第53話 彼女の均衡 ―抗う者たち― 第5話 踏ん張り
前回のお話、お読みいただきありがとうございます。まだまだ、話は展開していきます。
瞳の場合
瞳は「受け入れる」ことを選んだ。
拓のフェチも、彼の過去も、すべて。
でも、それは簡単なことではなかった。
夜中に目が覚めて、隣で眠る拓のスマホを見つめてしまうことがあった。見てはいけないと思いながら、手が伸びそうになる。でも、そのたびに自分に言い聞かせた。
(信じると決めたんだ)
「信じる」という言葉は簡単だ。でも、それを続けるのは、想像以上のエネルギーがいる。疑う自分と戦うエネルギーが。
彼女は毎日、その戦いを続けている。誰にも言わずに。
純の場合
純は「書く」ことを選んだ。観察したことを、形にして外に出す。
でも、それは誰かを傷つけることでもあった。沙織に言われた「あなたの刃の重さ」という言葉が、ずっと心に刺さっていた。
書くたびに、誰かを傷つけるかもしれないという恐怖がよぎる。でも、書かなければ、自分が消えてしまいそうで怖い。
彼女はその狭間で、毎日戦っている。誰にも言わずに。
Eの場合
Eは「動く」ことを選んだ。あのメモを置いた瞬間、彼女は「見ているだけ」の自分を捨てた。
でも、その後も戦いは続いた。新しい職場で、後輩に声をかける勇気。過去を繰り返さないための決意。
彼女は毎日、自分の中の弱さと戦っている。誰にも言わずに。
拓の場合
拓は「踏ん張る」ことを選んだ。
瞳が夜中にスマホを見つめていることに気づいていた。でも、何も言わなかった。それが彼女の戦いだと知っていたから。
純の小説が炎上した時、出版社と交渉した。でも、そのことは誰にも言わなかった。Eが転職するまで、陰で守っていた。でも、Eは今も知らない。
拓は、誰にも見えないところで踏ん張り続けている。それが、彼の選んだ「抗い方」だった。
※『彼女の計画_外伝』影たちの物語をお読み頂くとより作品の深みを味わうことができます。




