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裏切られた勇者は”剣神”に至る ~魔力ゼロの落伍者が、魔法の世界そのものを斬り裂く~  作者: 青茶とうご
第二部:魔王の娘と新生魔王軍

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空っぽの器と、黒き姫。――新しい「意味」は、最悪の再会から始まる

目標を失い、ただ無意味に剣を振るうことすら止めてしまったゼノス。

かつて父を殺した男は死に、彼の復讐も、努力も、すべてが「ゴミ」になったはずでした。

そんな彼の前に現れたのは、フウガを終わらせた張本人であり、魔王の娘であるルナリエ。

「新しい意味をあげる」

彼女の不敵な笑みと、フウガの強さに対する不可解な断言。

絶望の底にいたゼノスの中に、再び歪んだ「火」が灯ります。

 音が、消えていた。

 鍛錬場。

 かつては魔力が渦巻き、術式が飛び交っていた場所。

 だが今は――

 ただ、鉄の音だけが響く。

 鈍く、重い衝撃。

 黒鋼の剣が、地面を叩き割る。

 もう何度目か分からない。

 振るう。

 叩きつける。

 壊す。

 それだけを、繰り返す。

 意味はない。

 ただ、止める理由もない。

 剣が、止まる。

 息は乱れていない。

 身体も、限界には程遠い。

 だが。

 それ以上、振る理由がなかった。

「……」

 何も、浮かばない。

 何も、残っていない。

 フウガは死んだ。

 それだけで。

 すべてが、途切れている。

 復讐も。

 憧れも。

 到達点も。

 全部。

 意味を失った。

「……くだらない」

 ぽつりと、零れる。

 誰に向けた言葉でもない。

 ただの、事実。

 剣を落とす。

 重い音が響く。

 拾う気にもならない。

 そのまま、背を向ける。

 終わりでいい。

 ここで終わっても、構わない。

「――ずいぶんと、つまらなそうね」

 声が落ちてきた。

 静かで。

 冷たい。

 だが、確実に”上”から見下ろす声音。

 ゼノスは、振り向かない。

 興味がない。

「……何の用だ」

「別に。ちょっと見に来ただけ」

 足音。

 軽い。

 だが、迷いがない。

 ゼノスの背後まで来て、止まる。

「面白いものがあるって聞いたから」

「……帰れ」

 短く言う。

 それで終わるはずだった。

 だが。

「あなた」

 その一言で。

 空気が、変わる。

「壊れてないのね」

 ゼノスの手が、わずかに止まる。

「……は?」

 ゆっくりと、振り向く。

 そこにいたのは――

 黒。

 静かな闇を纏った少女。

 ルナリエ。

 その瞳は、まっすぐにゼノスを捉えていた。

「何を言ってる」

 低く、唸る。

 だが。

 ルナリエは、微動だにしない。

「だってそうでしょ?」

 一歩、近づく。

「本当に壊れたなら、そんな顔しない」

「……」

 言葉が、詰まる。

「空っぽになっただけ」

 あっさりと、言い切る。

「だから、まだ残ってる」

 指先が、ゼノスの胸を指す。

「ここに」

 苛立ちが、湧く。

 だが。

 否定できない。

「……だから、なんだ」

 絞り出すように言う。

 ルナリエは、少しだけ考えて。

 そして。

 興味深そうに、笑った。

「簡単な話よ」

「新しい意味をあげる」

 その言葉に。

 ゼノスの目が、細くなる。

「……いらない」

 即答。

 だが。

 ルナリエは、気にしない。

「フウガはね」

 その名前が出た瞬間。

 空気が、凍る。

「“完成してない”の」

「……ふざけるな」

 低く、吐き捨てる。

「あれが未完成だと?」

 ありえない。

 否定しようとする。

 だが。

 言葉が、続かない。

 なぜなら。

 心のどこかで。

 理解してしまっている。

「ええ」

 ルナリエは、あっさりと肯定する。

「あれは途中だった」

「だから、終わった」

 静かに。

 断言する。

「完成していたら」

 一歩、踏み込む。

「誰にも止められない」

 ぞくり、と。

 背筋に何かが走る。

「あなたも、分かってるでしょ?」

 問いかける声。

 だがそれは、確認ではない。

 確信だ。

「あの一閃が、あれで終わるはずがないって」

 言葉が、刺さる。

 否定できない。

 できるはずがない。

 ゼノスは、それを”見ている”。

「……だから、なんだ」

 かろうじて、返す。

 ルナリエは、微笑む。

 ほんのわずかに。

 歪んだ笑み。

「その続きを、見たくない?」

 沈黙。

 答えは、出ている。

 だが。

 認めたくない。

「……どうやってだ」

 それでも、口にしてしまう。

 ルナリエの目が、細くなる。

 愉しそうに。

「簡単よ」

「私を超えればいい」

 その言葉に。

 ゼノスの思考が、止まる。

「フウガを終わらせたのは、私」

「なら、その先にいるのも――私でしょ?」

 理屈は通っている。

 だからこそ。

 否定できない。

「あなたの刃」

 ルナリエが、手を伸ばす。

 だが、触れない。

 あくまで距離を保つ。

「ここで腐らせるには、もったいない」

「使わせてあげる」

 命令ではない。

 だが。

 拒否を許さない声音。

 ゼノスは、黙る。

 長い、沈黙。

 やがて。

 ゆっくりと、剣を拾う。

「……証明してみろ」

 それが、答えだった。

 ルナリエは、満足そうに頷く。

「いいわ」

「付き合ってあげる」

 主従ではない。

 信頼でもない。

 ただ。

 “利用価値”で繋がった、二つの刃。

 それが。

 静かに、交わった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ついにルナリエとゼノスが接触しました。

「私を超えれば、フウガの先に行ける」という、ルナリエのあまりに強引で、けれどゼノスにとっては抗いがたい論理。

主従でも仲間でもない、ただ「フウガという呪い」で繋がった二人の危うい関係性がここから始まります。

ルナリエが次に目を付けるのは誰なのか?

そして彼女が言う「フウガは未完成」という言葉の真意とは……。

物語はここから一気に「新生魔王軍」の結成へと動き出します!

「このコンビの今後が楽しみ!」「ルナリエのカリスマ性に痺れた!」という方は、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援をお願いします。

皆様の反応が、次の更新への一番の原動力です!

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