第59話 彼女の傍観者―もう一つの視線― 第5話 気づき
康介はその投稿を、何度も何度も読み返した。
そこに書かれていたのは、妻・瞳の、自分には決して見せない姿だった。
· 彼と話す時の、少し照れたような表情
· 時々見せる、不安げな横顔
· 誰かを想う時の、遠くを見る目
康介は知っている。
それは、瞳が誰かを「愛している」時の表情だ。
かつて、自分に向けられていたものだ。
「この女は、瞳のことを知っている。それどころか——同じ職場にいるのか?」
彼はさらに過去の投稿を遡った。
そこには、職場の風景が断片的に綴られていた。でも、固有名詞は一切出てこない。カフェの写真も、駅前の写真も、特定できないように巧妙にトリミングされている。
でも——一枚だけ、うっかりしていた投稿があった。
数ヶ月前の写真。
オフィスの窓から見えた夕焼け。
その写真の端に、ほんのわずかに、向かいのビルのロゴが写り込んでいた。
康介はそのロゴを知っている。
瞳の職場のビルだ。
康介は深く息を吸った。
「この女は、瞳と同じ職場にいる。そして、あの匿名の主も——おそらく同じ職場だ。つまり——この三人は、同じ場所で働いている。」
偶然か? それとも——何かが動き始めているのか?
康介にはわからなかった。ただ、一つだけ確かなことがあった。
「俺は、見てしまった。」
見てはいけないものを、見てしまった。
しかも——離婚する前から、ずっと。




