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辺境領に飛ばされた元官僚、数字だけで王国を立て直す 〜廃領再建から始まる、数字と制度の国家経営録〜  作者: 蒼井テンマ


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第24話 責任

 辺境領クロフォードは、変わっていなかった。


 畑は耕され、倉庫は動き、治安隊は巡回している。

 見た目だけなら、何も問題はない。


 だが、アレンには分かっていた。


 ——ここには、もう手を出せない。


「……王都管理官からの通達です」


 エリシアが、紙を差し出す。


「物流判断は、事前承認制」

「予算配分は、月次報告後に決裁」

「連合関連の人事異動は、王都主導」


 項目は淡々としている。

 だが、一行一行が、刃だった。


「完全に、現場から切り離されましたね」


「想定内だ」


 アレンは、感情を挟まずに答えた。


「責任を取るとは、そういうことだ」


 その日の午後。

 南部領から、私的な使者が来た。


「……本当に、申し訳ありません」


 元南部領主は、深く頭を下げた。


「あなたの判断が遅れたとは思っていない」

「むしろ……」


 言葉を詰まらせる。


「我々が、追いつけなかった」


「結果は同じだ」


 アレンは、静かに言った。


「一つの領地が、沈んだ」

「それ以上でも、それ以下でもない」


 その事実を、否定しない。

 それが、責任を取るということだった。


 夜。

 執務室。


 机の上には、白紙の書類が積まれている。

 承認待ち。

 指示待ち。


「……遅いな」


 エリシアが、呟く。


「ええ」


 アレンは頷く。


「だが、正しい手順だ」


 自分で言っていて、苦かった。


 数日後。

 遅れた判断のせいで、倉庫一棟が使えなくなった。


 さらに一週間後。

 治安隊の補充が遅れ、小競り合いが起きた。


 どれも、小さな問題だ。

 だが、積み重なる。


「……これでは」


 エリシアの声が、震える。


「前より、悪い」


「そうだ」


 アレンは否定しなかった。


「正しいはずの制度が」

「今は、遅すぎる」


 だが、彼は動かない。

 動けば、違反だ。


 夜更け。

 ガルドが、酒も飲まずに訪ねてきた。


「……現場が、ざわついている」


「分かっている」


「皆、言っています」

「“あんたなら、こうはならなかった”と」


 アレンは、しばらく黙っていた。


「それでも、やらない」


 低い声で言う。


「ここで勝手に動けば」

「次に誰も、制度を信じなくなる」


 ガルドは、歯を食いしばった。


「……それが、正解なのか?」


「分からない」


 アレンは、正直に答えた。


「だが、逃げるよりはましだ」


 その夜。

 アレンは、一通の報告書を書いた。


 王都管理官宛。

 形式通り。

 感情なし。


 だが、最後の一文だけは違った。


 ――現行制度は、非常時対応能力に欠ける。

 ――この欠陥は、いずれ致命的になる。


 書き終えた後、ペンを置く。


「……次は、いつだ」


 彼は、理解していた。


 制度が壊れるのは、

 ゆっくりではない。


 一度、外圧がかかれば——

 一瞬だ。


 その兆しは、

 すでに、地平線の向こうにある。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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