3-5 決断
考えてはいたことだ。
もしあれを解き放つことになればこの辺り一帯は立ち入り禁止になるだろう。
さらに近隣の村々にまで被害が及ぶかもしれない。
「それでも…」
ホーウェンという魔女がずっと味方であるとは限らない。
どんな人間だろうと所詮ははぐれ魔女。自分たちのルールなど適用されないのだ。
魔獣をどうにかしたあとで後ろから刺されるかもしれない。
その時刺されるのは護衛の役目だ。
「戦うのは私。信用すると決めたのも私。
ヴァロは護衛として私を守ろうとしてくれればいいの」
「味方でもないだろう」
「それでも」
ヴァロは頭を抱える。フィアは引いてくれるつもりはないらしい。
「この頑固者」
「ヴァロの分からず屋」
二人は感情むき出しで睨み合う。
「ククク」
背後から噛み殺したような笑い声が背後から聞こえてくる。
「ホーウェンさん」
振り向くとホーウェンが住処の入り口で腕を組んで岩に寄りかかっていた。
「外で何か言い合う声が聞こえたと思えば喧嘩か」
よそでやってくれと言わんばかりのホーウェンの態度にヴァロは少しだけ罰が悪そうにする。
「ホーウェンさん、あんたに話がある」
「なんだ?」
「あんたに協力したい」
ヴァロはホーウェンを見据え提案する。
「正気か?」
「正気だよ。あんたたちだって同じだろう?
万が一にでもあんな化け物を世に解き放つわけにはいかない。
あんたの意図はわからないが目的が同じなら協力できるだろう。
二人よりも四人のほうがどうにかできる可能性は高いんじゃないか?」
その言葉にホーウェンは黙り込む。
「状況は最悪、相手は聖剣の力を得ているうえに、再生を繰り返す怪物。
一度起きてしまったために奴は浅い眠りの中にいる。少しの衝撃で簡単に目覚めてしまうだろう。
それにもし倒せたとして、それは名誉にはならないし、ここで死ぬことも考えられるんだぞ?」
「今やっておかなくて、後で後悔するよりはいい」
ヴァロの言葉にフィアも黙って頷く。
「感謝する」
ホーウェンは深々と頭を垂れた。
そしてこの時の選択があとで大きな意味を持ってくることを今のヴァロたちは知らない。
「そういうことだクラント。意見はあるか?」
「あんたがそういうのなら俺は別にかまわない」
ヴァロよりも一足先に戻っていたクラントは部屋の隅の岩に寄りかかっていた。
ヴァロと視線を合わせると手を振ってくれた。
「まずは計画の練り直しだな。作戦会議をしようか」




