事件1-7 セーブ能力者探偵と助手
上田はボールペンの先を私に振り下ろす。瞬間、私の腕が上田の手首を捻り上げ、ボールペンが地面に落ちると同時に私は上田を地面に押さえつけた。
「欲をかいて身を滅ぼしたこと、豚箱で憂いることだな」
私がそう言うと、上田の身体から力が抜けた。
「古書は俺の部屋の机の上だ。鐘と一緒においてある」
上田は阿久津に手錠をかけられながら、私と星野に告げた。だが、上田の部屋には中身に札が詰まったバッグしか残っていなかった。まだ連行されずにエントランスで待機させられていた上田を問い詰めるが、知らないの一点張りであった。
「そ、そんなぁ…」
星野が膝から崩れ落ちる。容疑者たちはそれぞれ部屋に戻り、スタッフの二人は警察と話しており、清掃員の桑原は客室の掃除を終えてちょうどエントランスに戻ってきた。
あの事件から2日後、私は今日も依頼者の面倒な依頼を終えて事務所の前に戻ってきた。雑居ビルの3階にある私の事務所。階段を上がった左手に事務所のドアがある。ドアノブに鍵を差し込み、回すがいつも固い感覚がない。鍵が空いている。確かに私は事務所を出るときに鍵をかけたはずだ。
私は意を決し、ドアノブをひねって事務所のなかにはいる。
「誰かいるのか!」
「わっ!びっくりした〜。急に大きな声出さないでくださいよ」
そこには、私に背を向け、事務所のキッチンでなにやら料理をしている星野がいた。
「どうやって入った」
「秘密で〜す」
そう言いながら鼻歌を歌う彼女。というか、しれっと事務所の食材を使わないで頂きたい。とても腹立たしい。
「なぜここにいる」
私がそう言うと、星野が菜箸を動かしていた手を止め、私に振り返る。
「図書館クビになっちゃいました!なのでここで働かせてください!」
「だめだ」
私は食い気味に即答する。
「なんでですか!栂野さん、2日前助手になれって言ったじゃないですか!」
「それはその場限定でということだ」
「え〜?ケチ!」
いやまて。私の能力を知っている彼女をもし拒めば、私に何か不利益が生じる可能性がある。それに、彼女の体力も役に立つかもしれない。
「………」
「オムライスできましたよ!2人で食べませんか?」
私の机にオムライスとスプーンを置く。
「毒とか入ってないよな?」
「栂野さんは私をどう思ってるんですか…」
私はオムライスの端をスプーンで掬うと、口元に運んだ。
「…、悪くない」
「でしょ〜?」
私は立ち上がると、机の引き出しからあるものを取り出して、星野に投げ渡した。
「これは?」
「ここの合鍵だ。俺はこの事務所で生活してるから、出勤するときはそれで鍵を空けて入ってこい」
「は、はい!頑張ります!」
星野は鍵を握りしめ、眩しいほどの笑顔でそう宣言した。




