表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境領に飛ばされた元官僚、数字だけで王国を立て直す 〜廃領再建から始まる、数字と制度の国家経営録〜  作者: 蒼井テンマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/36

第29話 形骸化した連合

 統治連合は、存在していた。


 解散されたわけでも、否定されたわけでもない。

 会議は定期的に開かれ、報告書も上がる。


 だが——

 誰も、主導しなくなった。


「……次の議題ですが」


 王都派遣の管理官が、慎重に言葉を選ぶ。


「物流調整について、再検討を」


 沈黙。


 反対意見も、賛成意見も出ない。

 誰もが、様子を見ている。


 決めれば、責任が生じる。

 決めなければ、問題は先送りされる。


 結果、会議は——

 何も決めないまま、終わった。


 ラグナが、苛立ちを隠さず呟く。


「……生きているが、動かない」

「死体みたいな組織だ」


 マリナは、淡々と数字を見ていた。


「正確には、少しずつ弱っています」

「目に見えない速度で」


 その頃、アレンは倉庫にいた。


 連合の外部顧問。

 だが、公式な呼び出しは、ほとんどない。


 それでも——

 情報は、集まってくる。


「最近、北部の輸送効率が落ちています」


 商人が、何気なく言う。


「河川の管理が、遅れている」


「そうか」


 アレンは、頷くだけだ。


 助言は、求められていない。

 だが、耳は傾けられている。


 夜。

 エリシアが、帳簿をまとめながら言う。


「……不思議ですね」


「何がだ」


「誰も、あなたを無視できていない」


 アレンは、少し考えてから答えた。


「無視できない数字を、出しているからだ」


 数日後。

 連合の内部資料に、小さな変化が現れる。


 会議資料の端に、

 「参考:外部顧問試算」

 という一行が、加わった。


 誰の名前も、書かれていない。


 だが、その数字を見た者は、

 無言で頷いた。


「……結局、使ってるじゃないか」


 ラグナが、苦笑する。


「使っているが、決めてはいない」


 マリナが訂正する。


「責任を、避けたまま」


 王都では。


「連合は、機能しているか?」


 ダリウスの問いに、ユリウスは答える。


「……崩れてはいません」

「ですが、前進もしていない」


「彼は?」


「表には出ていません」

「しかし、資料には影があります」


 ダリウスは、短く息を吐いた。


「消えないな」


「消さない方が、いい存在です」


 その評価が、全てだった。


 辺境の夜。

 アレンは、一人で地図を見ていた。


 連合は、形骸化した。

 だが、消えてはいない。


 そして——

 こういう組織ほど、

 危機の時にだけ、

 突然、思い出される。


「……その時まで、だな」


 彼は、静かに呟いた。


 連合は、死んでいない。


 ただ——

 眠っているだけだ。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ