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第52話 彼女の均衡 ―抗う者たち― 第4話 ドタキャンの真実

前回のお話、お読みいただきありがとうございます。まだまだ、話は展開していきます。

あの日、拓は「アラサーOL」を名乗るアカウントから呼び出された。


待ち合わせ場所で30分待ったが、誰も現れなかった。


その時は、ただの偶然だと思った。でも、その後、いくつかの出来事が重なり、疑念が芽生えた。あの文体。聞いてくる質問の内容。瞳の会社に関する微妙な知識。


数日後、拓はそのアカウントにメッセージを送った。


「あなたは、康介さんですか」


返信はすぐに来た。

「……わかりました。会いましょう」


---


待ち合わせは、前回と同じ駅前のファミレス。


康介は少しやつれた表情で立っていた。


「よくわかったな」


拓は静かに答えた。

「あなたのことが、ずっと気になっていました」


最初の10分は沈黙が続いた。でも、拓は焦らなかった。ただ、そこにいた。


やがて康介が口を開いた。


「あの日……すまなかった。呼び出しておいて、会わなかった」


「なぜですか」


康介は話し始めた。自分の気持ち。瞳への想い。そして、どうしても拓という男をこの目で確かめたかったこと。


拓は黙って聞いていた。そして、康介が話し終えた後、静かに言った。


「あなたの気持ち、わかる気がします」


「わかる?」


「ええ。大切な人が、他の誰かを選んだ。その相手がどんな人間か、知りたくなる気持ちは」


康介は何も言えなかった。


拓は続けた。

「瞳を……幸せにできますか」


康介は少し驚いた顔をした後、静かに答えた。

「できません」


「でも、一緒にいます。それでいいと思っています」


「……それで、足りますか?」


「足りるかどうかは、わかりません。でも、選んだのは彼女です。俺はただ、そこにいるだけです」


康介は長い間、何も言わなかった。そして、ようやく言った。


「……わかった。信じるよ」


拓は深く頭を下げた。

「ありがとうございます」


康介は少し笑った。

「裏切るって……もう十分裏切ってるだろうが」


拓も笑った。

「そうですね」


その後、二人は他愛もない話をした。仕事のこと。昔の趣味のこと。なぜか野球の話で盛り上がった。


別れ際、康介が言った。

「このことは……内緒にしておこう。あの日のことは、なかったことに」


「わかりました」


それが、男同士の約束だった。


康介はその日から、何も言わなかった。決して瞳に問い詰めず、決して拓を責めず、ただ、約束を守った。


それが、彼なりの「踏ん張り」だった。


※『彼女の計画_外伝』影たちの物語をお読み頂くとより作品の深みを味わうことができます。

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