第28話 処分
処分は、静かに下された。
公表はない。
式典も、叱責もない。
ただ、一通の正式文書が届いただけだった。
――統治連合における代表調整役の任を解く。
――今後は、連合外部顧問として助言を行うものとする。
――意思決定権、命令権は付与しない。
「……外部顧問、ですか」
エリシアが、文書を読み終えて呟く。
「便利な言葉だな」
アレンは、淡々と言った。
「使う時だけ呼び出せる」
「責任は負わせないが、権限もない」
それは、排除ではない。
だが、信頼でもない。
中途半端な場所。
「怒っていませんか?」
エリシアが、慎重に聞く。
「怒る理由はない」
アレンは首を振った。
「越えたのは、事実だ」
「結果がどうであれ、処分されるのは当然だ」
数日後。
連合の会議から、アレンの席が消えた。
代わりに置かれたのは、王都派遣の管理官。
「……空気が、変わりましたね」
ラグナが、苦々しく言う。
「誰も、決めなくなった」
マリナも、静かに頷く。
「数字を出しても」
「判断する人がいません」
それが、王都の選んだ形だった。
安全だ。
だが、遅い。
一方、アレンは会議室ではなく、倉庫にいた。
数字を集める。
流れを読む。
だが、指示は出さない。
出せない。
「……もどかしいですね」
エリシアが言う。
「慣れた」
アレンは、短く答えた。
数週間後。
連合の決定速度は、さらに落ちた。
小さな遅延。
小さな損失。
どれも、致命的ではない。
だが、積み重なる。
「このままだと」
ラグナが、酒席で呟く。
「何も起きないまま、弱くなる」
アレンは、その言葉を否定しなかった。
王都では。
「……彼は、不満を言っているか?」
ダリウスが、ユリウスに問う。
「いいえ」
ユリウスは答える。
「処分を、受け入れています」
「そうか」
ダリウスは、少しだけ眉をひそめた。
「それが、一番厄介だな」
辺境に戻る道すがら。
アレンは、静かに思う。
自分は、降ろされた。
だが、切られてはいない。
それは——
必要とされている証拠でもある。
夜。
エリシアが、ぽつりと言った。
「……これから、どうするんですか?」
「やることは、変わらない」
アレンは、即答した。
「数字を見る」
「流れを読む」
「それだけ?」
「それだけで、十分だ」
彼は、理解していた。
権限がなくても、
影響力は、残る。
それを——
使うかどうかは、別の話だ。
処分は、終わった。
だが、この物語において、
彼が終わることはない。
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