表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切られた勇者は”剣神”に至る ~魔力ゼロの落伍者が、魔法の世界そのものを斬り裂く~  作者: 青茶とうご
第1章:異世界勇者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/20

【完結】最強のその先へ。魔王の娘ルナリエとの決別と、世界から抜け落ちた「勇者」の帰還

猛吹雪の雪原。

すべてを捨てたフウガの前に現れたのは、かつて討った魔王の娘、ルナリエでした。

「復讐か、それとも――」

互いに相容れない「化け物」同士の邂逅。

凄まじい魔弾の嵐の中で、フウガは最後にある「選択」をします。

それは勝利のための剣ではなく、世界そのものから離脱するための、静かなる決別でした。

 吹き荒れる雪の中、フウガは一人、薪を割っていた。

 手にしているのは、削りかけの木の枝。

 だが――

 振るうたびに、薪は音もなく両断される。

 断たれているのは、形ではない。

 “繋がり”そのものだった。

「――やはり、ここにいたのね」

 吹雪の向こうから、声。

 現れたのは、一人の少女。

 黒。

 すべてを拒絶するような、静かな闇。

 だが――その奥に流れる気配は、知っていた。

 あの城の最深部で感じた、あの男と同じ”根”。

「復讐か。魔王の娘」

 振り向かないまま、フウガは言う。

「それもある」

 ルナリエは答える。

「でも――それだけじゃない」

 一歩、踏み出す。

「あなたは邪魔なの」

 迷いのない瞳。

「これから人間を滅ぼす私にとって、“例外”は要らない」

 手が止まる。

 ゆっくりと、振り返る。

「……そうか」

 それで、十分だった。

 次の瞬間。

 無数の魔弾が、世界を埋める。

 だが――

 フウガは動かない。

 ただ、枝を振るう。

 ――消える。

 音もなく。

 痕跡もなく。

 存在ごと、断たれる。

「……やっぱり、化け物ね」

 ルナリエが笑う。

 だが、その声はわずかに揺れていた。

 踏み込む。

 距離が消える。

 枝が、喉元に届く。

 終わるはずだった。

 その瞬間。

 記憶がよぎる。

 月明かり。

 差し出された手。

 震える声。

『……私を、この場所から連れ出してくれませんか?』

(……ああ)

 あの時、選んだ。

 だから――

 刃が、逸れる。

「……なんで」

 ルナリエの声が揺れる。

「なんで殺さないのよ!!」

 フウガは答える。

「……選んだからだ」

「俺は、もう奪わない」

 一瞬の静寂。

 そして――

 斬撃。

 胸が裂かれる。

 血が、雪を染める。

 膝をつく。

 だが――

 倒れない。

 崩れない。

「……そうか」

 小さく、呟く。

 そのまま。

 体が――

 崩れた。

 だが、それは死ではない。

 雪に溶けるように。

 存在そのものが、薄れていく。

「……なに、それ」

 ルナリエが、一歩踏み出す。

 初めての動揺。

 手を伸ばす。

 だが――

 届かない。

 触れる前に、消える。

「……逃げたの?」

 違う。

 それは逃走ではない。

 “離脱”だった。

 理から外れるように。

 世界から、抜け落ちるように。

 完全に。

 フウガは、消えた。

 残ったのは、赤く染まった雪だけ。

 沈黙。

 吹雪だけが、音を持つ。

「……意味、分からない」

 ルナリエは呟く。

 その胸の奥に。

 わずかな”引っかかり”だけを残して。

終章

 ――目が覚める。

 耳に馴染んだ車の音。

 窓の外、灰色のアスファルト。

 見慣れた、現実の光。

 だが。

 胸が、痛む。

 傷は、ない。

 それでも――

 確かに、残っている。

 手を見る。

 震えている。

 理由は分からない。

 だが。

 忘れてはいけない”何か”がある。

 視線を落とす。

 掌。

 そこに――

 一筋の、薄い傷跡。

 覚えのないはずのもの。

 だが。

(……これ)

 知っている。

 振るった感覚。

 断った感覚。

 それが、残っている。

 外に出る。

 風が吹く。

 その瞬間。

 見えた。

 世界を繋ぐ、無数の線。

 流れ。

 力の道筋。

 そして――

 それを断てるという、確信。

 夢ではない。

 消えていない。

「……まだ、終わってないのか」

 小さく、呟く。

 答えはない。

 だが。

 確かに、残っている。

 あの世界は。

 あの選択は。

 消えていない。

 楓雅は歩き出す。

 今度は、自分の意思で。

 どこへ行くのかも分からないまま。

 ただ――

 選ぶために。

最後まで、そして第一部完結までお読みいただき、本当にありがとうございました。

異世界で「勇者」として、あるいは「化け物」として全てを奪われ続けたフウガ。

彼が最後にルナリエを斬らず、世界から消えることを選んだのは、彼なりの「もう奪わない」という意地だったのかもしれません。

現代に戻ってきた楓雅。

しかし、彼の掌にはあの世界の傷が残り、瞳には世界を繋ぐ「線」が見えています。

この力が、平和な現代で何を意味するのか……。

「最高の最終回だった!」「続きが読みたすぎる!」と思ってくださった方は、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマークで、完結のお祝いをいただけると最高に嬉しいです!

皆様の応援のおかげで、ここまで走り抜けることができました。本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ