第49話 彼女の均衡 ―抗う者たち― 第1話 核の形成
前回のお話、お読みいただきありがとうございます。まだまだ、話は展開していきます。
【プロローグ:見えない重心】
その日、拓は窓の外を見ていた。
都会の夜景。無数の光。それぞれの下で、誰かが生きている。誰かを愛し、誰かを傷つけ、誰かに見つめられている。
隣で瞳が寝ている。穏やかな寝息。
この静けさは、誰かの「踏ん張り」で成り立っている。自分も、瞳も、純も、康介も、Eも――それぞれが、見えないところで踏ん張っている。
気づかれないように。
誰にも言わずに。
それが、この世界の均衡だ。
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【第1章:核】
拓が初めて「核」を意識したのは、中学生の時だった。
クラスでいじめが起きていた。ターゲットは大人しい男子生徒。毎日、机が廊下に出すされ、教科書に落書きがされていた。
拓は何もしなかった。見て見ぬふりをしたわけではない。ただ、「ああいうこともある」と思っていた。
ある日、いじめの首謀者が拓に言った。
「お前、あいつのこと、どう思う?」
拓は少し間を置いて、答えた。
「別に」
「別にって、かわいそうとか思わないの?」
「思わない。でも、お前がやってることも、別に」
首謀者は何も言えなかった。
その時、拓は気づいた。自分の中に、何かを「判断しない」部分がある。何があっても揺るがない、言葉にできない何かが。
それが「核」だった。
社会人になって、彼は「ブランディング」という技術を身につけた。仕事ができる印象。頼りになる先輩。冷静な判断力。それらはすべて、彼が演じる「ブランド」だった。
でも、その奥には、あの「核」があるだけ。
多くの人は「ブランド」だけを見て通り過ぎる。でも、ごく稀に――その奥を嗅ぎつける者がいる。
※『彼女の計画_外伝』影たちの物語をお読み頂くとより作品の深みを味わうことができます。




