第51話 彼女の均衡 ―抗う者たち― 第3話 嗅ぎつけた者たち
前回のお話、お読みいただきありがとうございます。まだまだ、話は展開していきます。
瞳の場合
瞳が拓に初めて会ったのは、社内プロジェクトの打ち合わせだった。
彼は目立たなかった。必要なことだけを言い、それ以外は黙っている。でも、その沈黙が、他の人とは違った。
後日、ランチで隣になった時、瞳は尋ねた。
「拓さんって、いつもああいう感じなんですか?」
「ああいう感じって?」
「うーん……何考えてるかわかんない感じ?」
拓は笑った。
「考えてないですよ。別に」
その瞬間、瞳の中で何かが引っかかった。
(この人、嘘をついている)
でも、その嘘は悪意のあるものじゃない。むしろ、自分の本質を守るための、自然な嘘。
瞳はその時、直感した。
(この人には、何かがある)
彼女自身、康介という「民主大国」と暮らす中で、自分を殺さないための方法を身につけてきた。だからわかった。拓の表面上の「軽さ」の奥にある、揺るがない何かを。
純の場合
純が拓の裏アカウントを見つけた夜、彼女は長い間、画面の前で動けなかった。
そこにあったのは、職場の拓ではなかった。
でも、それ以上に――そこにあったのは、自分と同じ匂いだった。
「書かずにいられない」
その感覚が、彼女には痛いほどわかった。
後日、エレベーターの中で偶然二人きりになった時、純は尋ねた。
「あのアカウント、まだ続けてるんですか?」
拓は一瞬、固まった。でも、すぐに静かに答えた。
「見てるの?」
「はい。時々」
「……どう思う?」
純は、少し間を置いてから言った。
「拓さんは、孤独なんですね」
拓は何も言わなかった。
でも、その沈黙が、純には答えだった。
(この人は、孤独を抱えている。でも、それに浸っているわけじゃない。むしろ、突き抜けてしまっている)
純もまた、孤独を知っていた。誰にも最後まで話を聞いてもらえなかった少女時代。書くことでしか自分を保てなかった日々。
だからわかった。
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瞳と純は、全く違う人間だ。でも、二人には共通点があった。拓の「何か」を嗅ぎつけたこと。
多くの人は、拓の「ブランド」だけを見て通り過ぎる。でも、彼女たちは違った。彼女たち自身が、自分なりの「核」を持っていたから。
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※『彼女の計画_外伝』影たちの物語をお読み頂くとより作品の深みを味わうことができます。




