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裏切られた勇者は”剣神”に至る ~魔力ゼロの落伍者が、魔法の世界そのものを斬り裂く~  作者: 青茶とうご
第1章:異世界勇者編

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9/20

『救ったはずの世界に裏切られた少年。聖なる断罪の儀式で全てを失い、空っぽになった「元・勇者」の慟哭』

魔王は死んだ。

本来なら、世界に光が戻り、祝福の鐘が鳴り響くはずだった。

しかし、王都へ続く道でフウガを待っていたのは、祝杯ではなく、どす黒い陰謀の気配。

王の死、心を失ったリュミエル、そして大司教による「神託」。

勇者という名を剥ぎ取られ、泥にまみれるフウガ。

守りたかった温もりすら、彼の手からこぼれ落ちていきます。

 魔王を討った。

 だが、帰路に届いた報せは――祝福ではなかった。

 王が、崩御した。

 道中で耳にした、騎士団内の囁き。

 あまりにも唐突な死。

 公式発表はまだない。

 だが、城内ではすでに動きが始まっているという。

 摂政として立つのは、大司教。

 そして――王女リュミエル。

 彼女は、女王となった。

 だが。

 その隣に立つのは――常に、大司教だった。

 魔王を討ち、王都へ戻る道中。

 フウガの胸にあったのは、達成感ではなかった。

 残っているのは――あの男の言葉。

『お前は、“形”を斬っているに過ぎない』

(……何を、斬っている)

 理解できない。

 だが、その言葉だけが妙に現実味を帯びて残っていた。

 まるで――

 この先を、知っていたかのように。

 王都の城門が見えた時、その違和感は現実になる。

 静かすぎた。

 本来なら歓声があるはずの場所。

 だが、そこにあったのは――

「裏切り者!」

 投げつけられた汚物が、フウガの肩を汚す。

「魔王と通じた売国奴が!」

「人の敵め!」

 罵声と憎悪。

 明確な敵意。

 フウガは、足を止めた。

(……なんだ、これ)

 胸の奥に、冷たいものが沈む。

 それでも、歩く。

 止まれば、それを認めることになるから。

 大聖堂。

 荘厳な空間。

 並ぶ聖職者。

 沈黙する騎士たち。

 すべてが、整っている。

「勇者フウガよ」

 大司教の声が響く。

「聖なる神託は下された」

 壇上。

 そのさらに奥――

 玉座に座る、リュミエルの姿があった。

 白いドレス。

 王冠。

 だが。

 その目は――何も映していなかった。

「貴様が魔王を討てたのは、闇と契約したからに他ならぬ!」

 断言。

 疑いの余地を与えない声音。

 ざわめきが広がる。

 だが、フウガは動かない。

(……最初から、決まってる)

 これは裁きではない。

 “処理”だ。

「――ゆえに、その身は大罪人として裁かれる」

 静かに騎士たちが動く。

 フウガの手には、黄金の聖剣。

 あの夜、震える手で託されたもの。

「……待て」

 思わず、声が出る。

「これは――」

 言葉が止まる。

 言えば、巻き込む。

 あの少女を。

 あの夜を。

 約束を。

「黙れ、大罪人」

「王女殿下が貴様のような者に授けるはずがない」

 腕を捻り上げられる。

 痛みが走る。

 だが、それよりも――

 剣が、離れていく。

(……やめろ)

 力を込める。

 だが、抗えない。

 その時。

 視線が、合った。

 玉座の上。

 リュミエル。

 一瞬だけ。

 本当に一瞬だけ――

 その瞳に、“光”が戻る。

「――っ」

 唇が、わずかに動く。

 声にはならない。

 届かない。

 だが。

 確かに、“何かを言おうとした”。

 次の瞬間。

 その光は、消えた。

 何も映さない瞳に戻る。

(……ああ)

 フウガは理解する。

 誰も、動けない。

 ここでは。

 蹴りが入る。

「がはっ……!」

 床に叩きつけられる。

 手が緩む。

 ――離れる。

 黄金の剣が、大司教の手へと渡る。

 その瞬間。

 わずかに、剣が軋んだ。

 拒むように。

 だが――

 その光は、押し潰される。

「見よ!」

「聖なる剣は、正しき主の元へ戻られた!」

 歓声が上がる。

 だがそれは、祝福ではない。

 断罪の歓声だった。

 フウガは何も言わない。

 言えない。

(……ああ)

 ようやく、分かった。

(……俺は)

 誰のために、剣を振っていたのか。

 連行される。

 抵抗はしない。

 もう、力が入らなかった。

 その背を、ひとりの少女が見ていた。

 大司教の傍ら。

 祈る姿勢のまま、動けないまま。

 大司教の娘――セレナ。

(……言わなきゃ)

 一歩、出かけて――止まる。

 父の視線。

 責任。

 恐怖。

 すべてが、喉を締めつける。

 唇が震える。

 だが――声は出ない。

「……っ」

 涙が落ちる。

 それだけだった。

 姫との約束も。

 勇者という名も。

 すべてが、静かに奪われていく。

 残ったのは――

 空っぽの少年だけだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

あまりにも、あまりにも理不尽な展開……。書いていて私自身も手が震えるほど、フウガの受ける仕打ちが心苦しかったです。

魔王を倒し、ボロボロになって帰ってきた彼に投げつけられたのは、石つぶてと罵声でした。

リュミエルが最後に言いかけた言葉は何だったのか。

そして、全てを奪われ「空っぽ」になってしまったフウガに、残された道はあるのか。

「大司教許せない!」「フウガを助けて!」と思ってくださった方は、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマークで、どん底にいる彼に力を貸していただければ幸いです。

次回、物語はさらに大きく、残酷に動き出します。

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