ドキドキ☆秘密♥ストーキング
校内模試、私は順調に解答を埋めていった。
今回は準備万全、解けない問題なんて一問もなかったわ。
実力さえ普通に発揮できれば、7月の分科テストで台湾大学合格は確実ね。
テストが終わって多綵を迎えに行った。
「わーい!解放~!メイドカフェに行ってウララちゃんに会いに行こう!」
行ったあの日から、あんたったら毎日通い詰めてるじゃないの。
あんたが無駄遣いしないように、私も一緒に行くしかないのよ。
勉強すらメイドカフェでやってるんだから。
メリットは、コンビニでチンするお弁当を買って帰ってゴミを溜め込まなくなったこと。
デメリットは、出費がマジでデカいこと。まあいいわ、数千万持ってる私たちにとっちゃ、ちょっとした誤差みたいなもんよ。
今日もメイドカフェで猛勉強よ!
「テスト終わったんだから、お姉ちゃんもリラックスしなよ~」
バカ、本当の戦いは7月の分科テスト!
「適度に息抜き覚えて自分を追い詰めすぎないと、また緊張して寝過ごしちゃうよ~?」
そんな不吉なこと言わないでよ!
「着いたー!」
あんたは私の話を聞かずに、勝手に店のベルを押した。
青玲が出迎えてくれた。
「お嬢様たち、おかえりなさいませ」
「青玲ちゃんも超かわいい!」
「口ではそう言いつつ、本当はウララちゃんのこと考えてるんでしょ~?」
「嫉妬しないでよ~!青玲ちゃんにもチェキ3枚買ってあげるからさ」
だから無駄遣いするなって言ってるでしょ!
「じゃあ5枚買っちゃう!」
なんで増えてんのよ!?
「青玲ちゃんへの愛を示すためだよ!」
なんて開き直り方よ。
「お嬢様、チェキは大切に保管してくださっていますか?」
「ベッドサイドの棚に置いちゃって、一緒に寝てるよ~」
「当店オリジナルの記念ミニアルバムも販売しておりますが、いかがですか?」
商売上手ねぇ。
「記念ミニアルバムはロゴ入りの特別デザインで、さらにチェキ10枚券が付いて1冊2000元です」
単にチェキのセット販売にアルバムを上乗せして転嫁してるだけじゃないの!?
「買った!青玲ちゃんと2枚、朱朱ちゃんと2枚、あとウララちゃんと6枚撮る!」
そこへ林明麗が歩いてきた。私たちが話している間にメイド服に着替えてきたらしい。
「また来たの……」
何そのウザそうな顔?
「お嬢様にそんな口の利き方はダメ」
「どうせこの人たち、こうされるのが好きなんでしょ」
「今日のウララちゃんの怒り顔も超かわいいよ~!」
「ご注文は?」
「カレーオムライス!」
「私も同じ」
「かしこまりました」
明麗は注文を打ちにカウンターへ戻っていった。
「ごめんなさいね、あの子、他のご主人様やお嬢様にはこんな態度取りません……」
「言い換えれば私たち、特別な客ってことじゃん!」
妹よ……あんたのポジティブさには恐れ入るわ。
青玲はくすっと笑うと、カウンターの明麗のところへ話しかけに行った。
朱朱は今日カウンターでドリンク作りとレジ担当らしく、わざわざ話しかけに来ることはなかった。
私はメイド3人が何やら話し合っている様子を遠目から眺めていた。
すると彼女たちの顔色がどんどん暗くなり、青玲が突然大きな声を張り上げた。
「じゃあ貴女のファンのお客様はどうするのよ!?ここは普通のバイトとは違うのよ!」
明麗はうつむいて何かを呟いており、朱朱が隣で間を取りなしているように見えた。
一体何事かしら?
「お姉ちゃん、オムライスまだ~?」
あんたは食べることばっかりね。
私は問題集を開いて勉強を始めた。
他人の事情に首を突っ込んじゃダメよ。自分のことの方大事なんだから。
明麗がオムライスを運んできたので、私は問題集を片付けた。
明麗は私が問題集を仕舞う動作をじっと見つめていた。
なぜかその瞳には怒りと不満が満ちていた。
「今日はネコちゃん描いて!」
「私は特に何も描かなくていいわ」
「かしこまりました、お嬢様」
明麗はケチャップで綺麗なイラストを描き上げた。絵まで上手いなんて、実に多才ね。
「わーい!超かわいい!」
妹が嬉しそうなら私も嬉しい。
明麗がくるりと背を向けて立ち去ろうとした。
「ウララちゃん、明日シフト入ってる?」
てっきり萌え萌えキュンの魔法をおねだりするのかと思ったら、なんで急にそんなこと聞くのよ?
「シフトは秘密です。仮に明日別のスタッフでも、お嬢様には関係ないですよね?」
「だってウララちゃんが好きなんだもん。お店に来た時はいてほしいよ」
「……しばらくお休みをいただきます」
「どれくらい?」
「お答えできません」
「最後に魔法かけていってくれる?」
「……わかりました」
明麗は営業スマイルを作った。打ち上げ花火のように眩しく燦然とした笑顔で、今までで一番美しい魔法のポーズと甘い声を披露してくれた。
どうしたのよ?あんた、いつからそんなプロ意識高くなったの?
明麗が去ると、多綵はバクバクと勢いよく食べ始めた。私もしゃもじを……じゃなくてスプーンを進めた。
食べ終わると、青玲が皿を下げに来て、ついでに尋ねてきた。
「アルバム特典のチェキ10枚ですが、今日撮影されますか?」
「今日はポーズ思いつかないから、また今度でもいい?」
「……今日、ウララちゃんと多めに撮っておいた方がいいですよ。ラクガキも今日中に終わらせますから」
「青玲ちゃん」
「はい、お嬢様」
「ドリンク追加で延長する」
「チェキは?」
「また今度!」
「かしこまりました……」
青玲は微笑んではいたものの、その顔にはうっすらと不安の色が滲んでいた。
何があったのよ?
「お姉ちゃん、私、今日閉店まで居たい」
好きにしなさいな。ただしお金は節約すること。ドリンクは最低注文金額に抑えるよ!
私は再び問題集を取り出した。たまには環境を変えて勉強するのも悪くないわね。
他のお客さんが入れ替わり立ち替わりする中、いつもならテーブルに来て多綵とおしゃべりしてくれる青玲が、意図的か偶然か、一度も寄ってこなかった。多綵も騒がず、じっと明麗を見つめていた。
閉店15分前まで居座った。客は私達を含めて2組だけになっていた。
青玲が会計をしに来て、私たちは店を出た。
さあ!こんな時間だし帰りましょう。
「お姉ちゃん」
また何か?あんた今日なんだか変よ。
「お店の裏口に行こうよ」
「何のために?」
「ウララちゃんを探すの」
「それってメイドさんへのストーキングでしょ!犯罪よ!」
「ウララちゃん、今日で辞めるんだよ」
「なんでそんな言い切れるわけ?」
「お姉ちゃんはドジなだけじゃなくて、おバカさんだね!」
「なんで急にディスってくんのよ!?」
「ウララちゃん、私にカマかけられたのに気づいてなかったんだよ」
「あんた、いつから探偵気取りになったのよ?」
「私が『最後に魔法かけて』って言ったら、彼女『わかりました』って言ったでしょ?それが『最後』ってこと。絶対今日で辞めるんだよ」
「だから何よ?」
「メイドさんは『卒業』するものであって『辞める』ものじゃないの!ウララちゃんみたいに人気がある子なら、絶対卒業式を開いてもらえるはずなのに、何も言わずに突然辞めるなんて、絶対何かワケがあるんだよ!」
「あんた、なんでそんな不吉な決めつけすんのよ」
「お姉ちゃん、私のこと信じる?」
「そりゃ無条件で信じるけど」
「じゃあグズグズしないで!裏口に行くよ!」
うちの妹はおせっかいなんだから、まったく。
裏口を見つけた途端、顔を真っ青にした明麗が出てきた。
多綵が速攻で突っ込んでいく。ちょっと!待ちちなさいって!
「ウララちゃん!」
「あなたたち何でここに!?警察呼ぶわよ!」
「なんで辞めちゃうの!?」
「ごめんなさい、すぐ多綵を連れて帰るから!警察だけは勘弁して!」
行くわよ!
多綵の手を引いて引きずっていこうとしたが、逆に引っ張り戻された。
「私、ウララちゃんが好きなの!なんでメイドさんやめちゃうの!?」
おバカ妹、これ以上しつこくするんじゃないの。他人の事情に私たちが首突っ込んでどうすんのよ?
「あなたたちには関係ないでしょ」
「困ってる人を見捨てるなんてできないよ!」
はぁ……あんたは昔っからそういうおせっかいな性格よね。
「特に何もない。ただここが気に入らなくなっただけ!」
ちょっと待って、本当に辞めるわけ?
明麗が多綵を避けて通ろうとするが、多綵が立ちはだかる。
「じゃあこれから何するの!?」
「あなたには関係ないわ!田多恵、妹をしっかり扱いなさいよ。これ以上騒ぐなら本当に通報するわよ!」
落ち着いて!二人とも落ち着きなさい!
私は言った。
「多綵、この子は無事だし、ただメイドをやめるだけよ。帰るよ」
「お姉ちゃんはドジでおバカなだけじゃなくて、目まで腐ってんの!?」
暴言吐かないでよ!
「こんなに顔色悪いんだよ!?絶対何かトラブルに巻き込まれてるって!」
だからって何よ。本人が助けを求めてないのに、私たちが何できるって言うの?
「邪魔しないでよ!私がどこへ行って何しようが、あなたたちに何の関係があるっていうの!?」
「自分が好きなものを守るのに、理由なんて要る!?」
多綵の言葉は脈絡がなかったが、言い切った後、まっすぐに明麗を見つめた。
明麗は目を閉じて眉をひそめ、目を開けるとため息をついた。
「言ったら退いてくれるの……?」
「うん!」
「……うちの家、借金があるの。すごく大きな額よ。お父さんとお母さんもそのことで喧嘩ばかりしてて」
あんたの家、会社経営してるんじゃなかったの?なんでそんな状況になってんのよ。
「メイドのバイトをしてたのは、せめて大学の入学費用だけでも自分で貯めて、家の負担を減らしたかったから」
実に堅実な子ね……。
「借金取りのヤクザの取り立てが酷くて、お父さんとお母さんも離婚と会社の解散の話をし始めて、どっちが借金を背負うかで揉めてるの。家を守りたいから、私……これからヤクザと話して、私が借金を返すって話し合ってくるの」
どうやって返すつもりよ!?18歳になったばかりの女子高生が!絶対に良からぬことを強要されるに決まってるじゃない!
想像しただけで……って、私の社会知識なんて乏しすぎて想像すらつかないけど!
「いくら借金あるの?」多綵が明麗の肩に手を置いた。「私が払うよ」
明麗は嘲笑を浮かべた。自嘲であり、多綵にそんな金があるわけないと高を括った無邪気さへの笑いだった。
「銀行に2000万、闇金に3000万よ」
「全額払う!」
「あなた、お金あるの!?」
ちょっと待ったーー!!
「おい、バカ妹!あんた自分が手元にいくら残ってるか分かってんの!?」
「現金が6000万あるでしょ!全額返してあげても、まだ1000万残るじゃん!」
「あなたたち一体……」
明麗は信じられないといった顔をしている。
絶対に止めなきゃ!
「ダメダメダメ!そんなのドブにお金を捨てるようなものよ!」
「ドブじゃない!人助けだよ!」
「折れない気!?絶対ダメだってば!」
「お姉ちゃんの冷血人間!良いことしようとしてるのに邪魔しないでよ!」
多綵のやつ、完全に腹を括ってるわ……でもあんたにはまだ20年分の住宅ローンがあるのよ!?
このままだと自分を滅ぼすことになるわ!
「多綵、あんたが一銭たりとも出してあげるのは許さないわ」
「お姉ちゃん!薄情者!」
「私が払うわ」
「え、お姉ちゃん?」
「田多恵……!?」
妹の願いは、姉の願いなのよ!
「林明麗、私は天使じゃないわ。とりあえず立て替えて返してあげる。その代わり、あんたの家の会社は私のために働いて、この5000万を完済しなさい!」
「投資して株主になるってこと……?」
明麗が言ってる専門用語なんてさっぱり分からん!とりあえず誤魔化しておこう。
「そうよ!」
「なんでそんなお金持ってるの……?」
「持ってるものは持ってるのよ!」
「なんで私を助けてくれるの……?」
「好きな人が好きなものを守るのに、理由なんて要るかしら!?」
あらやだ!私まで意味不明なキザセリフ言っちゃったじゃない!
けど……気持ちいいわ!
「私……あんなに一人で悩んで頑張ってきたのに……」
明麗はその場にへたり込んだ。多綵はしゃがみ込んで彼女の頭をなでなでした。
「もう大丈夫だよ~、お姉ちゃんが乗り出せば何も問題ないから!お姉ちゃんはドジだけど、やるって決めたことは絶対最後まで完璧にやるんだから!」
私を信頼してくれてありがとうね!まあ、具体的なアイデアなんて一切ないんだけど!
根拠なんて要らないわ。妹が期待の目を向けてくれた以上、全力でぶつかるだけよ!
翌日、明麗に連れられて私と多綵は闇金のもとへ向かった。アタッシュケースを開けて3000万の札を見せると、相手はいかにも強面だったが存外道理が通る連中だった。札束を綺麗に数え終えると、無駄口も叩かずに債権を私に譲渡してくれた。
残りの2000万は明麗に渡して持って帰らせた。
さーて!会社の経営って一体どうやってやればいいのやら!?
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【資産まとめ】
田多恵:約5000万台湾ドル
(※会社ひとつを所有:5000万の無利息債権購入による)
田多綵:約6000万台湾ドル
(※毎月50万台湾ドルの住宅ローン支払い・20年組)




