事件3-3 カフェで密会
カフェで話そう。そんな城ヶ崎の言葉に身を引かれ、着いた店で私はクッションが置かれた椅子に腰掛けた。
「さて、話なんだけど…」
「ああ、君から聞きたいことは山ほどある。まず…、なんでこのカフェに連れてきた」
私の質問に、首を傾げてキョトンとする城ヶ崎。
「カフェで話すのがそんなにおかしい?」
「いや…、こういうのって猫カフェでやらねぇだろ!」
四方から猫の鳴き声が聞こえ、見渡す限りの猫たち。非常に眼福…、ではなく、まじめな話をするのには向かない場所だと私は思う。私の感覚がおかしいのか?
「で、本題にはいるけど…」
頭にだらんと前足を垂らした猫が乗っている黒澤がノートを城ヶ崎に手渡す。
「この子かわいい〜!」
はしゃぐな星野!…、まったく、調子が狂う。と、膝に柔らかい感触が伝わる。
「にゃー」
目線の先には、私の膝に前足を乗せてこちらを見つめる猫が…。悪くない…、そんな考えを振りほどくため、もうひとつの疑問を口にする。
「横のそいつはだれだ」
横のそいつとは、城ヶ崎の左隣で猫に囲まれている黒澤ではなく、城ヶ崎の右隣に座る女生徒だ。その女生徒は顔を伏せ、見るからにどんよりとした空気を纏いつつも、優しく猫を撫でている。
「この子は根室さん。幽霊を目撃したという生徒の一人よ。この子、ちょっとあの体験がトラウマらしくてね、でも、目撃者のなかでは一番口が聞けるのよ?」
「根室です…」
黒澤と同じような暗くか細い声で挨拶をしてくれる。
「この子の精神の負担を少しでも和らげるために、猫カフェを選んだのよ。別に、私が猫好きとかじゃないからね!?」
まあ、仮に城ヶ崎が猫好きでこのカフェを選んだとしても、このカフェ選びには多少効果があったようだ。現に私の目線の先には、口角を少し上げた根室が、猫とじゃれ合っている。
「で、話の本題は?」
「私、幽霊の正体がわかります…」
すると、城ヶ崎が黒澤から受け取ったノートを机に広げる。
「この写真撮ったのが城ヶ崎さんなの」
「今までこの話は誰にもしませんでしたが…、栂野さんのことは聞きました。すごい方なんですね…。守って、くれるんですよね…?解決してくれますよね…?」
根室は先ほどまで猫を撫でていた手を止め、真剣に私を見据える。小さく首を縦にふると、再びほほ笑んで猫を撫で始める。
すっかり日も暮れ、カフェを出る。
「ほんとに、私は大丈夫なんですよね…?」
「安心してください、守りますから」
私の右隣で不安そうに縮こまる根室の方を向こうとした瞬間、空気中に一つの破裂音が響いた。私の顔に生暖かい液体がかかると同時に、根室の体が膝から崩れ落ちる。
「きゃっ…」
と、城ヶ崎が悲鳴を上げようと声を出した瞬間、その声が途切れる。ゆっくりに地面に身体を落とす。
脳で処理物事を処理するより先に、自分の指は古臭い懐中時計のボタンを押し込んでいた。




