第78話 核の窓 ―拓の内側― 第2話 核のゆらぎ
1. いじめ、そして「関わらない」という選択
・中学二年生
クラスでいじめが起きていた。毎日、ターゲットの机が廊下に出され、教科書に落書きがされた。
拓は何もしなかった。どうすればいいのかわからなかった。関われば自分も標的になるかもしれない。いじめられる側にも原因があるのかもしれない――そんなことを考えている自分が、一番たちが悪い気もした。
結局、何もしなかった。
その夜、布団の中で考えた。もし動いていたら、何か変わっていたのか? わからない。でも、自分は動けなかった。核がまだ脆かったからだ。
その時、担任の先生のことを思い出した。いじめの報告を受けた先生は、いじめっ子たちを叱った。しかし翌日から事態は悪化した。先生は「解決した」と思っているが、実際はもっとひどくなっている。
(先生は動いた。決断した。結果は望ましいものではなかった)
(もし動かなかったら、どうなっていただろう。もっと悪くなっていたかもしれない。でも、自然に収まっていたかもしれない)
(わからない)
しかし、一つだけわかったことがある。「決めなければならない」という状況は、人を間違えさせる。先生は間違えた。でも、それは先生だけのせいじゃない。「決めなければならなかった」からだ。
それなら――「わからない」と言うことも、時には必要なのではないか。「わからない」から考える時間が生まれ、別の選択肢が見えてくる。
それを「逃げ」と言うのだろうか? ――違う。「わからない」と言うことは、時には最も誠実な選択なんだ。
この時、拓は自分の「核」の脆さを実感した。核はあった。でも、それを使いこなす力はまだなかった。それは核の成長過程の中の「ゆらぎ」だった。そしてもう一つ――「わからない」という選択の大切さを、この経験から学んでいた。




