掛け合い☆漫才♥誰と誰とご飯を食べた
私の一声で緊急会議が招集された。
会議室では、社長、林お父さん、張総支配人の三人と、私たち三人が向かい合って座っていた。
「どうしたの?急に」
社長は首をかしげた。
林お父さんはムスッとした顔つきだ。
「私はまだ仕事が残っているんだが!」
「用があるなら早くおっしゃいな」
総支配人は胸の前で腕を組んだ。
「実はですね、私と妹でコンビを組んで、掛け合い漫才をやることになったんです」
「まずは皆様の前で披露させていただいて、アドバイスをいただければと思いまして」
「漫才!?」
社長の顔つきが険しくなったが、私たちは知ったこっちゃない。
多綵がテーブルの上に100元札を一枚ポンと投げ出した。
私は多綵を見つめ、それからテーブルの上の100元札に視線を落とした。
「この100元札、どこから出たの?」
「私の~」
多綵が応じた。
これが私たちのオープニングよ。
私は返す。
「それ、絶対に私のじゃない!最近私のお財布、毎回お金が減ってるのよ。最初は気にしてなかったけど、この前コンビニでお昼買おうとした時、朝パン買ってお釣りでもらった100元札が残ってるはずだったのに消えてたのよ!」
「私が借りたんだよ~!言うの忘れてたの~!」
「あんた私の妹なんだから、借りるなら一言言いなさいよ。それなら大したことじゃないんだから」
「じゃあ……借りるね~!」
「借りたお金、いつ返す気よ!?」
「家族なんだからさ~!そんな細かいこと気にしないでよ。はい、この100元持っていって~」
「残りの100元札はどこ行ったのよ!?警察呼ぶわよ!」
「やめてよ~!私、お姉ちゃんのこと一番大好きなのに~!」
「実の姉妹でも金の貸し借りはきっちり精算よ!」
「私は心からお姉ちゃんを愛してるんだよ~!」
「私もあんたを愛してるわよ。でも本当のことを言いなさい!」
「嘘偽りなんてないよ~!」
「私、見たのよ!あんたが昨日、明麗と一緒にご飯食べてるところを!あんた、私のこと愛してないんじゃないの!?」
「そんなことないよ~!」多綵は両手をぶんぶんと振った。「変わらず愛してるよ~!それに昨日食べたのは150元だよ~!」
林お父さんと張総支配人の顔色が、一瞬で泥のように沈んだ。
「余分なその50元はどこから出てきたのよ!?」
「お姉ちゃんのお財布だよ~」
「あんた、端数まで盗んでたの!?」
「『借りた』んだよ~!今言ったから借りたことになったんだよ~!」
私はちらりと社長の方を見た。彼女は耳だけで聞いており、その鋭い視線はすでに犯人の上に注がれていた。私は演技を続けた。
「借りるくらいならいいわよ。でも私の浮いたお金であの子とご飯食べて、私と一緒にご飯食べてくれないなんて……あんた、あの子のことが好きなの!?」
「違うよ~!」
「じゃあ誰が好きなのよ!?」
「総支配人!」
「私ぃ!?」
多綵は総支配人の目の前まで歩み寄った。
「私たち、両思いだもんね~!愛してるって言ってくれたじゃん!」
「言っていませんわ!」
「じゃあ誰を愛してんの~? 口を開けば私を愛してるって言うのにさぁ。昨日だって私と一緒にご飯食べたじゃん~」
私は声を張り上げ、首を左右に振りながら、全員に聞こえるように大声で言った。「あなたたち、同性愛なの!?」
「私は異性愛者です!」
総支配人はブンブンと手を振った。
「じゃあ二人の間にどうして愛があるのよ!? あなた、妹の財産でも狙ってんじゃないの!?」
「違いますわよ! なんで漫才の話が観客に飛び火してくるんですの!?」
多綵は手を後ろに回し、上半身を揺らした。
「これはイマーシブ・シアターだよ~」
芝居を軌道修正しなきゃ。私は総支配人に向かって言った。「で、結局誰を愛してんのよ!?」
「言えません」
「ってことは、愛してる人が居るってことね!?」
「居ません!」
多綵はその場でぴょんぴょんと2回跳ね、クルッと一回転すると、体を反らせて両手を広げた。
「愛があるなら、今すぐ!ここで!大声で言わなきゃダメだよ~!そうしないとすれ違っちゃうよ~!」
「本当に居ませんわ! 田小取締役と一緒にご飯を食べたのは、林監査役です!」
「あなた!? こんな若い子に手を出すなんて!?」
林お父さんは大慌てで首を横に振って否定した。
「違う!違うんだ!私は君を愛しているよ、お前!」
多綵は顔を背け、見るからにウザそうな顔をした。
「そうだよ~!私レズビアンだもん、男なんて愛すわけないじゃん~!ご飯なんて食べてないよ、一度だってね!」
社長は今度こそ激怒した。
「一体全体、誰と誰がご飯を食べたっていうの!?」
私は即座に追撃した。「愛があるなら大声で叫びなさいよ! 一回150元のご飯なのか、それとも150万なのか、どっちなのよ!?」
横で静かに黙っていた明麗が、ここで横から飛び込んできた。
「お母さん、愛してるわ!」
「私も愛しているわよ!」
母娘の愛、なんて素晴らしいのかしら。
「お前、愛してるよ!」
「私も愛してるわ!」
そうであってほしいものね、林お父さん。
「お姉ちゃん、愛してるよ~!」
ありがとね、多綵。
「私も愛してるわよ」私は振り返って言った。「総支配人、次はあなたの番よ?」
「愛しています!」
多綵がすかさず問い詰めた。「誰を愛してんの~!?」
「あなたには関係ありませんわ! これは個人のプライバシーです!」
「私たちのパフォーマンスはこれで終わりです。正式に会議を始めましょう。……でも、林お母様……社長、気になりませんの? 総支配人が誰を愛しているのか、そして『誰と誰がご飯を食べたのか』が」
社長は怒りに満ちた目で張総支配人を睨みつけた。
「吐き出しなさい! 吐き出せば『借りた』ことにしてあげる! 吐き出さないなら警察に通報する! 一体誰と誰がご飯を食べた!?」
林お父さんが一歩前に出た。
「私だ! 私が彼女とご飯を食べたんだ!」
「あなたには聞いてないわ! 私は総支配人に話しているのよ!」
総支配人はその場にペタリとへたり込んだ。
「……私、林監事とご飯を食べました。返します、ちゃんとお金は返しますから……」
多綵は顔を私の耳元に寄せ、誰にでも聞こえるような大音量で聞いてきた。
「へぇ~? ご飯食べるのに誘わないなんてさ、三人で食べたらダメだったのかな~?」
「二人でコソコソ盗み食いする方が美味しいんじゃないかしら」
多綵はなおも口を止めない。
「じゃあ『食べる』っていう行為が美味しいのかな~? それとも『盗む』っていう行為が美味しいのかな~?」
私は少し考えた。
「ご飯が美味しい」
そして、私たち二人は深々と一礼をした。
会議室を出る前、私は明麗に言った。「困ったことがあったら、いつでもまた私を頼っていいのよ」
あとはこの家族に任せましょう。
所詮、よその家庭の事情に外人が善悪を裁判することなんてできないんだから。
家族でじっくり話し合えば、きっと何らかの結論が出るはずよ。
良い結果になることを祈るわ。
「お姉ちゃん、これで手を引いちゃうなんて、いくら何でも残酷すぎない~?」
どこが残酷だって言うのよ?
「私たち取締役であって、本物の漫才師じゃないんだよ~」
じゃあ少しは取締役らしく弁えて、余計な口出しはしないでおきましょうよ。
「お姉ちゃんって、本当におバカさんだねぇ」
何言っちゃってんの? 事実を全部ぶちまけて全員を惨めな目に遭わせないための、これが一番の方法だったじゃない。
「お姉ちゃん、フィクションは現実を変えられないんだよ。フィクションは現実を映し出すだけ。でもさ、人が認識する現実って一人ひとり違うでしょ? だったらどうすればいいと思う~?」
あんたのそのおバカな頭が、いつからそんな哲学的なことを喋れるようになったわけ?
キャラ崩壊を起こしてるわよ!
あんたはバカっぽくいてこそ可愛いの。
「はぁ……夢を見る人は、夢の世界に貪欲にしがみつくんだよ~」あんたは肩をすくめた。「現実はいつだって惨めで痛々しいもの。お姉ちゃん、悪者になりたくないなら、最後まで責任を取らなきゃダメなんだからね~!」
私が悪者よ!
私なんて、信号待ちしてて車が来なければ赤信号だって平気で無視して渡るんだから!
超・悪党なんだからね!
最悪、車にはねられたっていいわ。
怪我して半身不随になったら誰かに一生面倒見てもらうか、死んだら家に慰問金が入るでしょ。
どう考えたって割に合うわ。
「お姉ちゃん一人の問題じゃないんだよ~? なんたって、これは『ひとつの家族』の問題なんだから」
言ったでしょ、これが一番の方法なのよ。
「ドジなお姉ちゃん、生きていくことが一番難しいんだよ。誰かの生命を背負うのはもっと難しいんだから」
生命なんて自然と道を見つけるものよ。私があんたをちゃんと面倒見られれば十分なんだから。
それが私の生涯の願いなんだからね。
「あ~あ! お姉ちゃんもすぐに分かるよ~」
何が分かるっていうのよ?
明麗の家が良い方向に向かったっていう吉報かしら?
それなら一刻も早い方がいいわね。
人とコッソリご飯食べる=偷吃飯(中国語)
偷吃=不倫、浮気
中国語小ネタでございます




