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辺境領に飛ばされた元官僚、数字だけで王国を立て直す 〜廃領再建から始まる、数字と制度の国家経営録〜  作者: 蒼井テンマ


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第21話 抜けたい領地

 その申し出は、書面で届いた。


 簡潔で、丁寧で、感情がない。

 だからこそ、重かった。


「……南部領、連合再検討要請」


 エリシアが、低く読み上げる。


「“現行制度下では、領地の持続的運営が困難であるため、

 統治連合からの離脱、もしくは条件の抜本的見直しを求める”……」


 会議室に、沈黙が落ちた。


 誰も驚かなかった。

 むしろ、「ついに来たか」という空気だ。


「事実上の、最後通告だな」


 ラグナが、腕を組んだまま言う。


「建前は丁寧だが、中身ははっきりしている」

「このままなら、抜ける」


 マリナは、書面をもう一度確認する。


「数字は、彼らの言い分を裏付けています」

「連合参加前より、短期的な負担が大きい」


「短期、だがな」


 ラグナが吐き捨てる。


「半年、耐えられなかっただけだ」


 その言葉に、南部領主は顔を上げなかった。

 通信越しの会議。映像の向こうで、彼は疲れ切っている。


「耐えられなかったのは、事実だ」


 南部領主は、静かに言った。


「制度が悪いとは言わない」

「だが、うちには早すぎた」


 その一言が、重かった。


 アレンは、すぐに答えなかった。


 頭の中で、数字が回る。

 支援。

 遅れ。

 委員会。

 失速。


「……条件変更の余地は?」


 彼は、ようやく口を開いた。


「あるなら、今だ」


 南部領主は、首を横に振った。


「もう、現場がついてこない」

「人が離れ、信頼も失った」


 それは、取り返しがつかない段階だ。


 ラグナが、苛立ちを隠さず言う。


「今さらだな」

「最初に踏ん張っていれば——」


「やめろ」


 アレンは、低く制した。


「責めても、何も戻らない」


 沈黙。


 次に口を開いたのは、ユリウスだった。


「冷静な判断だと思います」


 その言葉に、全員の視線が集まる。


「連合は、試験段階」

「合わない領地が出るのは、想定内です」


 正論だった。

 だが、冷たい。


「離脱は、認めるべきです」


 ラグナが、即座に噛みつく。


「前例を作る気か?」


「前例は、すでにあります」


 ユリウスは、穏やかに言った。


「支援前例が、そうでしょう?」


 空気が、張りつめる。


 アレンは、理解していた。


 ここで引き留めれば、

 連合は“強制”になる。


 認めれば、

 連合の権威が揺らぐ。


 どちらも、痛みだ。


「……結論は、委員会で出す」


 アレンは、そう言った。


 即断しない。

 制度に従う。


 それが、今の立場だ。


 南部領主は、静かに頷いた。


「……分かりました」

「それまでは、現状維持で」


 通信が切れる。


 会議室に残った者たちは、誰も言葉を発さなかった。


 エリシアが、小さく言う。


「……間に合いますか?」


「分からない」


 アレンは、正直に答えた。


 彼は、選択した。

 制度を。

 合議を。


 それが、正しいと信じて。


 だが、その選択が——

 何を失わせるのか。


 まだ、誰にも分からない。


 夜。

 アレンは、一人で帳簿を閉じた。


「……ここが、分かれ目だな」


 連合は、初めて本気で崩れかけている。


 そして次に来るのは、

 決断ではない。


 ――結果だ。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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