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第15話

「……レイド、ブレイド、起きなさい?」

「んあ……?」


 目を開けると、眼の前には美しい黒髪の……って!


「デレツィアに戻って来たのか!?」

「はぁ? 何言ってるのよ。着いたから早く起きなさい?」

「……ああ、ごめん。デレツィアの隠れ家で起こされた状況と似てたもんだから」

「ホント、二回も起こしてもらうって、子供みたいね」


 荷物をまとめて、車から降り立つ。これが共和国か。共和国は西方諸国の南方に位置しているが、冒険者ギルドのあるバレンツからは遠い上に、依頼もなかったから、足を踏み入れるのは初めてだ。


「ここがミュントハウゼン?」

「そうよ。首都からは少し離れてる郊外の街よ」

 

 道路はデレツィア同様石敷きで、左右には色とりどりの漆喰で塗り込められた家々が立ち並んでいる。住宅の密集度は似ているが、デレツィアよりは閉塞感がない。しかし、"郊外の街"にしてはかなり発展している。


「あれが私たちの拠点よ」


 ヴェルが指差す方を見ると、二階建てと思われる建物が見えた。白塗の漆喰壁に橙色の屋根瓦が映える綺麗な建物。

 一階の出入口の上には、黒地に金色の文字で『ハウゼン探偵事務所』と書かれている。


「探偵事務所?」

「……ええ、偽装よ」


 ヴェルが周りに人がいないか確認してから、小さく囁く。まあ、国の秘密組織みたいなものだから、大っぴらにはできないのだろう。

 

「まあ、流石に国家……情報……なんちゃら事務所って書くわけにもいかないか」

「……共和国国家情報局ね」


 ヴェルに続いて事務所へと入る。中は綺麗に整っていて、白い壁と木の床には汚れ一つない。その他は、玄関脇にピンク色の花が生けてあるだけで、装飾は少なめだ。


「キミの部屋はどうしようかな」

「泊まっていいのか?」

「ええ。しばらく保護して、情報を聞くことが目的だからね」


 ヴェルは玄関で待つよう俺に言い、一人で家の中を一周してまわる。


「今のところ、空いてる部屋はクローゼットと物置部屋がある。今はどっちも使っていないから、このどっちかかな」

「前者は部屋じゃないだろ」

「じゃあ、物置部屋ね」


 二階へと上がり、元々物置きだったという部屋へと案内された。中はホコリこそ被っているが、中々の広さで使いやすそうである。ホコリは拭けばいいんだし、テント暮らしの俺からすれば贅沢なくらいだ。

 

「よしっ」

 

 ここでしばらく過ごすことになるって話だから、とりあえず掃除だな。何か拭く物は……。まあ、一階には何かしらあるだろう。


「ヴェル、雑巾はないか?」


 玄関で作業をしていたヴェルに声をかける。

 

「そうね……。あ、リビングのクローゼットでもらってきて」

「あ? ああ……」


 変な言い方だ。普通『クローゼットから取ってきて』じゃないか?


 玄関から入って正面の廊下を進むとリビングに至った。リビングは広く手前側は椅子と机が置いてあり、奥側はマットが敷かれ、座布団と低い机が置かれている。

 共和国では床に座ることもあるのか。王国にはなかった習慣だ。とすると、さっきの変な言い回しも共和国のある南方に特有のものなのだろうか。


「……あれ?」


 ヴェルに言われた、リビングのクローゼットの折戸を開けようとしたが、動かない。なんだこれ。


「固いだけか?」


 何回か試してみる。


「んっ! ふんっ!!」


 あれ? 一応、力には自信があるんだけどな。スライド式でもなさそうだし……。鍵でも掛かってるのか? いや、外に鍵穴はない。


ガチャッ。ガチャッ。ガチャガチャ。


「ガチャガチャするなっーー!!!」


 突然、大声とともに、クローゼットの折戸が押し開けられ、俺の額に直撃した。


「痛っっっ!!」

「まったく……。ん? ……誰だ、お前」

「ってて……いや、お前が誰だよ。というか何でクローゼットに……」


 見ると上下に分かれたクローゼットの上段の空間に、本やコップ、小物が置かれ、そこに少女が寝転んでいた。ヴェルよりも背が小さく、顔つきもどこか幼く見える。その美しい、暗銀色ダークシルバーの髪がクローゼットの天井に吊るされたランタンによって艶やかに照らされている。


「……ひょっとして、お前がブレイド・ライデンシャフトか?」


 少女はその薄っすらと紫がかった双眸を瞬かせる。


「そうだけど……」

「お前か、お前が……か」


 少女は興味深そうに首をゆっくりと揺らしている。

 何だろう。別にタメ口とかは全然気にならないのだが、こう明らかに年下の奴に『お前、お前』言われると少し、何だろう……気になるな。


「ここに雑巾があるって言われてきたんだけど?」


 軽い不快感を苦笑いで誤魔化しながら、クローゼットの少女に尋ねた。


「ああ。丁度さっきまでここの掃除をしてたんだ。もう要らないからやるよ。ほいっ」

「……」


 そいつは濡れた雑巾を投げつけてきた。キャッチはしたが、ベトベトだったから、水しぶきが顔とか服にめっちゃ飛んだ。


「……おい。渡し方ってものがあるだろ」


 落ち着くんだ。相手は子供だ。こんなことで腹を立てては大人気おとなげないぞ。

 ……それに、こんな子供がそんな国家の組織に属して、おっかない仕事をやってるのか? 一体何者なんだ、この子供は。


「お前、今、ワタシのこと子供って思っただろ」

「ソンナワケナイダロ」

「いいや、思ったな! 言っとくけど、ワタシはお前より頭いいからな。そこんとこ、勘違いするなよ!」

「ッ……今のうちはいいが、もう少し他人に対する言葉遣いを考えないと、将来"大人"になった時に苦労するから気をつけろよ?」

「はっ! なーに怒ってるんだよ。お前こそ大人気ないぞー」

「何だと、このッ!!」


「二人共、子供じゃないんだからケンカはやめなさいっ」

 

 俺と少女が今にも掴みかからんばかりの険悪な空気を漂わせていると、ダイニングの方から声が聞こえた。

グーランは中学生1年生くらいの見た目をしてます。


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