事件2-4 ズレ
激しい頭痛に頭を押さえ、壁にもたれかかる。星野が私を心配する声にさえ鬱陶しいほどに激しい頭痛。それが、少しずつ引いていくと同時に開いた瞼の隙間から眩しい光が目に差し込む。
「栂野さん、もしかして…」
「ああ、ロードしてきた」
「何かわかったことはあるんですか?」
「Jackのポケットに紙が入ってる。取ってくれ」
まだ頭痛の余韻が残る額を右手で押さえ、左手で机のヘリを掴む。
「あの…、さっきから何の話を…」
坂下が申し訳なさそうに尋ねてくる。
「気にしないでください。それより、坂下さんにお聞きしたいことがあります」
私がそういったところで、星野がJackの服のポケットから取り出した四つ折りの紙を机の上に広げた。
「どうやらパスワードはJackが始めて爆弾を起爆した日と書いてありますが、Jackが始めて事件を起こした日を入力してもなにも起きなかったんです」
「3月4日じゃないんですか?」
「ええ、それより前にJackが爆弾を扱っていたことは?」
「聞いたことないです…」
坂下が頭を抱えこむ。
「では、Jackと接しているときや事件のときに何か違和感はありましたか?」
坂下は頭を抱え込んだままだんまりを決め込む。
「坂下さん?栂野さんはすごいんです!必ず助けてくれます!でもそのためには坂下さんの協力が必要不可欠…、お願いできますか?」
顎に人差し指をつき、あざといというか、わざとらしく作られた可愛いを星野が演じると、坂下は少し考え込む。
考え込んでから少しすると、坂下が顔を上げる。
「そういえば…、いつも爆弾を起爆するときは同じ番号に電話をかけるんです。あるじゃないですかよく、電話かけたら爆発する爆弾。それを使ってたんです」
それを聞いた星野が目を見開く。
「おかしいです!」
「どうした星野。何がおかしい?」
「即席爆弾は、携帯に電話がかかってきたときの振動とかを検知して爆発するんです。なので、複数個製造すると必然的に携帯電話が複数が必要になる…。つまり、同じ番号になることなんてないはずなんです」
「星野、よくそんな事知ってるな」
「え?あ、ああ、図書館の本にそんな事が書いてあって…」
星野が頬を人差し指で掻く。
「その…、本題の違和感なんですが、電話をかけてから爆発するのにタイムラグがありました」
坂下が本題の違和感についての回答を終えると、思考を頭で巡らせている私を尻目に星野が口を開く。
「即席爆弾は、さっき言ったように電話をかけて、着信時の振動で起爆する爆弾です。電話をかけて基地局を通じて、起爆剤となる携帯につながるまでに3秒から5秒のタイムラグが起こるのは必然で」
「いえ、もっと長かったです!」
「犯行に使ってたのは、振動があればすぐに起爆するタイプですか?」
坂下が首を縦に振ると、星野は顎に手を当ててなにやら唸り始める。
私は必死に思考を巡らせ、一つの可能性のある数字にたどり着いた。だが、もう入力するほどの時間はない。私はもう一度懐中時計のロードボタンを押し込んだ。




