第36話 彼女の視線 第10話 “止められない”ところまで来てしまった
前回のお話、お読みいただきありがとうございます。まだまだ、話は展開していきます。
あのカフェでの対決から、三日が経った。
拓は、自分の中の何かが壊れかけているのを感じていた。純に晒され、瞳に詰め寄られ、自分のすべてが暴かれたような気分だった。隠していたものが、すべて白日の下に晒された。もう、隠すものなど何もない。
その夜、酒を飲みながら、ふと裏アカを開いた。
何年も投稿していないのに、まだアカウントは生きている。過去の投稿の数々。あの頃の自分が、必死に「見られたい」と願っていた証。
何を思ったのか、拓は新しい投稿を始めた。
一枚、また一枚。ネットから拾ったパンストの画像に、短いコメントを添えて。何十枚も。止まらなかった。溜まっていたものが、一気に溢れ出した。
そのすべてが、誰かに見られることを願って。
でも、誰にも見られないことを恐れて。
一時間ほど経った頃、はっと我に返った。
画面に並ぶ、新しい投稿の数々。恥ずかしさと、虚無感が一気に押し寄せた。
涙が溢れでてきた。
拓は、そのすべてを一斉に削除した。一つ残らず。
数分後、アカウントは元の「休眠状態」に戻った。誰かに見られた形跡もない。いいねもゼロ。リプライもゼロ。
あの暴走は、誰の目にも触れずに消えた。
――誰にも、見られなかった。
その事実が、なぜか救いだった。そして、少しだけ寂しかった。
拓はスマホを置き、深く息を吸った。瞳が隣で寝ている。穏やかな寝顔。
「……もう、やめよう」
そう呟いた。
それが、彼なりの決着だった。
※『彼女の計画_外伝』影たちの物語をお読み頂くとより作品の深みを味わうことができます。




