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裏切られた勇者は”剣神”に至る ~魔力ゼロの落伍者が、魔法の世界そのものを斬り裂く~  作者: 青茶とうご
第二部:魔王の娘と新生魔王軍

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【覚醒】届かぬ刃のその先へ。魔法も理屈も介入させない、ただの鉄の「意志」

どれだけ剣を振るっても、ルナリエには届かない。

「結果」そのものを書き換えられたかのように、ゼノスの攻撃はなかったことにされてしまいます。

しかし、ゼノスは気づきます。

自分を縛っていたのは、復讐という名の「意味」であり、届かせようとする「思考」そのものだったことに。

思考を捨て、ただの鉄の塊として空を裂く。

あの日、父を殺した「あの男」が立っていた、理不尽の領域へ。

少年ゼノスの刃が、ついに絶対的強者であるルナリエの肌を捉えます。

 黒鋼の剣が、空を裂く。

 届くはずだった。

 だが。

 その一撃は――成立しない。

 最初から、当たらなかったことになる。

「遅い」

 ルナリエの声。

 すぐ近く。

 だが、距離は埋まらない。

「もう、その剣は通用しないよ」

 ゼノスは答えない。

 ただ、踏み込む。

 振る。

 振る。

 振る。

 すべてが、消える。

 結果だけが、存在しない。

「……違う」

 低く、呟く。

 呼吸が荒れる。

 剣を握る手に、力が入る。

 止まらない。

 振るう。

 だが、結果が存在しない。

 足りない。

 何かが。

 技ではない。

 力でもない。

 なら――

(考えている)

 それが、邪魔だ。

 思考が、刃を鈍らせる。

 あの日の一撃。

 あの男は、考えていなかった。

 だから。

 届いていた。

「……そうか」

 動きが止まる。

 一瞬。

 完全に。

 ルナリエが、わずかに目を細める。

「……なるほど」

 静かに、言う。

 ゼノスは答えない。

 ただ、剣を構える。

 何も乗せない。

 ただの鉄。

「……これは」

 ぽつりと。

 言葉だけが落ちる。

「復讐じゃない」

 踏み込む。

 同じ動き。

 だが、違う。

 そこに意味はない。

 ただ振る。

「あいつの背中を――」

 一瞬、止まる。

 だが、そのまま振り切る。

「……違うな」

 修正。

 その場で。

「届かせる」

 黒鋼の剣が走る。

「俺の剣を」

 ――一閃。

 ルナリエの頬に、細い線が走る。

 血が、滲む。

 静寂。

 風が止まる。

「……へえ」

 ルナリエが、わずかに笑う。

 初めて。

 確かに。

「それは、想定してなかった」

 指で血をなぞる。

 だが。

 次の瞬間。

 その傷は消える。

 なかったことになる。

「でも」

 一歩、踏み出す。

 距離が消える。

 目の前。

「ここから先は――届かない」

 ゼノスは動かない。

 いや。

 動けないのではない。

 理解している。

 ここから先は、成立しない。

 それだけだ。

 沈黙。

 風だけが流れる。

「……惜しいね」

 ルナリエが、静かに言う。

「あと少しで、“壊す側”に来れたのに」

 ゼノスは答えない。

 ただ、聞いている。

「でも違う」

 断定。

「あなたは、そっちじゃない」

 そして。

 背を向ける。

 完全に無防備。

 だが、斬れない。

「――ついてきなよ」

 軽く。

 当然のように。

 命令でも、勧誘でもない。

 ただの事実の提示。

 沈黙。

 ゼノスは動かない。

 剣を握ったまま。

 視線だけが、ルナリエを追う。

 一歩。

 ルナリエが歩く。

 その背は、もう遠い。

 だが。

 確かに、そこにある。

 ゼノスが、足を動かす。

 一歩。

 踏み出す。

「……勘違いするな」

 低く。

 抑えた声。

 ルナリエは止まらない。

 だが、聞いている。

「従う気はない」

 さらに一歩。

 距離が、縮まる。

「ただ――」

 わずかな間。

 切り捨てるように。

「お前を斬るまでだ」

 その声に、感情はない。

 だが。

 確かな意思だけがある。

 ルナリエが、わずかに笑う。

 振り返らないまま。

「いいよ」

 短く。

「そのままで」

 風が吹く。

 雪が舞う。

 二人の距離は、並ぶ。

 だが。

 決して交わらない。

 それでも。

 同じ方向へ進んでいる。

 黒鋼の剣が、わずかに鳴る。

 静かに。

 確かに。

 その刃は、まだ未完成だ。

 だが――

「……届かせる」

 その一言だけが、残る。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ゼノスがルナリエの頬を掠めたシーン。それは小さな傷に過ぎませんが、理を操るルナリエにとって「想定外」の一撃であったことが、彼女の微笑みに繋がりました。

「お前を斬るまでだ」

主従関係を否定し、殺意を原動力にして隣を歩くことを決めたゼノス。

驯れ合うことのない二人の関係性は、まさに「刃と鞘」のような、鋭利で危うい信頼の形なのかもしれません。

ルナリエの言う「壊す側」とは一体何を指すのか。そしてゼノスの刃はどこまで届くのか。

第二部「新生魔王軍」の絆(?)が、少しずつ形作られていきます。

面白い、二人の距離感が好き!と思ってくださった方は、ぜひ評価【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援をお願いします。

現在、PVも非常に好調で、皆様の応援が本当に励みになっています!

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