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第40話 彼女の視線 第14話 見られる側になった純

前回のお話、お読みいただきありがとうございます。まだまだ、話は展開していきます。

出版から二ヶ月後、記念のトークイベントが新宿の書店で開かれた。


会場には、百人を超える読者が集まった。純は、少し緊張しながらも、マイクの前に立った。


「今日は、『彼女の計画』のトークイベントにお越しいただき、ありがとうございます」


質疑応答で、一人の女性が手を挙げた。


「この物語は、実話なんですか?」


会場が、静まり返る。


純は、ゆっくりと答えた。


「実話であり、虚構です。私が見てきた現実を元にしていますが、今はもう、私だけのものじゃない。登場人物たちのものでもあり、読者の皆さんのものでもあります。ですから、『真実かどうか』よりも、『何を感じたか』を大切にしていただけたらと思います」


拍手が起こった。でも、その拍手の中で、一人の男性が手を挙げた。


「それって、逃げじゃないですか? 実話なら実話って言えばいいし、フィクションならフィクションって言えばいい。曖昧にすることで、批判をかわそうとしてるだけじゃないですか?」


会場が、ざわついた。


純は、一瞬、言葉を失った。


「……そうかもしれません」


素直な答えだった。


「でも、私の中で、これはもう『真実』でも『虚構』でもないんです。書いているうちに、登場人物たちが勝手に動き出して、私の知らないところで生き始めた。今の私には、彼らが『実在した人たち』なのか『架空の存在』なのか、区別がつかない」


別の参加者が手を挙げた。


「作者自身は、この物語を書いて、何か変わりましたか?」


純は、少し間を置いた。


「変わりました。書く前は、ずっと『見ている側』でした。でも、書いたことで、初めて『見られる側』になりました。それは、とても怖いことです。でも、同時に、誰かと本当に繋がれた気がします」


客席の隅で、帽子を深くかぶった男女が、その言葉を聞いていた。


拓と瞳だった。


瞳の目には、涙が浮かんでいた。でも、それは悲しみの涙ではなかった。


――彼女も、私たちと同じなんだ。見ることと見られることの間で、必死に生きてる。


拓は、純の言葉を聞きながら、胸の奥で何かがほどけるのを感じていた。


「見られる側」になったのは、俺たちだけじゃない。純もまた、見られる側になった。彼女もまた、これからは視線にさらされて生きていく。それが、彼女が選んだ道だ。


※『彼女の計画_外伝』影たちの物語をお読み頂くとより作品の深みを味わうことができます。

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