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第107話 彼女の傍観者 ―拓の窓― 第5話 康介という影

康介が俺を呼び出した。書店の二階から、俺を見下ろしていた。それが分かった時、不思議と怒りは湧かなかった。この人もまた、見ていたんだな、と。ただ、それだけのことだった。


彼は見ていた。見ることで、自分の居場所を保っていた。見ることで、誰かを傷つけないようにしていた。見ることで、自分自身を守っていた。それは弱さのように見えて、実は彼なりの強さだったのかもしれない。


彼は何もしなかった。

でも、それでよかったのだと、今は思う。もし彼が何かをしていたら、俺たちの関係は、もっと別の形になっていただろう。それはそれで、また違った人生があったかもしれない。でも、俺は今の人生を選ぶ。それだけのことだ。


彼はもう、見ていない。見られることも、もうない。それが彼の選んだ「閉幕」だった。静かで、彼らしい終わり方だった。


彼の人生は、彼のものだった。誰の評価でもない。誰の正解でもない。ただ、彼が選んだ道が、そこにあっただけだ。


視線の連鎖は、どこまでも続く。でも、康介はその連鎖から、自ら降りた。それが、彼の最後の「選択」だった。俺はそれを、静かに受け止めた。今も、忘れていない。彼が書店の二階で、何も言わずに、ただ立っていた、あの背中を。


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