喜べ。
お前の孫はお前に似ずに可愛らしい。
「私が現在にいることで過去が改変される。
私は私のいた未来に戻れないし、
この結果は未来の私には見られないけど、
きっと、お爺ちゃんが後悔することはなくなる。
だから、自己満足。」
しかも、相当芯は強い。




