第37話 彼女の視線 第11話 “一緒に作ろう”と言われた瞬間
前回のお話、お読みいただきありがとうございます。まだまだ、話は展開していきます。
それから、三人の奇妙な合作が始まった。
純は、拓と瞳から直接話を聞き、小説に加筆した。事実とフィクションの境界を、意図的に曖昧にしながら。
瞳は、最初は躊躇していたが、次第にこの作業にのめり込んでいった。自分の人生を、自分たちの言葉で紡ぐことの意味を、感じ始めていた。
「ここ、私の気持ちは違うな」
「じゃあ、どう書けばいい?」
「……もっと、怖がってたって書いてほしい。拓を失うのが、怖くて仕方なかったって。それに、世間の目も。離婚した女として、これからどう生きていけばいいのか、毎晩悩んでた。職場で無視されるたびに、トイレで泣いてた。あの匿名のメールが来た時は、本当に死にたくなった」
拓は、そんな瞳の姿を見て、何も言わず手を握った。
瞳は、涙を浮かべて頷いた。
ある夜、拓がぽつりと言った。
「俺の裏アカウントの話、どこまで書けばいい?」
瞳が答える。
「全部でいいんじゃない? もう隠さないんでしょ?」
拓は、少し迷った後、頷いた。
「そうだな」
「何?」
「恥ずかしい裏の顔でもあるけど、俺にとっては、自分の一部でもあるんだ」
純は、その言葉をノートに書き留めた。
「分かりました。ちゃんと書きます。拓さんの、大事な一部として」
単行本『彼女の計画』は、三人の合作として出版された。著者名は、純のペンネーム。でも、帯には小野寺の提案で、こう書かれていた。
「実話を基にした、衝撃のノンフィクション。著者自身の壮絶な体験とは――」
純は、その帯を見て、複雑な気持ちになった。でも、もう後戻りはできない。
※『彼女の計画_外伝』影たちの物語をお読み頂くとより作品の深みを味わうことができます。




