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天真爛漫おてんば娘は異世界を自由気ままに満喫したい  作者: cvおるたん塩
第一章 貴族の生活編
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7話 失敗

 模擬戦に体力づくり、難しい座学など、大変な毎日を乗り越えて騎士団生活最終日、四日間で教え込まれたことを最大限生かしながらリシアと戦っていると、騎士団とはまた違う鎧を纏った騎士数名と、貴族らしき女の子が訓練場に来た。

 はっきり見えるわけじゃないが、頭にはティアラを付けている。王族っぽいが、誰だろう。私が聞いた限り私と年の近い王族の娘はいなかったと思うが。


「シエラちゃん、あの方がセレネ王女殿下です」

「セレネ王女殿下?」


 セレネ王女殿下って確か二十四歳だったはずだが、どう見ても十三歳くらいにしか見えない。


「あ、団長もいますね」


 ほんとだ。案内でもしてるのかな? それに、よく見たらセナもいる。なんでだ。


「ちょっと行ってみてもいいかな?」

「まあ挨拶程度なら問題ないと思いますよ」


 よし、なら行ってみよう!

 セナもいるし何かあったらフォローしてくれるだろう。

 そう思ってセレネ王女殿下のところに行こうと思ったら、向こうからこっちに来ていた。


「初めまして、セレネ・グラディオンと申します。あなたがシエラちゃん?」


 どうやら私の事を知っているらしい。そういえばセナは昔親衛隊だったみたいだし、教えていたのか。


「はい、私がシエラ・エイオスですわ。セレネ王女殿下、お会いできて光栄で——」

「やんちゃな子と聞いていましたが、意外としっかりしているのですね。さすがはエムロスとクリスティアの子です」


 突然、セレネ殿下が私を抱きかかえ、頭を撫でながら褒めてくれた。しかし、どうも引っかかる言い方だ。いったいセナは何を教えたのやら。


「あ、ごめんなさい、訓練の途中でしたね」


 待って、状況を理解できない。突然王女様が来たと思ったら今度は抱きかかえられてなでなでされて。私、実は知らないうちに徳ポイントをカンストでもさせていたかな?


「リシアも、お久しぶりですね」

「お久しぶりです、セレネ王女殿下。その節は、本当にお世話になりました」


 どうやらリシアも顔見知りのようだ。あとから聞いたのだが、エセリア学院を卒業後、騎士学校への入学に協力してくれたらしい。その時のセレネ王女殿下の言葉が騎士団の入団条件などにも影響を与えたとかなんとか。


「あのリシアが、まさかこうして教える立場になるとは、私も嬉しいですよ」

「それも、セレネ王女殿下のおかげです」

「あなたがお嬢様に……ありがとうございます」


 騎士達と同じような恰好をしているセナが、リシアに感謝を伝えた。


「この騎士さんは?」

「私のメイド……ですわ」


 危なかった。いつもセナと話す口調でしゃべったらセナにまた説教されるところだった。心なしか、セナも一瞬だけ表情が険しくなっていた。


「初めまして。メイドのセナと申します」

「あっ、えと、リシアです。こちらこそシエラちゃんから学ぶことは多いですから」


 そんなことはないだろう、と思ったが、そう言えば「魔法で剣を作って同時攻撃ってなかなか使えそうですね」って褒めてくれたな。他にも何度か似たようなことがあった。やはり騎士と魔法使いでは考え方が少し違うのだろうか。


「それでセレネ王女殿下、本日は何用で?」

「そうでした! 今日はシエラちゃんに会って、この騎士団の体験でどれほど成長したのか見に来たのです」


 最終日を選んだのは忙しかったからかセナに何か言われたか。まあセナが私の事をいろいろ教えていたみたいだし、後者だろう。しかし、最終日でよかった。飛躍的に成長して今やリシアと互角……とはいかないが、善戦くらいはできるようになった。もちろん本気を出されたら一瞬で終わるけど。

 しっかり呼吸を整えてから始めよう。


「では、行きます!」


 珍しく、リシアから仕掛けてきた。初手は最初私に見せてくれた刺突攻撃だ。自分でも信じられないが、この攻撃ならギリギリ見切れるようにはなった。防げるかは別だが。

 一段目は確実に防げる。二段目は弾く。これで次の攻撃を遅らせて回避。

 ここから縮地で一気に距離を詰めたいが、結局縮地は習得できなかったので、魔法で応戦する。

 厳しい訓練のおかげで、剣で戦いながら魔法を使うことにも慣れた。といっても、まだ大技につなげるまでの一手でしかないが。しかし、そのおかげで多少は戦いやすくなった。特に、水の剣を二本同時に操りながら手に持っている剣で戦えるようになったのは大きい。


「んなっ、それは——」


 リシアめがけて飛ばした日本の水の剣を同じ技で相殺され、さらに距離を詰められた。


「風よ!」


 とっさに風魔法で回避し、今度は挟むように水の剣を飛ばす。しかし、これも同じように相殺された。

 最早魔法は通じないか。


「しっかり魔法も使えていますね」

「ええ、いくつか教えたので。しかし、お嬢様ならもっと使いこなせるはずです」


 私なら使いこなせるか。確かにこの五日間で魔法の腕も少しは上がったが、まだリシアに通用するレベルではない。威力が足りないのだ。


「お嬢様はまず使い方を考えます。一つ教えれば、自らそれを応用して見せる。それがお嬢様ですから」


 使い方……そういえばセナに教わる時、こんなことができそうと思ったら実戦していたな。使い方は一つじゃない……そうだ、使い方は一つじゃないんだ。

 リシアが次距離を詰めてきたとき、足元から水の剣を放つ。それと同時に、私も迎え撃つ。防戦一方ではどのみち勝ち目はない。なら、いっそこちらから攻めてみよう。カウンターでやられそうになったら魔法で回避!


「取った!」


 再び剣を交えて後退したところで、案の定リシアは詰めてきた。そこを——


「えぇ、なんで!」


 足元からの不意打ちを、見事に体をひねって回避した。が、態勢が崩れた今ならやれる。


「まだです!」


 あと一歩で剣が届くというところで、土魔法で防がれた。


「リシアが魔法まで使うとは、なかなかやりますね」

「たとえ劣っていても絶対諦めず、さらに成長する。それがお嬢様のいいところですから」


 土魔法で防がれたなら今度は魔法で。魔法に集中できるなら、水の剣は三本まで生成できる。体勢を立て直される前に視覚から狙う。防がれても今度は剣を使える。剣や魔法に固執していて気付かなかったが、手足、頭だってある。


「シエラちゃん、魔法の弱点を思い出してください」

「しまっ——」


 私としたことが、完全に失念していた。

 魔法に集中しているのがバレバレだとそれは大きな隙だ。けど、すでに剣は生成しているのだから、あとはリシアの剣より早く放てばやれる!

 セナ、そしてセレネ王女殿下の前だ、こんなミスで負けるわけにはいかない。


「ッ……やぁ!」

「なっ、反則でしょ……」


 魔法を食らいながらも気合で私に攻撃を仕掛けてきた。

 辛うじて防げたが、受け方を失敗して剣が壊れてしまった。


「そこまで。勝者、リシア!」

「最後、焦っちゃいました……て、シエラちゃん⁉」


 本当に情けない。あんなミスで負けてしまうとは。もうちょっとセナにいいところを見せたかったのに。


「あわわわ、どうしよう、シエラちゃん泣かせちゃいましたぁ……」

「な、泣いてない……」


 泣いてるんじゃなくて、ただ目から水漏れしているだけだ。決して泣いてない。決して悔しくて泣いてるわけじゃない。これも涙じゃない。


「シエラちゃん、リシア相手に善戦しました。最後はリシアも焦って本気を出していました。あなたはこの五日間で騎士に本気を出させるほど成長したんです。負けたのは悔しいかもしれませんが、シエラちゃんは胸を張れるだけのことをしました。誇ってください」

「うっ……ううっ……」


 あ、ダメだ。セレネ王女殿下に励まされたせいで、ますます涙が止まらない。いや、涙じゃなくて水漏れだけど。

 そうして私はひとしきり泣いた後、セレネ王女殿下の腕の中で眠ってしまった。

 何年ぶりに泣いただろう。悔しくて泣いたのに関しては、もう小学生以来だ。けど、こうして泣いた後はもっと頑張ろうと思える。あの時もその悔しさを糧に頑張れていた。もう何を頑張っていたかは忘れたけどね。


 リシアには「シエラちゃんが強くなってまた私と戦ってくれるの、待ってますからね」なんて言われたのだから、次はあんなミスしないようにしなきゃいけない。次はリシアにもっと褒められるくらい強くなって挑むんだ。


ちなみにリシアちゃんの実力は対人で言えば結構上のほう

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